近年、「積立型生命保険」が契約件数を伸ばしています。

そもそもの保険としての役割は、万が一病気やけがになった時、死んでしまった時など、「もしもの時のための備え」です。

 

ですが、近頃は保険を、保険としての役割に加えて、資産運用の一つの手段としている人が増えてきているようです。

その中でも、特に利回りが良いとされる「外貨建て」の保険に人気が集まっています。

 

ですが、ここであえて断言しましょう。

資産運用を目的として保険に入るのは決しておすすめできません。

今回はその理由や背景について解説していきたいと思います。

 

外貨建て保険がおすすめできない3つの理由

為替リスクがある

保険の営業マンに話を聞くと、よく以下のような説明(営業トーク)を受けます。

「金利の低い円建ての定期預金より、外貨建ての保険の方が利回りが高く効率的な運用ができます」
「保険は返金する金額があらかじめ決まっているので安心して運用できますよ」
「保険で運用すれば20年後には170%になって返ってきますよ」

 

確かに、いずれもウソではありませんが、これらの言葉をそのまま鵜呑みしてもいけません。

 

外貨建て保険の場合、あくまで「外貨ベース」でいくら戻ってくるか決まっているだけです。

そのため、円に換算して考えると、為替レートの変化によっては払い込んだ金額よりも減ってしまうというのはよくある話です。

 

円建ての生命保険よりも高い利回りをノーリスクで得られるわけがありません。

リスクとリターンは常にセット(トレードオフ)なのです。

極端な話、解約時(満期など)のドル円レートが、支払い時の半分になってしまうと、170%の返戻率だったとしても、戻ってくる資金は円換算で減ってしまう可能性すらあるのです。

外貨建て保険は、元本を棄損する可能性があるという意味で、他の投資と何ら変わらないという事を理解しておきましょう。

 

資金の流動性低下

保険は20年や、30年といった長期で契約しなければなりません。一度契約した後は、基本的に満期まで継続することを前提に話が進められます。

 

保険の年間支払額の世帯平均は1ヶ月約3万2,000円で年間38万2,000円、仮に25年支払い続けると1,000万円近くにもなります。

これほどの大きな資金を満期まで保有すると、一般に60歳までは手元に置いておくことができません。

 

仮に車が壊れた、リフォーム必要になった、親が病気になったなど、急にお金が必要になった際にはどうすれば良いでしょう。

保険を途中で解約し、それまで払っていた保険料を手元に戻すこともできますが、中途解約の返戻率は一般に100%を下廻ります。つまり、支払った額よりも小さくなって返ってきてしまうのです(仮に30年の契約期間だとして、返戻率が100%を超えるのは20数年以降です)。

 

つまり、損すると分かっていても保険を途中で解約するしかないのです。

そんな機会は滅多にないと思う人もいるかもしれませんが、意外とよく聞く話なので、生活に余裕のない人は十分に注意してください。

 

利回りが低い

仮に、余剰資金を投資に充てたいと考えたときに、20年、30年をかけて2倍にも満たないようなリターンしか得られない生命保険は、資産運用として本当に十分でしょうか?

確かに、日本円建ての生命保険と比較して、外貨建て(ドル建てなど)の保険の方が利回りは良いですが、それでも年1.5~2.0%程度です(※実際に年2%を超えるものはほとんどありません)

 

これでは資産運用として不十分です。仮に年3%で運用できるだけで、30年後には2.4倍以上になります。

本気で資産運用を考える人にとって、この1%の差は致命的です。仮に年5%で運用できようものなら、30年後の資産は4.3倍にもなります。

 

そもそも年2%未満の利回りは、インフレにも対応できず、不十分と言わざるを得ません。

資産運用を考えるときに目安となる利回り目標については、以下の記事で詳しく解説していますが、そもそも保険の利回りは、きちんと運用したい人にとって不十分と言わざるを得ません。

 

保険営業の問題点

このように、積立型保険での資産運用には様々なリスク・課題があります。

ですが、これらをきちんと理解せずに保険に加入し、それなりの資産運用をしたつもりになってしまう人が後を断ちません。

 

これには、保険の営業(勧誘)の際に、これらのリスクがきちんと説明されていないという構造的な問題があります。

 

もちろん、保険屋さん(営業)が、嘘をついたり、隠し事をしているわけではありません。ですが、彼らの説明だと

  • ドル建てで170%の返礼率になる
  • 満期まで保有すれば100%以上のリターンになる
  • 銀行預金の金利は0.001%だけど、年2%近い利回りになる

と、いずれもものごとの良い面を切り取った表現になります。

 

いずれもウソではありません。最低限の説明責任はありますが、自分たちの商品のデメリットを全面的には説明してこないでしょう。例えば、中途解約の場合、返戻率が下がることは必ず説明されるはずですし、契約書等の資料にもきちんと明記されているはずです。

     

    そして、もう一つの問題点は「保険に加入する側の一人一人がこのことをきちんと理解できていない」という金融リテラシーの低さにあります。

     

    ここで説明したような商品の特性と、最低限の金融知識があれば、積立型保険で資産運用することが、いかに大したことないかはすぐに理解できるはずです。

    私たち一人一人が、きちんとお金と向き合い、正しい知識を身に付けるようにしましょう。

     

    保険と営業はどのように組み合わせるべきか

    ここで説明したように、資産運用を考えるときに、積立型保険を活用しようという考えは決しておすすめできません。

    仮に、外貨建てにしたところで、少し利回りは上がるかもしれませんが、今度は為替のリスクも伴う上に、それでも大したリターンは得られません。

     

    やはり、保険は保険でしかなく、本来の「なにかあった時のために備える」機能がその本質なのです。

    もちろん保険としての機能を否定するつもりはなく、必要に応じて加入するのは大いに結構だと思います。また、仮に保険に加入するのであれば、外貨建てを活用してみるのも良いでしょう(ただし、利回りと為替リスクがトレードオフなことには十分注意してください)

     

    資産運用を考えるのであれば、その専門であるヘッジファンドなどを優先に考えることをおすすめします。

    「保険としての機能も持ちつつ〜」などと安易な考えをもたずに、

    • 保険は保険で
    • 運用はファンドで

    と、それぞれ専門に分けた方が賢明です。やはり、餅は餅屋です。

    是非、正しい知識を身に付け、より効率的で生産性の高い方法を検討してみてください。

     

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