外貨預金で資産を運用しようとする人が、ここのところ急激に増えているように思われます。
確かに、日本は今超低金利と呼ばれる時代であり、銀行に預けているだけでは全く資産が増えませんので外貨で保有した場合の高金利が魅力的にうつるのも無理はありません。
しかし、投資の初心者が安易に外貨預金をすると痛い目にあうことがあります。
今日は外貨預金の知られざる危険性について、解説していきたいと思います。
目次
外貨預金はここが魅力的
まずは危険性をお伝えする前に、外貨預金の魅力について改めて書いていきたいと思います。
魅力は何といっても、「高金利」と「為替差益」です。
高金利
日本は今歴史的な低金利政策の真っ只中であり、銀行に預金をしているだけでは0.1%の金利もつきません。
この金利の低さは相当なもので、例えば0.1%の金利だとすると、10億円を預けても利息は100万円。10億円の資産があっても利息で生活することは出来ません。
銀行に預けているお金は全く増えていないと考えても良いような状態にあります。
一方、海外の銀行に預け入れるとどうでしょうか。
米ドルで見てみると、金融機関にもよりますが、約0.5%前後。定期預金であれば2%近い金利を受け取ることもできます。
また、新興国になると、なんと金利が5%以上つく場合もあります。
普通に銀行に預けているだけで、年間5%ずつ資産が増えていくのです。今の日本の現状と照らし合わせてみると、夢のような話ですね。
為替差益
また、為替には「為替差益」といってレートの変動によってもたらされるキャピタルゲインも存在します。
例えば、1ドル = 100円の時に、10,000ドルを保有したとします。必要になる日本円は、100万円です。
そして、その後、1ドル = 110円 になったとしたら、どうでしょう。このタイミングで、保有している10,000ドルを日本円に戻すと、110万円になっているのです。
このように、通貨同士のレートが変動することによって得る利益のことを、「為替差益」と呼びます。
この為替差益は、金利とは別にさらに利益として乗ってくるものなので、うまくいけば相当な金額が儲かるということがイメージ頂けるのではないでしょうか。
為替が危険な理由
しかし、このような魅力的な側面を補って余りあるほどに、為替は危険なのです。
為替が危険である理由をみてみましょう。
為替差損
さきほど、外貨預金の魅力でお伝えした点の逆なのですが、為替は、レートの変動しだいでは「損」を出すこともあるのです。
もちろん、元本は保全されていません。
さきほどの例で、例えば1ドル = 100円の時に、10,000ドルを保有した場合を考えます。必要になる日本円は、100万円です。
この後、もしも1ドル = 80円になったとしたらどうでしょう。このタイミングで日本円に戻すと、80万円にしかなりません。
20万円の損失が出てしまいます。
ちなみに、ドル円の為替というのはまだ安定している方ですが、新興国の為替レートとなると一寸先は闇状態です。
近年「高金利」として話題にあがった通貨にトルコリラというトルコの通貨がありますが、そのチャートが以下。
投資家の間でトルコリラが人気になっていたのは2013年くらいのタイミングなので、そこでトルコリラを保有した人は、円ベースでみた時の価値が1/3程度になってしまっている状態です。
高金利というセールストークに踊らされて、1,000万円以上の資産をトルコリラに投資してしまったという人がいましたが、650万円近い資産を失ってしまっているのです。
これでは金利が何%つこうと、焼け石に水です。
参考:為替差損は、なぜ起こる?
このような為替差損は、なぜ起こるのでしょうか?何となく新興国はリスクが高いとは思っていても、その理由までハッキリ回答できる人は少ないようです。
理由は単純で、こういった新興国というのは、国としての経済が何かしらの産業や企業に大きく依存していることが多いからです。
その代表的なものは、「資源依存」。
原油が採掘できるということで経済が成り立っているような国では、世界的な原油の価格が変動するとたちまち国の経済が弱くなり、それが通貨に跳ね返ってきます。
また、その他の要因として政治のリスクなどもあげられます。
政権が不安定で社会情勢が混乱していると、国は経済活動どころではなくなってしまう場合もあります。
そうなると、多くの国がその国の通貨を信用しなくなる(=売りに出す)ので、通貨自体の価値が下がってしまうのです。
このように、国が抱える特有のリスクを“カントリーリスク”と呼びますが、新興国はカントリーリスクが高い場合が多いのです。
ペイオフ対象外であることによって起こる最悪の事態
また、為替差損の他にも、海外への預け入れでは、銀行自体が破綻するリスクも存在します。
日本の銀行であれば、預け入れている先が万が一破綻したとしても、ある程度の金額までは保全されるという仕組み(ペイオフ制度)が存在しますが、海外の銀行はペイオフ対象外です。
いざ破綻してしまったら、自分の預け入れていた外貨がまるまる失われてしまうという事態になるのです。これは非常に珍しいことですが、最悪のパターンとして覚えておいた方が良いでしょう。
また、海外の銀行の場合、その銀行がどの程度信用度のある銀行なのか中々調べるのも難しいという欠点があります。
何となく高金利ということに踊らされて聞いたこともない銀行に預け入れていたら、いきなり倒産してしまった、なんてことになったら最悪です。充分注意しましょう。
為替というものはゼロサムゲームである
最後に、もう少し根本的な話をしたいと思います。
これは外貨預金が危険であるということ以前に、「為替で資産運用をしよう」という考え自体が良くない理由でもあります。
一体何が為替を危険な投資たらしめているかというと、為替というものがゼロサムゲームであるという事実です。
ゼロサムゲームという言葉を聞いたことがない方もいるかもしれませんが、これは市場に参加している全ての人達の勝ち分と負け分を合計すると、ゼロになる、ということです。
つまり、実力通りに勝ち負けが決まると仮定すると、為替で儲けよう、と考える場合には市場において平均以上の実力を持っていないといけないことになります。
これが、意外と大変です。
なぜかと言うと、為替のトレーディングを行っている人には機関投資家を始めとするプロの投資家が多いからです。
この通貨は買った方が良い、この通貨は売った方が良い、という通貨の価値自体の判断は、相当経験を積まないと出来ません。
ちなみに、「株」はゼロサムゲームではなくプラスサムゲームです。
市場全体が成長しているので、勝ち分と負け分を全て合計するとプラスになっているのです。
これが、資産を運用するなら株が良いと言われる所以であり、また投資ファンドを始めとした運用商品の多くが株へと投資を行っている理由です。
外貨への投資というのは、リスクが高く、そしてそもそも難しいものなのです。
まとめ
今回は外貨預金に潜む危険性について説明してきました。
外貨は危険、ということはこの記事で説明しましたが、ではどのような投資先が良いの?ということについては書ききれていません。
詳しくは以下のおすすめ投資先ランキングにてまとめてありますので、是非のぞいてみて下さい。