今回は、2019年おすすめの投資信託として紹介されることも多い「グローバル全生物ゲノム株式ファンド」について解説します。

グローバル全生物ゲノム株式ファンドは設定日が2019年1月16日と非常に最近なのですが、そのわずか2か月半後の4月1日には資産額が500億円に達しました。

 

(出典 日興アセットマネジメント:https://www.nikkoam.com/files/lists/news/2019/news0402_10.pdf)

 

驚くべきスピードで増え続けている事が分かりますね。非常に人気な投資信託となっています。しかし、本当に投資先として有望なのでしょうか?その特徴を解説していきます。

 

グローバル全生物ゲノム株式の基本情報

(出典 目論見書:https://www.nikkoam.com/files/fund_pdf/644552/file/644552moku.pdf)

 

商品名:グローバル全生物ゲノム株式ファンド(1年決算型)
商品分類:追加型/内外/株式
信託期間:2028年12月7日まで(2019年1月16日設定)
購入時手数料:3.24%(税抜き3.0%)以内
信託財産留保額:なし
運用管理費用(信託報酬):純資産総額に対して年率1.7712%(税抜1.64%)
その他の費用:純資産総額に対して年率0.1%を上限とする額
為替ヘッジ:なし
委託会社:日興アセットマネジメント株式会社

 

ゲノム革命は世界を変える

ゲノムは人類史上最大級のイノベーション

何となく言葉としては聞いたことあるけど、ゲノムとはいったいどんなものなのでしょうか。その特徴を見ていきましょう。

まず、ゲノムとはDNAに組み込まれている遺伝情報の事です。

 

理論上はこのゲノムを分析し、編集して活用することで、様々な分野で革命が起きると言われています。

 

(出典 大和証券:https://www.daiwa.jp/products/fund/1901_genome/)

 

ゲノム革命を起こすには、ゲノム解析の技術とゲノム編集の技術が必要です。

ゲノム解析は文字通り遺伝情報を解析する技術です。非常に情報量が多いため今までは不可能とされていたこともコンピューターの進化によって現実的なものとなってきました。

 

ゲノム編集は解析した情報を元に、有利なものに編集していく技術です。CRISPR/Cas9(クリスパー/キャスナイン)という技術が発明され、低コスト高効率を実現したとして注目を集めています。

 

こういった技術は具体的にはどのように役立っていくのでしょうか。特に医療・食料・環境分野に役立つと言われています。

 

医療分野に貢献

今までの治療は病気に対する治療法を施すものでした。しかし、ゲノム技術を用いると個々人に合わせた治療が出来るようになると言われています。

例えば、治療法が確立されていないと言われるガン治療の世界でもゲノム編集を利用した治療が研究されています。

 

(出典 大和証券:https://www.daiwa.jp/products/fund/1901_genome/)

 

また、ゲノム異常による疾患に対してもゲノム編集技術は非常に有効です。

 

食料分野に貢献

ゲノム編集技術による品種改良で世界の飢餓問題を解決できると言われています。

 

遺伝子組み換え作物は異なる生物の遺伝子を入れることになりますが、ゲノム編集では同一の生物内で完結します。

そのため、遺伝子組み換え作物より安全性が高いものとしてアメリカ農務省も承認しています。

 

(出典 大和証券:https://www.daiwa.jp/products/fund/1901_genome/)

 

ゲノム編集技術により病気に強い作物や栄養価の高い食品が生まれればそれは画期的な事ですね。

 

環境分野に貢献

地球温暖化などの環境問題が議論に上がっている昨今、化石燃料に代わるクリーンエネルギーなどへの注目が集まっています。

その中で、温室効果ガス排出量の少ないバイオ燃料への期待も高まっています。

 

(出典 大和証券:https://www.daiwa.jp/products/fund/1901_genome/)

 

ゲノム編集技術は、バイオ燃料の生産増加といった環境分野での貢献も期待されています。

 

ゲノム投資の実態とは

上位組入れ銘柄一覧

ここまでは、ゲノムの可能性について見てきました。カッコいい事がいっぱい書いてあって思わず投資したくなりますね。

ただ、雰囲気に惑わされてはいけません。きちんと冷静な心で判断する必要があります。

それでは、実際の投資の中身に迫っていきましょう。

 

まず、グローバル全生物ゲノム株式ファンドの組入上位銘柄について見ていきます。

 

(出典 マンスリーレポート:https://www.nikkoam.com/files/fund_pdf/644552/file/m_genome_1y.pdf)

 

ほぼアメリカの会社ですね。

1位は「イルミナ」、2位は「インビテ」という会社になっています。

 

これらはいったいどんな企業なのでしょうか。

 

組込1位銘柄 イルミナ

イルミナはゲノム解析技術の分野のグローバルリーダーです。

主にゲノム解析・検査機器に強みがあり、ゲノム解析機器の世界シェア95%を占めています。

 

続いて業績を見てみましょう。

 

(出典 日興アセットマネジメント:https://www.nikkoam.com/files/lists/news/2019/news0218_01.pdf)

 

EPS(一株当たり純利益)や売上高は順調に伸びていて問題なさそうです。それに合わせて株価も伸びています。

一見、何も問題はなさそうです。

 

しかし、PERとPBRに注目すると

  • PER55.78
  • PBR12.29

と極端に割高な水準になっています。

 

ゲノム技術に対する何となく凄そうという期待感から株が買われすぎてあまりにも高すぎる水準になっているのです。

これだけ高騰している株を買うというのはとてもではないですがおすすめできません。

 

組込2位銘柄 インビテ

続いて第2位のインビテについて見ていきます。

インビテは遺伝子検査サービスを提供する会社です。特に分子診断サービスの分野では中核を担う企業です。

 

業績について見ていきましょう。

 

(出典 日興アセットマネジメント:https://www.nikkoam.com/files/lists/news/2019/news0218_01.pdf)

 

売上高は順調に増えていますが、EPS(一株当たり純利益)はマイナスとなっています。

まだまだ赤字運営となっている訳ですね。

 

遺伝子検査サービスという市場が拡大していくか、その中でインビテが自社のシェアを確保できるか、インビテが黒字転換して成長していくためには大きな課題が残されています。

 

仮に株価が安ければ、大きなリターンを狙う意味でもこの利益が出ていない早いタイミングで投資する意味もあるかもしれません。

しかし、PBRは11.14と高くとても割安とは言えない水準です。

 

赤字経営かつ株価も高い、こういった企業に投資するのは間違いなく避けるべきです。

 

まとめ

ゲノムに関する技術自体は非常に素晴らしいものだと思いますし、ぜひ発展を遂げてほしい分野でもあります。

ですが、技術自体の素晴らしさと今投資すべきかどうかは別問題です。

 

現状では、株価が高すぎます。

残念ながら、ゲノム株への投資は避けた方が良いと言えるでしょう。

 

おすすめの記事