ウォーレン・バフェット(Warren Edward Buffett)やジョージ・ソロス(George Soros)の名を聞いたことはあるでしょうか。

彼らは、世界にその名を轟かす大富豪であり、偉大な投資家です。

 

彼らのように投資で成功し、莫大な富を築いた人の格言やエピソードには学ぶ点が数多くあります。

今回はそんな彼らに学ぶ「投資に関する7つの大きな勘違い」を紹介します。

 

一般の投資家の中には、投資について誤った認識を持っており、それによって投資に失敗し続けてしまっている人も数多くいます。

今一度、投資の本質やその真髄について考えてみましょう。

 

投資に関する7つの大きな勘違い

1. マーケットの動きを予測する

これは投資初心者だけでなく、マニアにもよく見られる勘違いです。

「投資=マーケットの動きを予測して売買する」と考えている人は多いですが、未来を正しく予測するまずできませんし、それによって利益を得られることもありません。

 

仮に将来の予測と、その後の未来が一致し利益を得ることができたとしても、それは"たまたま"です。

決して、自分自身の予想が当たったなどと勘違いをして、天狗にならないことをおすすめします。偶然が続けばラッキーですが、そんな運に賭けるような方法では長続きしません。

 

もちろん、世の中には将来の予測を当て続け富を築く人もいます。

仮に明日の相場が「上がるor下がる」の2択(50:50)だったとして、20日連続で当て続けられる確率は、100万分の1ですが、世界中には数え切れないほどの投資家がいるため、偶然賭けに勝ち続ける人がいても不思議ではありません。

ですが、その人が、また次のチャンスでも賭けに勝てるとは限りません。

 

アメリカの経済学者がアーヴィング・フィッシャー(Irving Fisher)が1929年に「株価は新しい高台に達した。現在の水準を下回る事は永遠にないだろう」と宣言し、誰もがそれに同意したわずか1週間後にの大恐慌が訪れました。

1970年代のアメリカでは、ベトナム戦争による財政赤字の拡大などもあり、ハイパーインフレは避けられないと考えられていましたが、その後ニクソン大統領のたった1つの政策によって、金の価格は大暴落しました(通称:ニクソンショック)。

1990年のウォール街では「利益なんて関係ない」という言葉がまかり通っており、Yahoo!、Amazon、eBayのような大企業だけでなく、多くのドットコム企業が乱立し「IT企業、eコマース」というキーワードだけで、連日株価は上昇しました。

しかし、それらの企業が後に「ドットコム爆弾(dot-com bomb)」だったと揶揄されたように、大暴落したことは記憶に新しいはずです。

 

2. 市場の動きを予測できる人がいる

素人の投資家には将来の予測ができなくても、いわゆる専門家、機関投資家と呼ばれるような人たちであれば、将来を予測し投資しているし、そんな「プロ」に資産を預ければ自分自身も利益を得られると考える人もいるようですが、その考えも間違っています。

 

エレイン・ガザリオという無名の数字オタクが1987年10月12日に「株式市場の崩壊がすぐそこに迫っている」と予言し、そのわずか1週間後にブラック・マンデーを迎えた市場が大暴落したことがあります。

 

この予言(予測)が当たったことにマスコミがスポットを当て、彼女は一気に時の人となりました。

「エレインであれば市場の動きを予測し将来も利益を得ることができる」と考えた多くの投資家が、彼女が設立した投資信託を購入し、その流入額は1年足らずのうちに7億ドル以上(当時の為替で約850億円)にもなったと言われています。

 

しかし、残念ながら運用成績は振るわず、設定来のファンドの収益は、S&P500が+5.8%なのに対して+4.7%にしかなりませんでした。つまり、市場の平均以下の成績だったのです。

 

このように、一度予測が当たったからといって、仮にその人物が著名であったり権威ある経済学者だったとしても、それが続くとは限りません。

 

著名な投資家も未来を「予測」している訳ではありません。

ソロスは、「私の金銭面の成功は、私の将来の出来事を予想する能力とは際立って対照的だ」と述べています。

あのバフェットも市場予測について「予想は予想屋についてたくさん教えてくれるが、未来については何も教えてくれない」との言葉を残しています。

つまり、ソロスは「私の投資は、将来を予測することによって成功しているわけではない」と言い、バフェットは「予測をするのは自由だが、それらは決して当たらない」と言っているのです。

 

ちなみにですが、エレインのファンドはその後、運用成績が振るわないにもかかわらず17年以上その地位(資産)を維持していました。

純資産7億ドルに対する信託報酬は1%だったので、年700万ドル(=約8.5億円)の利益を、オーナーである彼女だけが得続けたのです。

 

3. 特別な情報があれば大金を稼ぐことができる

投資の世界には「インサイダー取引」というルール違反があります。

まだ世に知られていないような内部情報を元に取引をするのは、不正です。

 

これを念頭において、インサイダー取引には当たらないけれども、それに近しいような特別な情報を持っていると、投資に成功する(=大金を稼ぐことができる)と考える人がいるようですが、それも間違っています。

 

ウォーレン・バフェットは世界で一番資産を持っている投資家です。

しかし、彼の投資アイディアの源泉のほとんどは、タダで誰でも入手できる企業のアニュアルレポートです。

一般に公開されている決算資料を読み、あるいは、店頭で売られている実際の商品を手にとって試すことで、その企業の業績や製品・サービスの良し悪しを判断していると言われています。

 

もちろん、そんな単純な情報だけではなく、各国の金融政策や経済情報なども折り込んではいるでしょうが、いずれもバフェットだからこそ知り得るような特別な情報ではありません。

 

重要なのは、それらの一般に知ることができる情報の中から、その企業の価値を正しく見極める「目利きの能力」です。

 

バフェットは「インサイダー情報と100万ドルの両方を持っていたとしても、1年以内に破産することだってある」と言っています。

どんな情報を知るかということではなく、そこから何を読み取るかこそが、投資家には求められています。

 

4. 著名な投資家こそが儲かっている

今日、バフェットとソロスは超有名人です。

莫大な資産を築き、多くの資金を運用している彼らが手にする利益は、世界でもトップクラスに大きな金額になっています。

 

例えば、ジョージ・ソロスは、英ポンド崩壊の兆しを読み取り、1992年に100億ドルものショート・ポジションを英ポンドに仕掛け200億ドルもの多額の利益を得ました。

このエピソードはソロスを「イングランド銀行を破綻させた男」と言わしめるようになり、彼のを一気に広めています。

 

しかし、彼らも投資を始めたころは何物でもなく誰からも歓迎されていませんでした。

無名時代からコツコツと運用の成功を積み上げ、今の地位にたどり着いたのです。

確かに、現在の彼らの方が、運用している資産の額が大きいため、利益の金額もそれに応じて大きくなっていますが、バフェットもソロスも誰にも知られていなかった頃のリターンの方が今よりも高かったと言われています。

 

有名になることで、その発言や動向(どの株を買った/売ったなど)にも注目が集まりますが、「有名=高リターン」とは限りません。

未来のバフェットになるような、隠れた実力者がどこかに潜んでいるかもしれません。

 

5. 分散投資をする

ウォーレン・バフェットの素晴らしい運用成績はわずか半ダースの優れた企業からもたらされているのは有名な話です。

バフェットのように巨額の資産を運用している投資家たちは、何十、何百もの企業に投資していると思っている人も多いようですが、これは勘違いです。

数百億ドル(=数兆円)ものとんでもない資産を運用しているバフェット氏ですが、その大部分はわずか半ダース(=6社程度)に充てられています。

 

もちろん、多くのヘッジファンドがそうであるように、バフェット(彼自身や、彼が経営するファンド)もたくさんの企業の株を少量ずつ保有しているでしょうが、たいていの場合は「探り」を入れるのが目的で、本腰を入れた投資ではありません。

 

彼らがメインとする投資先を絞る理由は、それだけ優良な企業(優れた投資先)を見つけ出すのが簡単ではないことを示しています。

極端な話「絶対に儲かる」とわかる企業が1社あれば、そこに全ての資産を注ぎ込むことが最良な判断です。

 

バフェットやソロスをはじめとした著名な投資家は、数千社以上を緻密に調べ、経済情勢を左右するあらゆる情報を収集し、その業界を取り巻く環境を徹底的に調査することで、より確実に儲かる企業を探し出します。

現実的に「最高の1社」を見つけるのは難しく、「より高い利回り」で「少しでも確実に儲かる」数社に絞って、半ダース程度(5,6社)に投資するのです。

 

一方の巷でよくある「分散投資」はこれの反対をいきます。

確かに、様々な会社の株式を保有し、買いと売りを組み合わせ、相反する業種や業界、国や地域の株を買えば、何かの拍子に資産が大きく目減りするような大暴落に備えることはできます。

 

ただし、これは「いろんな株をバランスよく持っておけば一つの会社の株式の影響を小さくできる」という仕組みの話であり、投資の本質的なこと(儲かる企業を見つけ出す)という作業を一切無視している愚行です。

 

そして、昨今のコロナショックのように、市場全体が値下がりするような恐慌時には、結局大きく損をしてしまいます。

不況にも耐え、業績を維持できる真の優良企業を見つけ出して投資しているわけではないのだから当然です。

利益も損失もあやふやにすることは、正しいリスクヘッジではありません。

 

6. 大きなリターンを得るためには、大きなリスクを取る必要がある

「リスクとリターンはトレードオフだから、大きなリターン(成功)を得るためには、相応のリスクをとる必要がある」と考える人が多いようですが、これも勘違いです。

 

起業家達と同様に、成功している投資家たちは非常にリスク回避的であり、リスクを避け損失を抑えるためには何でもする。

 

投資家はチャレンジングで、リスキーな人種だと思っている人もいるようですが、決してそんなことはありません。

同じように勘違いされている人たちに「起業家・経営者」がいます。

ある経営セミナーで「起業家マインド」について議論したところ、様々な「起業家特有の考え・思想」が論じられることとなりましたが、惟一意見が一致したものが「起業家はリスク許容度が高く、リスクをとって挑戦することが大好きである」という考えだったという逸話があります。

 

しかし、実際の起業家に話を聞いてみると、多くの成功した起業家は、リスクを避けるためには何でもする精神の持ち主であり、彼らほどリスク嫌いな人々を見つけるのは難しいだろうということを知ることができます。

革新的なサービスを産み出し、世の中に新しいものを提供する起業家こそ、足元をしっかりと固め、一部の隙も見せずに、リスク回避を徹底しているのです。

 

これは、成功している投資家もしかりです。

彼らはまず、なるべく低リスクな企業を見つけ出し、リスクを避けた運用を心がけます。

そして、「その低リスク企業群」の中から、同じ低リスクでも、少しでも収益性の高い企業を見つけ出して優先的に投資するのです。

 

リスクを避けることは、長期間・安定的に資産を成長させる上での基本です。

 

7. 様々な手法を駆使すれば、安定した収益を確保できる

投資で成功するためには、様々な手法を駆使し、複雑なメソッドを使いこなす必要があると考えている投資家は少なくありません。

チャートとにらめっこをし、様々な指標やグラフ、計算式を駆使して運用することが高度であり、それこそが投資の成功(利益)に繋がると考えているようですが、残念なことにこの幻想も勘違いにすぎません。

 

ウォーレン・バフェットも自身について書かれた本のインタビューの中で「誰もが公式を求めている」と嘆いていますが、誰もが利益を手に入れることができるような難解な公式などどこにもありませんん。

 

ですが、残念なことに、人々は公式を求め、商品先物取引システムを購入し、コンピュータに「よくわからない何か」を打ち込み、資産を減らしてしまいます。

 

投資について知っておいて欲しいこと

2種類の投資の専門家

世の中には2種類の投資の専門家がいます。それは、

  1. 投資で収益をあげる専門家(投資家)
  2. 投資商品を売る専門家(金融屋)

です。

残念なことに、多くの投資家が付き合うことになる、銀行や証券会社は「2. 投資商品を売る専門家(金融屋)」であり、投資のプロではありません。

彼らは、投資によって利益を得ているわけではなく多くの投資家が投資活動をすることに乗じて利益を得ています。

 

例えば、市場の予測について語ったり、安易な分散投資を勧めてくるのは、投資信託の売り込みのための文句に過ぎません。よくわからないメソッドを展開してくるのは、それに関する取引システム(ツール)を売りたいからでしょう。

 

いずれにせよ、純粋に投資で利益をあげる専門家である「1. 投資家」ではない、投資を餌に稼ぐ専門家である「2. 金融屋」に踊らされないようにすることを覚えておいてください。

 

優れた投資家は何をしているのか

ここまで説明してきたように、多くの投資家の「勘違い」は、投資を餌に稼ごうとする金融屋の思惑が強く反映されており、実際に投資活動を通じて利益を得る、真に優れた投資家とは異なります。

 

銀行や証券会社などの多くは「□□の相場が〜」「〇〇の指標が〜」などと様々な情報を発信してきますが、本当の投資家は自分の手法をメディアでおおっぴらに、詳細に語ったりしません。

市場の見通しをバラすことは、自身の利益を毀損することにも繋がりかねません。バフェットやソロスといった本物の投資家が自分が何をしているか、市場についてどう思っているかをめったに語らない理由はここにあります。

 

彼らのように優れた投資家は、市場について無駄な予測などをせず、隠れた(その価値が株価に反映され切っていない)優良企業を見つけ出し、集中的に投資します。

もちろん、リスクを最小限に抑えることができる企業を優先的に選択し、その中から少しでも高いリターンが期待できる企業に投資するのです。

 

その際に、特別なことはなく、一つ一つの企業の業績を、一般に公開されている決済資料などから丁寧に読み解き、製品・サービスを手に取り、時に株主として、社内の状態を確認します。

彼らは、調査する企業が膨大であり、また1社1社を非常に丁寧に調べあげ、独自の「着眼点」を持って、優良企業を見つけ出すのです。

それを積み重ねた結果が、今日の彼らの大成功ではありますが、投資でどの程度のリターンが得られるかと、彼らの知名度にはなんの関係がないことも覚えておかなければいけません。

 

まとめ

一般の投資家の勘違いの多くは、銀行や証券会社などの金融屋によってもたらされたものがほとんどでしょう。

これらの営業トークに踊らされて、損をしている投資家は少なくありません。

 

大切なのは、優れた企業を見つけ出す調査力や分析力と、そこに集中的に投資する判断力です。

仮に、ヘッジファンドのように、第三者機関(専門のサービス)を活用したいと考える場合も、これらのポイントに注意し、また安易に知名度などに振り回されないようにすることが重要です。

 

バフェットやソロスのような偉大なる投資家に学び、「勘違い」を払拭して、投資の本質やその"あり方"についてきちんと考えてみてください。

 

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