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そもそもリスクとは
投資信託には「リスク」が付きものだと言われます。
リスクという言葉には、「リスクがあって怖い」「リスクが高い」などとネガティブなイメージが付きまといますが、そもそもリスクとは一体なんなのでしょうか?
リスクとは決して怖い、危ないものではありません。
投資におけるリスクとは、リターンの予測(見込み)のブレ幅のことをさします。例えば、以下の2つの有価証券A・Bの場合、リターンのブレ幅が大きいBの方がよりリスクが高い金融商品と言えます。
出典:リスクとリターン - 投資信託協会
https://www.toushin.or.jp/investmenttrust/meritrisk/riskreturn/
ここで重要なのは、有価証券AもBも最終的なリターンに差はなく、リスクの高い商品の方が損をするというわけではないということです。
リスクの高い商品は、その分より高いリターンを期待できるのが一般的です。これを「リスク・リターンのトレードオフ(リスクとリターンはトレードオフだ)」などと言ったりします。
基本的にローリスク・ローリターン、ハイリスク・ハイリターンの関係は変わりません。
例えば、ローリスクの代表である預金は、1年後のリターンが"ほぼ"確実に決まっています。金利が0.02%ならば、100万円は1年後に100万200円になります。銀行が破綻でもしない限り、リターンは固定なのです。100万円が90万円に減ってしまう可能性もないかわりに、万が一にも120万円になることもありません。
これがローリスクということです。
一方で、株や投資信託などは、1年後に+20%になる可能性もあれば、−20%になる可能性もあるでしょう(どの程度のブレ幅があるかは"もの"によります)。これが、株が預金と比べてハイリスクだと言われる理由です。
出典:リスクとリターン - 投資信託協会
https://www.toushin.or.jp/investmenttrust/meritrisk/riskreturn/
ちなみに、
- 1年後に、100%の確率で0.02%の金利がつく預金
- 1年後に、50%の確率で+20%、50%の確率で−20%になる株式
を比較すると、預金の1年後の期待値が100.02%なのに対し、株式は100%です。必ずしもリスクの高い商品の方が、期待収益も高いとも限りません。
投資のプロ(ファンドマネージャなど)は、同じリターンをより確実(低リスク)に得るために、同じリスクの時に得られるリターンを大きくするために、様々な分析や研究、工夫を重ねているのです。
投資信託の5大リスク
投資信託のリスク(価格変動)を決めるものは様々ありますが、代表的なものをいくつか紹介しておきましょう。投資信託の「投資信託説明書(交付目論見書)」には必ず書いてありますが、ほとんどの銘柄に共通しているのは「価格変動リスク」「流動性リスク」「信用リスク」「為替リスク」「カントリーリスク」の5つです。これらについては最低限把握しておかなければいけません。
価格変動リスク
投資信託の基準価格は、そこに組み込まれている株式の価格によって決められます。株価は、その企業の業績や市況によって常に価格を上下させています。
当然のことながら、株価の上下によって、投資信託の基準価格も上下します。
流動性リスク
株式市場の状況(需給のバランス)などによって、株式が常に自由に売買できるとは限りません。手放したい銘柄を売却できないこともあれば、取得したい銘柄を購入できないこともあります。
そのため、回避できるはずの損失を被ってしまうことや、利益を獲得できないこともあるかもしれません。
数十万円単位の取引しかしない個人投資家であれば滅多にありませんが、数億〜数十億円単位で取引をしている投資信託の場合、市場に与える影響も大きく、一気に全株売却などをすると、それに伴って株価が低下してしまうことまでも想定されるのです。
取引規模の大きな投資信託ならではのリスクかもしれません(ヘッジファンドなどでも同様のことが考えられます)
信用リスク
信用リスクとは、投資先(株式を保有している)企業の信用状況によって、価格が大きく下落するリスクのことです。業績が著しく悪化した場合や、不祥事が発覚した場合などに、株価が暴落することを「信用リスク」として切り出していることが多いですが、広くは「価格変動リスク」の1つと考えて問題ありません。
為替リスク
為替の影響によって、保有株式の価値が変動することを「為替リスク」としています。
為替リスクには大きく2つの側面があり、為替の影響によって株価が上下することと、株価は上下しなくても株式の「価値」が上下してしまうことが考えられます。
為替の影響が企業の業績に影響を与える場合に、株価は上下することがあります。
一般に、為替が円高に振れると、輸入が中心の企業には有利に働くため、業績が向上し株価も上昇することが考えられます。反対に輸出が中心の企業は、株価が下がってしまうかもしれません。反対に、為替が円安に振れると、輸出企業の株価は上がり、輸入企業の株価は下がると言われています。
また、外国株式に投資するような投資信託の場合、株価(ドル価格)が変わらなくても、価値(日本円での価値)が変わることがあります。例えば、1,000ドルの株が、ずーっと変わらず1,000ドルのままだったとしても、1ドルが100円→90円と円高に振れれば、日本円での価値は10万円→9万円と減ってしまいます。
日本に暮らし、日本円で生活している人にとっては、株価以上に株式価値は重要です。投資信託の基準価格も、この「日本円での価値」を元に算出されるため、為替によって価格が変動する可能性(リスク)があるのです。
カントリーリスク
カントリーリスクとは、その企業がある国の情勢によって、企業の業績や変動し、それに伴い株価が変動するリスクのことです。
特に新興国に投資するような投資信託の場合、国の政治情勢や取り巻く経済環境、周辺国などとの関係によって、その国の全ての企業の業績・株価が大きく変動することがあります。
例えば、経済制裁などは顕著な例で、経済制裁によって株価が暴落する(経済状況が悪化する)こともあれば、反対に、制裁解除によって大きく株価が値上がりすることも考えられます。
カントリーリスクも、信用リスクと同様に、価格変動リスクの1つと考えてよいでしょう。
まとめ - リスクは決して危ないものではない -
このように、リスクには様々なものがありますが、それらは価格を変動させる要因に過ぎず、必ずしも投資の成果に悪影響を与えるものではありません。
確かに、高いリスクのものや、リスクの多い商品は、大きく損をする場合もあるかもしれませんが、高い収益性が期待できるものには、それ相応のリスクも伴います。
重要なのは、
- 同じようなリターンであれば、よりリスクの低い(確実で)、期待収益の高いものを探すこと
- ローリスクローリターンとハイリスクハイリターンのものを適切に組み合わせてポートフォリオを組むこと
です。
例えば、「1年後に50%の確率で-30%になるが、50%の確率で3倍になる商品」は、ブレ幅が大きく、非常にリスクが高いと言える一方で、期待収益が2.7倍と非常に魅力的です。
一方で「1年後に-1%〜+0.5%になる商品」は、ブレ幅が小さく低リスクですがほとんど儲からずほとんど投資魅力がありません。
ちなみに、私であれば、間違いなく高リスクの前者に投資します。
リスクの指す意味をきちんと理解し、正しい投資判断ができるようにしましょう。