代表的な投資の方法の一つに「FX」があります。

FXは「普通の主婦がFXで2億円稼いだ!!」などという話を耳にすることがあるように、ビッグマネーが稼げる投資として取り上げられることも多い投資の方法です。

 

また、少額から簡単に始められるため気軽に手を出す人も多く、「資産運用をFXでしてみようか」と考える人も多いようです。

海外旅行などの際に外貨(現地通貨)に両替をしたことがある人も多く、そういった点も心理的なハードルを下げているのかもしれません。

 

しかし、FXは資産運用には決して向いていません。

確かに、一発当てて大儲けできる可能性もありますが、「投資」よりかは「ギャンブル」に近く、ハイリスク・ハイリターンで安定して運用できるようなものではないのです。

 

ここでは、世間一般で言われているFXの特徴を捉え、それのメリットだけではなくデメリットと合わせて考えていきたいと思います。

 

「FX」とは

FXの特徴を掘り下げる前に、大前提として「そもそもFXとは何か」を簡単におさらいしておきましょう。

FXとは「外国為替証拠金取引」のことで、Foreign eXchange」からFXと呼ばれています。要は外貨を買ったり売ったりして、利益を得ようという取引です。

 

例えば1ドル100円の時に、100円出して1ドルを買ったとします。

その後、為替が変動し1ドル120円になると、前回買った1ドルを売却すれば120円になって戻ってきます。

100円で買ったもの(1ドル)が120円で売れるのですから、20円の利益を得られます。

 

実際に証券会社を通じて取引をすると「スプレッド」という名目で手数料を取られるため、利益はこれよりも小さくなってしまいますが、これがFXで投資をし利益を得る方法です。

もちろん、1ドル100円だったものが、90円まで円高に振れてしまえば、10円損をする可能性もあります。

小額から手軽にはじめられ、24時間取引できる点などが好感されているようです。

 

FXの3つのポイント

レバレッジ

FXが好まれる理由の1つに「レバレッジ」があります。

レバレッジとは「てこの原理」のことで、借入をすることによって自己資金よりも大きな金額を運用できる仕組みのことです。

 

例えば、10万円を元手にしている人が3倍のレバレッジをかけて運用してみたとしましょう。実際の資金は10万円なのに、30万円分までの取引ができるようになります。

仮に1ドル100円のときにドルを買って、105円まで円安になったところで売ったとします。

10万円の資金ですが、30万円まで取引できるので、購入したドルは「30万円÷100ドル/円=3,000ドル」です。これが105ドル/円になれば、ドルを売って円を買い戻した時の資金は31.5万円(+1.5万円)になります。

本来であれば、10万円→10.5万円(+5,000円)で5%の利益しか得られなかったはずが、10万円→11.5万円(+1.5万円)で15%の利益に拡大しているのです。

 

これがレバレッジの仕組みです。

仮に3倍のレバレッジをかけて、3倍の金額を取引すれば、利回りも3倍になります。これにより、元手がない人も少額の自己資金から投資を始めることができるのです。

ちなみに、日本では個人でも最大で25倍までレバレッジをかけることができます。

 

スワップポイント

FXのもう1つのポイントに「スワップポイント」があります。

スワップポイント、とは「金利差調整分」として2国間の金利差異をベースに、日々付与されるボーナスのようなものです。

計算の仕方が難しいため、ここでは詳細を割愛しますが、仮にアメリカの金利が1.5%、日本の金利が0.1%の場合「1.5%−0.1%=1.4%」の1.4%がスワップポイントとして付与されます。

 

この例の場合、年間で1.4%の金利差が埋められるようにポイントが付与されるので、1日に換算すると0.0038%くらいです。仮に100万円運用していれば、毎日38円くらい受け取ることができます。

(※2020年に入り、コロナショックの影響もありアメリカが金利を大きく下げました。結果、日本との金利さは小さくなり、2020年5月現在のスワップポイントは、1万ドルあたり9円前後です)

 

チャート分析

FXで運用している人の多くが、その通貨の信用度やその国の経済力ではなく、日々の値動きを追いかけて上げ下げを予測する「チャート分析」を行っています。

「〇〇%下がった後に反動で少し戻る」とか「□□日かけて平均的に上昇しているのでトレンドに入った」などと様々な指標でチャートを分析し、過去のデータから未来を予測しようとしています。

 

実際に、FXに関する書籍や雑誌は数多く出版されているだけでなく、様々な(自称)トレーダーがSNSなどを通じて情報発信をしています。

それらを通じて勉強することで、チャートを分析して未来を予測し、勝てるようになると考える投資家もいるようです。

 

3つのポイントを掘り下げて考える

レバレッジはハイリスク・ハイリターン

レバレッジを上手く活用することで、自己資金以上の運用をし、高い利回りが期待できることがわかりました。

仮に25倍のレバレッジをかければ、為替が+4%変動(100ドル/円→104ドル/円)するだけで、資産を一気に倍にすることができます。

 

確かに、一攫千金を狙う方法としては魅力的ですが、オイシイ話には当然裏があり、リターンが大きくなっている分、リスクも高まっています。つまり、レバレッジをかけた運用は「ハイリスク・ハイリターン」な諸刃の剣です。

 

先の例で言えば、為替が−4%(100ドル/円→96ドル/円)変動しただけで、自己資本が全て消え去ってしまいます。

ここで覚えておかなければいけないのが、場合によっては自己資本以上の損失を被る危険性があるということです。

 

一般に、ロスカット(強制的に資産が売却され取引ができなくなる)の仕組みがあり、レバレッジが25倍の場合、為替変動が−4%で、自己資本がなくなる状態を基準にする人が多いようですが、マーケットの動きが急激すぎる場合、−4%で上手くロスカットできない場合があります。

急激な為替変動で、ロスカットが間に合わず、為替が−10%も下がったところで取引が終了となった場合、その損失は−250%、つまり自己資本の2.5倍です。

 

「10万円を元手に運用をしていたつもりが、気がついたらそれを遥かに上回る25万円の損失を被っている。」これがレバレッジの怖いところであり、FXで多くの人が破産してしまう理由です。

 

株式投資であれば、どんな株を買って、その株が大暴落したとしても、買った株式の価値が下がるだけなので、借金をすることはありません。資産がゼロになることが最大の損失であり、マイナスになるリスクはないのです。

 

レバレッジは、FX最大の特徴でもありますが、非常に大きなリスクを伴っており、安定した資産運用には適していないことを覚えておきましょう。

 

スワップポイントよりも為替変動

スワップポイントの話を聞くと「固定で利益が得られるのだからそれだけでおトクなのではないか」と考える人もいるようですが、そんな甘い話ではありません。

実際のスワップポイントは非常に小さく、大きな利益が期待できるものではありません。

 

ちなみに、2020年5月11日時点の1万通貨あたりのスワップポイントは以下の通りです。

参考:本日のスワップ一覧│FX・外国為替「外貨ex」|YJFX!
https://www.yjfx.jp/gaikaex/mark/swap/today.php

 

ドル円の場合、100万円以上運用して(※当日の為替が1ドル=106円前後)、スワップポイントが9円であり、その比率は0.00001%程度です。これは、些細な為替変動ですぐに吹き飛んでしまいます。

 

そもそもスワップポイントとは、2国間の金利差異からくる不平等を緩和するためのシステムであり、これによって利益や損失が発生するものではありません。むしろ、一方が有利にならないようにバランスを調整するためのものです。

FXに手を出すのであれば、この程度の仕組みはきちんと理解しておきたいものです。

 

チャート分析の不確実さ

「分析」という言葉に惑わされて、いつかはチャートの先行きを理解できるものだと考えてしまう人もいるでしょう。また「行動経済学」「行動心理」などというそれっぽい言葉を使って、あたかも学問かのように、そこに法則があり、解き明かせるもののように語る人もいます。

 

ですが、FXであれ、株式投資であれ、チャートをきちんと分析できるなどということはありません。

もし仮に、本当にそんなことができるのであれば、AIやビッグデータを駆使したIT企業が、人の頭よりも遥かに膨大なデータを分析し、より確実で正確な運用をやってのけるはずです。

 

チャートの上げ下げだけから次の予測をするなどバカげています。国の通貨の良し悪し(信用度)はその国の経済や世界情勢における立ち位置などに左右され、大きく影響を受けます。「〇〇%動いたから、戻す」などという簡単なものではないのです。

 

世界の動きに左右され、国の内情が反映され、そこに参加するトレーダーたちの心情や思いまでもが乗っかって日々揺れ動くのがチャートです。

これを分析できると考えることがいかに現実的でないかをよく考えてみてください。FXは「世界最大のカジノ」と呼ばれるほど、所詮はギャンブルなのです。

 

まとめ

今回解説してきたように、FXで資産運用をすることは決しておすすめできません。「リスクが高く」「不確実」で「リスキー」なためです。

 

ここで、誤解して欲しくないのは、FXで投資をしている人の全てを否定するつもりではないということです。

日々細かな為替変動を追いかけ、利益と損失に一喜一憂しても良いでしょうし、レバレッジをかけて一攫千金を夢みることは決して悪いことではありません。

 

ただ、繰り返しにはなりますが、資産形成を目的とするような、安定した運用をしたい人には決しておすすめできるものではないということです。

資産運用の基本は、「長期・安定・低リスク」です。まずは、一般的な株式投資や、その中でも低リスクな割安株に投資するヘッジファンドなどを検討することをおすすめします。

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