老後資産2,000万円が話題になっていますが、それにともなって資産運用の必要性を叫ぶ声をよく聞くようになりました。

日本国民が保有する資産のうち訳50%が現金として預金されているという恐ろしいデータも出ており、資産運用自体が必要であることは改めて強調する必要もないでしょう。

 

銀行に預けているだけの人は、何かしらの方法で今日からでも資産運用を始めた方が良いと思います。

 

しかし、投資というのは不思議なもので、全くのずぶの素人よりも多少知識のある、つまり「株をカジっている」人の方が悪い結果を招くことが多いのです。

 

今日は、なぜ中途半端な中級者が一番負けるのか、投資に潜むカラクリについて説明していきます。

 

投資の「素人」「中級者」とは

まず言葉の定義なのですが、素人とは「全く運用をしたことのない人」、もしくは「何かの縁で適当に投資信託やら投資ファンドやらに投資をして運用を任せているものの、自ら日常的に投資についての情報を集めることはしていない人」をさします。

 

普段生きていて、投資のことを考える時間が、一週間に1時間以下です、という人はすべてこの素人の枠組みに入れて考えます。

 

中級者とは、「自らの判断で個別株などを保有している人」「日常的に投資に関する情報を集めていて、雑誌やネットなどで投資に関するデータを収拾したり、四季報などを元に投資先を考えたりということをする人」です。

 

一週間に1時間以上、投資のことを考えているのであれば中級者とみなして良いでしょう。

かなり該当域が広くなってしまいますが、自分の判断が多少入った投資をしていれば中級者とします。

 

金融関係者やFP、一日に4時間以上投資に時間を費やしている人、投資を本業にする人、などは、これよりも上の「上級者」もしくは「プロ投資家」、という整理をします。

 

誰が負けるのか

株式投資の世界はゼロサムゲームではないので、市場参加者の平均をとってみると「プラス」になっている、つまり適当にゲームに参加しても期待値としては勝ちで終わる可能性の高い場所なのですが、とは言え当然ですが勝っている人と負けている人が存在します。

 

ここで、勝っている人が誰かと言うと、もちろん投資に関する最上位勢で、先ほどの定義で言うところの「上級者」「プロ投資家」です。

割合としては3%以下の、ごく一部の人達です。

 

これは機関投資家であったりヘッジファンドのマネージャーであったり個人の投資家であったりしますが、いずれにしても投資に関する実力が極めて高い人です。

 

そして、最も負けを重ねているのは「中級者」でしょう。

最大のボリュームゾーンにして、最も負けているのが彼らなのです。正確なデータがないので明確なことは言えませんが、私の肌感覚では「素人」よりも「中級者」の方が負けます。

 

なぜでしょうか。

中級者はマスメディアに踊らされる

理由は簡単で、中級者が触れる情報が、2次、3次、4次情報になっているからです。

 

例えばプロの投資家は投資先の株の善し悪しを分析するさい、企業が提出する有価証券報告書という分厚い資料を読むことからスタートします。

 

そして、追加で手に入れたい情報は、株を少し買って株主総会に出るなり、自らIR担当者とミーティングの時間を設けるなり、または現地に出向いて自分の目で実物を確かめると言ったことをするのです。

 

一方、中級者とされる投資家はどこから情報を手に入れるでしょうか?

せいぜい、四季報、新聞、雑誌、テレビ、インターネットです。

そしてそれらの情報というのは、非常に鮮度が低く、マスメディアに流れる頃には株価に反映されてしまっていることがほとんどなのです。

 

情報の鮮度や価値というのは投資において最も重要なマターで、「いまこれが熱い!」と話題になっている銘柄というのは、振り返ってみると話題に上がっている頃が株価のピークだったということになることがほとんどです。

 

過去の事例で言えば、例えば「シェールガス関連銘柄」というものがマスメディアで積極的に取りざたされている時期がありました。

シェールガスが世界の産業の在り方をかえる!ということで大騒ぎになっていたんですね。

 

ですが、すでに機関投資家やプロの投資家はその可能性を織り込んでトレードを終えたあとなのです。

シェールガスはむやみにマスメディアで拡散されて注目を集め、その企業のもつ本来のポテンシャル以上の高値で取引されていました。

 

マスメディアや雑誌で情報を入手し、なんちゃって投資家として市場に参加していた中級者は、この煽りを最も強く受けることになります。

大騒ぎしていた頃に殺到した投資家は、その後数年でグングン下がって行く株価を見て唖然としたことでしょう。

 

今、「AI関連銘柄」や「バイオ関連銘柄」が、次の時代に来る産業だとして注目を集めていますが、こういった上辺の情報を元に株を買うのは非常に危険です。

 

普通の投資家が目にするような情報でするトレーディングというのは負ける可能性の最も高い投資方法なのです。

 

マスメディアが注目するものは危険という法則は、株に限らない

ちなみに、これまで説明してきた現象というのは株式に限った話ではありません。

 

例えば不動産バブルや、仮想通貨のような投機的商品を例にとってみても、これと全く同じことが繰り返されています。

世の中が騒ぎ立てる頃に後乗りした人達は、失敗してしまうのです。

 

ウォールストリートには、「靴屋が株の話をし始めたら株は売り時」という格言があります。

株式投資は儲かるぞ、というほど株が加熱した時は、すでに株がピークアウトする寸前なので、株を持つのは危険だということです。

 

情報というのは、とにかく手に入れれば良いというわけではなく、鮮度の良いもの、内容の良いものを1つか2つ手に入れればそれで良いのです。

むしろ踊らされてしまうような情報であれば触れない方が自分のためになります。

 

株式に限らず、微妙にカジっている中級者というのは投資の世界で常にカモにされています。悲しいですがこれが現実なのです。

 

では、どうすれば良いのか

とれる選択肢は2つで、1つは「自分は素人だ」ということを充分に自覚して投資に接する方法です。

中途半端な情報に踊らされず、自分は何も分かっていない、不用意なことをすると失敗するということを胸に刻んで、いくつかの信頼できる情報だけを頼りにする。もしくは信頼できる人に運用を委託してしまう、というスタンスです。

 

もう一つは、徹底的に勉強を積み、投資の上級者もしくは投資のプロと呼ばれるレベルを目指すという方法もあります。

この場合、一日に最低でも4-5時間は投資のために時間をとるようにしましょう。なかなかハードルが高いですが、本気で取り組みたいのであればこれくらいの努力は必要です。

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