ひと口に「投資ファンド」といっても様々なタイプのものがあります。

大手の証券会社が推し出しているような「テーマ型投信」や「インデックスファンド」に始まり、「ひふみ投信」や「さわかみ投信」「セゾン投信」などに代表される「独立系の投資信託」、そしてバークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway Inc.)や、ブリッジウォーター・アソシエイツ(Bridgewater Associates)などに代表されるような「ヘッジファンド」まで、その種類は様々です。

 

その中でも今回は、最近特に注目が集まっている「セゾン投信(独立系投信)」と「Tortoise Partners, トータスパートナーズ(ヘッジファンド/私募ファンド)」を比較してみたいと思います。

両者の違いを知ることで、ファンドごとの違いやタイプごとの特徴についても掘り下げていきましょう。

 

投資先の比較

まずは、セゾン投信とTortoise Partners(トータスパートナーズ)の概要を知るためにも、それぞれがどんなものに投資しているファンドなのかを確認していきましょう。

投資先を知ることができれば、そのファンドの特徴を大まかに想像することができます。

 

セゾン投信の投資先

セゾン投信は、世界中の様々な分野に幅広く投資を行っています。

ポートフォリオの組入比率は以下の通りです。

出典:セゾン資産形成の達人ファンド|積立投資・つみたてNISA(積立NISA)ならセゾン投信
https://www.saison-am.co.jp/fund/master/

 

このグラフを見てもわかるように、セゾン投信のポイントは「分散投資」にあります。

分散投資と聞くと、「分散=リスクヘッジ=良いこと」と安易に考えてしまう人がいますが、決してそうではありません。

 

確かに、分散投資をすることによって特定のリスク(ある企業・業界が失墜した、特定の国や地域の情勢が良くない、など)による大きな損失を軽減することはできますが、一方で、リターンも分散されてしまうのが「分散投資」の特徴です。

 

「この会社/業界/地域の株価は上がるはずだ」と、確固たる決断ができない場合の、いわば「逃げの選択」でもあり、どっちつかずな判断とも言えます。

 

セゾン投信のポートフォリオを見る限り、世界中のありとあらゆる地域・業界に広く分散しているため、世界全体の経済情勢に連動するような、市場との相関がとても強いものであることが予想できます。

 

セゾン投信は、良い意味でも悪い意味でも、世界の株式市場が強くなれば成長し、そうでなければ後退するような、一般的なマーケット水準の動きをしていくだろうと予想されます。

 

Tortoise Partnersの投資先

一方、Tortoise Partners(トータスパートナーズ)の投資先は「国内の未公開株」です。

未公開株とは、上場していない(非上場の)会社の株式のことで、株主(一般的には創業者や現社長)と直接交渉して買取ります。

 

非上場企業の中でも、経営に問題がないにもかかわらず、経営者の高齢化・後継者不在などによって廃業を余儀なくされるような優良企業を買収し、経営の維持・改善をしていくのがトータスパートナーズの投資戦略です。

 

トータスパートナーズの投資戦略は、一般的な上場株式で運用するファンドと比較して、良くも悪くもマーケットの値動きとは相関が弱くなることが予想されます。

 

そもそも、上場していない未公開株式の株価は、株主との相対取引によって決定されるため、マーケットで多くの投資家の目に晒されるようなものとは本質が異なります。

その会社に価値を見出している人にとっては魅力がありますが、そうでない人(関わり合いのない人たち)にとっては、評価が難しいのです。

 

したがって、経済情勢(市場で取引されている株価)がどうなろうと、トータスパートナーズの運用には大きな影響はないでしょう。

 

トータスパートナーズの場合、いかに優良な企業の株式を安値で仕入れ、それをバリューアップ(価値提供)できるかに運用実績が左右されます。

日本には、黒字の優良企業でありながら、人員的な課題(従業員の高齢化)によって、経営が苦しくなっている会社が非常に多くあります。

 

それらの会社に投資(買収)することで、資金提供をし、またファンドの人脈やノウハウを駆使して、今後も戦える企業に立て直していくことは、ファンドと投資先の会社双方にとってメリットがあります。

 

そのために重要なのは、優良企業を見定める選定眼や経営能力です。

つまり、トータスパートナーズに投資するということは、ただ市場に連動する投機的なものに投資するのではなく、「トータスパートナーズの展開するビジネスに投資をする」という意味合いが強くなります。

 

投資先として未上場企業選んでいることは非常に興味深く、ビジネスとしても非常に期待ができます。

今後、少子高齢化により、日本にはますます優良な未公開株式が溢れ返ることが予想されるため、トータスパートナーズのような投資戦略は、活況になることが予想されます。

あとは、トータスパートナーズが「どれだけ良い会社を選べるか」「経営改善(価値提供)していけるかとどうか」という手腕に期待がかかります。

 

リターン/利回りの比較

ここまで、「セゾン投信」「トータスパートナーズ」それぞれの投資戦略から、運用の特徴を紐解いてきましたが、やはり、投資において重要なのは「リターン/利回り」でしょう。

それぞれのパフォーマンスについて、運用実績(トラックレコード)などを元に比較していきたいと思います。

 

セゾン投信の実績

今回は、セゾン投信の中で最も代表的な(且つおすすめの)「セゾン資産形成の達人ファンド」を参考にしてみましょう。同ファンドの直近10年間のレコードは以下の通りです。

上の青色のグラフがセゾン投信の推移、赤色はその間のTOPIXの推移になります。

出典:セゾン 資産形成の達人ファンド【96312073】:詳細情報:投資信託 - Yahoo!ファイナンス
https://finance.yahoo.co.jp/quote/96312073

 

TOPIXを大きく上回る運用に見えますが、この数字は手数料控除前なので、実際の投資家のリターンはもう少し低くなります。とは言え、ファンドとしては非常に良い成績と言えるでしょう。

 

パフォーマンスの特徴は、やはり「マーケットとの相関が非常に強い」ということです。

市場の動きに連動していますが、少しだけ市場よりも良い値動きをしています。

 

しかし、より詳しく見ていくと、上がる時はマーケット以上の上げ幅を記録しますが、下げ相場ではマーケット以上に下がってしまっていることがわかります。

レバレッジをかけた運用をしているわけではないものの、単に市場(マーケット)の値動きをより大きくしたようなパフォーマンスになっているのです。

 

ここ10年間は、「日系の株式マーケットが総じて上げ基調だったため、結果的に良い成績に修まっている」という評価をすることもできます。

セゾン投信は、経済が好調のときはよいですが、一転して急落した場合にどのような値動きになるのか注意が必要です。

 

トータスパートナーズの実績

トータスパートナーズはファンドとして立ち上がって間も無いためトラックレコードがないようです。

また、一般的な話として私募ファンドは利回りを開示することはないため、情報を探し出すこと自体がかなり難しいという側面もあります。

 

このような場合にはファンドマネージャーのそれまでの(他のファンドでの)運用実績が参考になります。

トータスパートナーズのファンドマネージャーは、界隈ではある程度名の知れた人物であり、これまでの運用ファンドの利回りは平均で10%程度と言われています。

(他サイトより抜粋)

マーケットが強かったということもあると思いますが、ヘッジファンドのマネージャーとしては、十分な好成績でしょう。

 

パフォーマンスを考えるときに重要なポイント

さて、ここまでは過去の実績(トラックレコード)から、ファンドのパフォーマンスを考えてきましたが、ここで一つ重要なポイントについて掘り下げておきましょう。

 

多くの投資家が「これまでの成績が良い=良い投資先」「これまでの成績が悪い、実績が少ない=よくない投資先」と安易に考えてしまいますが、重要なのは、「今後成果が出るか(儲かるか)どうか」です。

既にある程度の価格まで上がってしまっているものの場合、割高になってしまっていたり、もう伸び代がなくなっている可能性も懸念されます。

 

ひふみ投信がその一例ですが、ひふみ投信のトラックレコードはこのように直近10年で素晴らしい成績となっています。

出典:ひふみ投信【9C31108A】:詳細情報:投資信託 - Yahoo!ファイナンス
https://finance.yahoo.co.jp/quote/9C31108A

 

しかし、注意しないといけないのは、2018年の時点で投資をした人は、いま大損をしているということです。

2009年から2018年までのトラックレコードに魅せられて後乗りで投資をし始めた人達は、それまでのひふみ投信の動きを期待したのだと思いますが、金融商品の値動きはそう単純なものではありません。

ひふみ投信だけに限らず、マーケット(日本株式市場)全体が割高基調になっており、そこからさらに株価を上げるのが難しくなっていた可能性も考えられます。

 

一方、まだまだひふみ投信の知名度がなく、ただの新進気鋭の(少し怪しい)独立系ファンドだった2009年頃に思い切って投資をした人はどうでしょうか。2018年の暴落を考慮しても、資産は莫大に増えています。

 

「有力なファンドに初期から投資する」というのは、それだけ勇気や判断力が求められますが、リターンも大きくなるものなのです。

 

セゾン投信とトータスパートナーズのような歴史の違うファンドを考える際、ここは非常に重要なポイントになります。

これまでの実績がないということは、不安材料にも思えますが、これから資産を増やしていこうと考える人にとっては魅力的な要素でもあるのです。

 

ちなみに、このように有名になる前に投資をしておくことで最大リターンが得られるというのは何もファンドに限った話ではなく、あらゆる生株や不動産、投機的商品にも言えることです。

 

仮想通貨のような非常に値動きの不安定なものでさえその傾向は当てはまります。

誰も知らない時に投資をしていた人は莫大な利益を得ましたが、テレビなどで話題になり、名が知れてから投資をした人が大損を被るという、非常に典型的な結果を辿りました。

 

セゾン投信とトータスパートナーズの比較においても、まだ名が知れていないトータスパートナーズに投資することは、今後の利益(リターン)を期待する場合、魅力があると考えることができます。

 

まとめ

今回、セゾン投信とトータスパートナーズを比較するにあたり、投資先(投資戦略)から運用の特徴を紐解き、またトラックレコードだけでなくそこから考えられる「今後の可能性」についても考察しました。

 

それぞれに一長一短がありましたが、

  • マーケットに期待するなら「セゾン投信」(ただし経済が悪化すれば大損リスクあり)
  • ファンドのビジネスを評価し、将来的なリターンを期待するなら「トータスパートナーズ」

とまとめることができるでしょう。

 

それぞれのファンドについては、以下の記事でより詳しく考察・検討しています。興味がある方は、是非合わせてご一読ください。

 

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