投資信託説明書(交付目論見書)とは

資産運用しよう、投資信託を購入しようと思った時に、必ず目を通すことになる資料が『投資信託説明書(交付目論見書)』(以下、目論見書)です。

目論見書には、その投資信託(ファンド)が、「どんなファンドなのか」「どんな運用をするのか」といった投資家にとって非常に重要な情報が書かれており、目論見書の作成及び交付は法律で義務付けられています。

 

しかし、『目論見書』は内容も細かく、金融に精通していない人にとって、どこをどう読み込めば良いのか難しい部分もあります。

そこで、今回は投資を始める前に必ずきちんと理解しておきたい目論見書について、概要からポイントまで順を追って解説していきたいと思います。

 

投資信託説明書(交付目論見書)の読み方

『投資信託説明書(交付目論見書)』(以下、目論見書)には以下の5つの内容が記載されています。まずはそれぞれどんな内容が書いてあるのかを確認していきましょう。

  • ファンド概要
  • ファンドの特色
  • 投資リスク
  • 運用実績
  • 手続・手数料

 

ファンド概要

目論見書のはじめには、そのファンドの概要がまとめて記載されています。ファンド基本情報としては、以下の情報が記載されています。

  • 単位型 or 追加型(オープン型):最初に設定された期間でしか購入できないか、いつでも購入できるか
  • 投資対象地域:国内のみ/国内外/海外のみ
  • 投資対象資産 (収益の源泉):株式、債券など
  • 投資対象資産:株式一般、投資信託証券など
  • 決算頻度:決算を何度行うか(年○回など)
  • 投資形態:ファミリーファンド/ファンド・オブ・ファンズなど
  • 投資対象地域:日本、アジア、アメリカ、欧州、グローバルなどより具体的な地域
  • 為替ヘッジ:為替ヘッジの「あり」or「なし」

 

まずは大まかな情報の整理です。特に「投資対象地域」と「為替ヘッジ」には注意しましょう。海外投資しているもので、「為替ヘッジなし」となっているものは運用に際し、為替リスクがあるということになります。

また、投資形態が「ファンド・オブ・ファンズ」「ファミリーファンド形式」のものも、目に見えないコストが多重にかかっている可能性が高いため、検討の際には注意が必要です。

 

ファンドの特色

ファンドの特色には以下の情報が記載されています。

  • ファンドの目的
  • 仕組み
  • 運用プロセス
  • 分配方針
  • 投資制限

 

ファンドの目的には、どのような運用を行うのかというファンドの方針・投資戦略とも言える内容が記載されています。例えば「フィンテック企業に投資する」「インド市場に投資する」「アメリカ国債で運用する」「世界経済全体の指数に連動する」などといったものがあり、特定の業界や市場、指数(インデックス)を参考にするなど、ファンドによって様々です。

まさにその投資信託(ファンド)の本質と言えます。

 

合わせて、そのファンドが投資をするにあたって、特に重要視しているポイントやポリシーなどを「ファンドの特色」として記載しています。「中長期で運用する」「安定的な運用を目指す」「信託財産の保証を優先する(損をしないことを最優先)」など、運用上のポイントもここに記載されています。

 

加えて、最近では、そのファンドが投資しようとしているものについての解説を付け加えるものも増えてきました。例えば、"メキシコ株投信"であれば、「いかにメキシコ市場が魅力的か」を解説していますし、"女性が活躍する企業に投資するファンド"は、「女性の活躍がいかに企業の成長と密接に関わっているか」などを詳しく解説していたりします。

 

ここまでを読み込むことで、そのファンドが、

  • どんなものに投資しようとしているのか
  • どんなスタンス(戦略)で運用しようとしているのか

を知ることができます。

 

ファンドの仕組みや運用プロセスについても記載されていますが、仕組みについては「マザーファンドを経由して間接的に市場に投資しているファミリーファンド形式」か「ファンド・オブ・ファンズ形態」のいずれかの場合が大半ですし、運用プロセスは「ミクロ/マクロ分析〜ポートフォリオの構築」と、どのファンドも極めて一般的なことを記載している場合が大半です。

時折、外部組織に調査・分析を依頼している場合もありますが、ほとんどの場合特に差別化されたことが記載されているとは言えません。

 

最後に、分配金について記載されています。これは「年に○回」などとあるだけなので、簡単に確認することができます。

投資制限については、何もない場合もありますが、例えば「日本株の比率を50%以上にする」「特的の銘柄の比率を10%以下にする」など、ポートフォリオに関する記述が多いです。これによって、「過度な集中投資やそれに伴うリスクを回避しますよ」という制約が設けられます。

 

投資リスク

投資リスクは、細かくいろいろと記載されており、最も情報量が多い項目の一つです。

ですが、大半の目論見書に書かれている内容は「元本が保証されているわけではなく、損失を被る可能性がある」「クーリングオフができない」という2点に限ります。

 

投資にあたって、損をする可能性のある商品であることを投資家に提示することが義務付けられているため、記述されているといっても過言ではありません。細かくいろいろと記載されている情報は、値下がりする要因(可能性)を列挙しているにすぎません。ファンド固有の情報は少ないため、目論見書に慣れている人は流し読みでも十分でしょう。

 

また「クーリングオフ」についても同様です。当たり前のことですが、投資信託に「損をしたので、やっぱりなかったことにしたい」といったことは通じません。常識的な内容ですが、これも目論見書に記載して、投資家に通知することが義務付けられています。

 

投資リスクの項目には、そのファンドがいかに低リスクかをアピールするために、他の金融商品や日経平均などの指数(インデックス)との比較を載せているものも少なくありません。参考情報として確認しておいても良いでしょう。

 

運用実績

運用実績には、

  • 基準価格の推移
  • 純資産総額の推移
  • 過去のの分配金

などが記載されています。

これらを確認することで、そのファンドが「どれだけ儲かっているか」「どの程度の規模(人気)」なのかを確認できます。

 

その時点の基準価格も重要ですが、過去の価格推移を見ることで、そのファンドの運用がどの程度安定しているかを確認することができます。運用の安定感は、ファンドのリスクマネジメント能力に強く依存します。

あくまでも過去の実績なので、今後のパフォーマンスを保証するものではありませんが、必ず確認しておくべき項目でしょう。

 

手続・手数料

最後に記載されているのは、申し込み(手続き)に関する事項や、手数料に関する事項です。手続きについては、購入単位、申込期間、信託期間、決算日といった項目がズラリと並んでいます。

 

多くの投資家が気にする、肝心の「手数料」ですが、投資信託にかかる手数料は主に以下の3つが挙げられます。

  1. 購入時手数料
  2. 信託財産留保額
  3. 運用管理費用(信託報酬)

 

購入時手数料は、文字通り「購入時」に支払う手数料です。投資信託で運用を始めると同時に負担する必要があり、この分だけ資産が目減りした状態から運用がスタートすることになります。一般的に3%前後で設定されています。

 

信託財産留保額は、中途解約手数料のようなものです。(信託期間の満期を待たずに)途中で解約した際に支払うことを求められますが、最近はこの手数料を「なし」としているものも少なくありません。設定されている場合でも0.1%程度の場合が一般的です。

 

最後に、運用管理費用(信託報酬)ですが、これは投資信託を保有している限り、継続的に発生する費用です。まさに運用にかかるコストそのものであり、投資信託(ファンド)を経由して投資をする際のキモにあたります。

委託会社、販売会社、受託会社それぞれにかかる費用をそれぞれ提示している場合もありますが、合計して何%になるのかを確認することが重要です。この費用が最もファンドによってばらつきがありますが、一般的には「1%未満であれば安い、2%以上であれば高い」と言って良いと思います。

 

投資信託説明書(交付目論見書)で重要な項目

さて、このように様々な情報が記載されている『投資信託説明書(交付目論見書)』ですが、投資を検討する際にはどこに着目する必要があるのでしょうか?

 

最優先で確認するべきは、「ファンドの特色」でしょう。投資信託の名称から、ある程度のイメージがつくとは思いますが、「何に」「どのように」投資するのかを確認することが最も重要です。

自分自身が増えそう(儲かりそう)だと思えるものに投資しているか。自分自身が投資に求めるリターンの感覚とマッチしているか。まずは、この点を確認し、投資に値するかを評価する必要があります。

 

合わせて「分配金」についても確認しましょう。頻繁に過度な分配金を支払うファンドは、それだけで投資魅力が大きく下がります。詳しくは以下のページで詳しく解説していますが、目先の利益に惑わされることなく、分配金のないものをオススメします。

 

次に確認するべきは「運用実績」でしょう。先述の「ファンドの特色(投資戦略)」に則って、きちんと運用成果が出ているかを確認する必要があります。そのファンドが「有言実行」できるだけの実力があるのかも確認しておきましょう。

 

最後に、手数料を確認しても良いですが、検討事項としては優先度が低いことを注意しなければいけません。

  • 投資の内容に納得、賛同ができるもの
  • 今後の成長(儲け)が期待できるもの

を選別した上での、最後の確認事項です。

投資信託の手数料に大きな差はありません。「1%が大きな差に広がる」「まずはノーロード(購入手数料0のもの)を!」などと勧める人もいるようですが、投資信託選びで何と言っても重要なのは、そのファンド(投資信託)が運用で成果を出せるか否かです。

目先の数字に惑わされず、本質を掴むことを優先しましょう。

 

投資信託での運用を考えるのであれば、購入"前"に目論見書を読み込み、そのファンドについてきちんと理解することが重要です。初めは難しいかもしれませんが、自分の資産を投じるものをしっかりと把握できるよう少しずつでも理解を深めていきましょう。

 

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