株式指標について
株式投資をしていると、様々な用語・指標を目にすることになります。
用語は指標は山のようにあり、全てを理解するのは難しいかもしれませんが、代表的なものや、一般的によく活用されている指標については、きちんと理解しておくにこしたことはありません。
そこで今回は、数ある指標のなかでも最も基本的なものである「PER」と「PBR」について解説していきたいと思います。
これらの値の算出方法を知っている人は多いでしょうが、この数字の見方(評価の仕方)やそれぞれの違い・特徴まできちんと理解できているでしょうか?
順を追って解説していきましょう。
PERについて
PERとは
PERとは、Price Earnings Ratioの頭文字を取っており、日本語では「株価収益率」と言います。
「1株当たりの純利益」に対して、株価が何倍になっているのかを表しており、利益に対して株価が割高か割安かを判断する際に使用されます。※「会社の利益に対して、時価総額が何倍か」とも捉えることができますね。
例えば、1株当たり純利益が100円の会社の株価が2,000円であれば
- PER:2,000÷100=20
となります。
PERの評価基準
PERはそれ単体の数字ではなかなか評価することができません。
先ほどの例に出した会社の「PER=20」という数字も、それだけではあまり意味を持ちません。
PERの値は、競合する企業や、市場全体の平均などと比較して、割高or割安を評価することができます。
時期によっても変動しますが、日本の株式市場全体のPERは平均で15前後です。
この数字と比較すると、先ほどのPER=20の会社は、相場よりも株価が割高になっている可能性が高くなります。
ただし、PERの値は、業界などによっても大きく異なるということに注意しなければいけません。
業界 | PER平均 |
建設業 | 9.8 |
化学 | 15.0 |
機械 | 14.2 |
情報・通信業 | 27.6 |
サービス業 | 22.5 |
仮に先ほど例にした企業が建設業であれば、PER=20は非常に割高になっている可能性がありますが、情報・通信業の場合は、むしろ割安の可能性もあります。
PERの数字を見る際には、何を基準に評価するのかをきちんと考えるようにしましょう。
PBRについて
PBRとは
PBRとは、Price Book-value Ratioの頭文字を取っており、日本語では「株価純資産倍率」と言います。
「1株当たりの純資産」に対して、株価が何倍になっているのかを表しており、資産に対して株価が割高か割安かを判断する際に使用されます。※「会社の資産に対して、時価総額が何倍か」とも捉えることができますね。
例えば、1株当たり純資産が1,000円の会社の株価が2,000円であれば
- PBR:2,000÷1,000=2
となります。
PBRの評価基準
PBRの平均は日本企業全体で1.2前後ですが、一般的には1より小さいと割安だと言われています。
PBR=1となるのは、「株価」=「1株当たり純資産」の状態であり、それ以下の株価であれば、簿価以下の値段で株が買えることになるのです。
ただし、このPBRも業界ごと基準・平均が異なるので注意が必要です。
事業の性質上、多くの資産を溜め込みやすい業界もあれば、資産をほとんど持たずに利益をあげやすい業界もあるので、PBRについて考えるときも、業界ごとの特徴や事業の性質をしっかりと考慮するようにしましょう。
業界 | PBR平均 |
建設業 | 0.8 |
化学 | 1.2 |
機械 | 1.1 |
情報・通信業 | 2.4 |
サービス業 | 2.1 |
PERとPBR - それぞれの特徴 -
PER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)は、言葉こそ似ているものの、その内容は全く異なるものであるということがわかりました。
ここでは、さらにそれぞれどんな特徴があるのかを掘り下げて考えていきたいと思います。
まず、PER(株価収益率)ですが、これは「純利益」を基準に株価の割高or割安を評価しているため、単年で大きく変動する可能性があります。
会社のが変動する理由は、事業の良し悪しだけには限りません。
新規投資を行って収益幅が減少する年もあれば、土地を売却するなどして特別利益が計上されることもあります。最近では、新型コロナウイルスの影響で、短期的に業績が大きく乱高下している企業も目立ちます。
PERを基準に株価の割高or割安を判断をすることはできますが、短期的な話によってその数字が評価に値しないものになっている可能性についても常に吟味するようにしましょう。
それを判断するためには、企業の決算資料から、「何で利益が出ているのか」「どこにコストがかかっているのか」を読み解かなければいけません。
一方の、PBR(株価純資産倍率)は、会社の「純資産」を基準にしているため、大きく乱高下することはあまりないと言われています。
会社の資産は、これまでの事業で得られた利益/損失の積み重ねであり、仮に不動産などを購入/売却したとしても、資産の形が現金↔︎不動産で変わるだけなので、帳簿上の資産額に大きな変化は出にくいのです。
だからと言って、PBRの方がPERよりも信頼に足るかというとそうとも限りません。
PBRは、会社の収支(利益)を評価に含まないので、事業の良し悪しを判断することはできません。
仮に、たくさんの資産を持っていたとしても、経営が悪化し、少しずつ赤字を積み重ねている企業になっている可能性もあります。そういった会社は、短期的に大きく株価が下落することはなくとも、少しずつ業績を悪化させて、株価も下がってしまうかもしれません。
PBRが低いからといって、「割安=買いのチャンス!」と安易に考えると、思わぬところで痛い目を見る可能性もあるので注意が必要です。
まとめ
PERとPBRについてここまでの話をまとめると以下のようになります。
PER | PBR | |
名称 | 株価収益率 | 株価純資産倍率 |
算出式 | 株価÷1株あたりの純利益 | 株価÷1株あたりの純資産 |
日本企業の平均 | 15 | 1.2 |
特徴 | 単年で変化しやすい | 大きく変化しにくい |
注意点 | なぜ利益に影響があったのかを考慮する必要がある | 会社の業績については"別途"考慮する必要がある |
これまで見てきた通り、PERやPBRは収入や資産の状態を表す非常に重要な指標です。
ただし、いずれの指標もそれ単体で評価することは難しく、周り(市場全体の平均、業界の平均、ライバル企業など)と比較して検討する必要があります。
また、その指標に会社の全てが表れるわけでもないため、会社・株価を評価するためには、多角的に分析することが求められます。
株式投資に関する様々な指標は、一つ一つに重要な役割があり、ザックリとした評価をするときや、分析の目安とする場合には非常に参考になります(例えば、一定の値を基準に割安株の絞り込みなどを行ってもよいでしょう)。
ですが、指標がわかるようになったからといって、株式投資で勝てるようになるわけではありません。
株価を適切に評価するためには、様々な角度から分析・研究をし、より詳細に掘り下げるための情報や知識が必要です。数ある指標について、きちんと知識を蓄えつつ、少しずつでも勉強を進めていきましょう。