今回は、証券会社の営業マンや銀行の営業員のセールストークについて解説していきます。
投資信託というのは、その中身がどうであろうと、説明の仕方次第では何でも売れてしまうものです。
これは、買い手側が目論見書を見ただけでは善し悪しを判断できないということが一番大きな要因です。
この買い手のリテラシーの低さにつけ込んで、特定のセールストークにより粗悪な投資信託を売りつけようとする金融マンがいます。彼らは口八丁で、中身のない投資信託を勧めてくることもあるため注意が必要です。
営業マンがどのようなことを言ったら身構えるべきなのか。代表的な、3つのパターンを紹介します。
目次
営業マンの3大セールストーク
セールストーク①「これから伸びる業界です」
まず1つ目はこちら。「これから伸びる業界に集中的に投資をしていきます」というセールストークです。
これには気をつけなければなりません。
特にここ数年「AI関連銘柄」や「フィンテック関連銘柄」、「オリンピック関連銘柄」と様々なテーマ型投信が乱立しており、それら全てはこの「これから伸びる」というセールストークで販売されています。
たしかにテーマ型投信として採用されるような「テーマ」の多くは、実際に身の回りで話題になっているものでしょう。
ちょっと本やインターネットの情報をかじれば「これからはAIだ」とか「オリンピックでこう変わる」などとうたわれていますので、営業員から話を聞いた時にある意味ピンときてしまうのも仕方のないことだと思います。
しかし、あなたがピンと来ていることと、投資として本当に優れていることは全くの別の話です。なんなら、素人であるあなたがピンと来てしまっているというのは逆に投資としては危険であるとすら言えます。
例えば「これから伸びるAI関連銘柄に投資します!」という投資信託があったとして、しかし本当にその投資信託の投資先の株価は上昇するでしょうか?
株価というのは企業の現在の価値を示すものではなく、人々の企業の価値への期待を表すものです。
もしかしたらAIというものが異常に高く評価されており、AI関連銘柄の株価はすでに異常なまでの割高になっているかもしれません。
このようなことは、過去に何度も起こりました。
「ITバブル」と呼ばれるたのもこれと同じです。「ITはこれから伸びる」という営業マンたちのセールストークにより、IT関連の企業の株価は以上なまでに高騰しました。
しかし、その後のITバブルの崩壊(大暴落)で資産の大半を失ったという人は山ほどいます。
もちろん、ITが全く価値のないものだったと言うつもりはありません。ITは素晴らしい技術ですし、非常に価値の高いものです。
しかし、それを取り扱う企業の株価がその時点で実態より高いのかどうかは全く別の話なのです。
AIはもちろん色々な世界を変えるでしょう。オリンピックで経済は回復するかもしれません。
ただ、そのAI企業の株価が今以上に今後上がるかはわかりません。オリンピックでどの企業の業績が伸びるのかもわかりません。
「これから伸びる業界です」という文言は、流行りにかこつけて客を焚き付ける、代表的なセールストークです。この言葉が営業マンから出てきたら、充分に注意した方が良いでしょう。
セールストーク②「最近、非常に高い運用成績が出ています」
「ここのところ非常に高い運用成績が出ているので買いましょう」というセールストークも非常に危険です。
多くの投資"初心者"が、投資先を判断する際、それまでの過去の成績を気にするというのは金融の世界では一般的に知れ渡った常識です。
これまで高い成績が出ているから、これからも高い成績が出るだろうという考えのもと、投資先を検討します。
そこで、証券会社や銀行の営業マンは、直近数年の成績が良いファンドを積極的に提示してきます。
しかし、過去の成績と、これからの成績というのは実際のところ全くの無関係です。
過去がどうかということに関係なく、その株価は今日時点からの投資家達の人気投票によって値がつくのです。
過去に(既に)株価が上がっている投資ほど未来も上がりやすかったり、逆に過去に下がっている投資は未来も下がりやすいなどということは全くありません。
「過去」は、本質的には大した判断材料にならないのです。
むしろ、プロの投資家達は、株価が下がっている銘柄にこそ注目します。株価が急激に下がり、本来その投資先の持つ価値を割り込んでいる場合には、投資の大きなチャンスになるためです。
逆に言えば、急激に株価が上がっている銘柄は、その本質的な価値よりも高く評価されてしまっている、つまり割高になっている可能性が高いと言えます。
このような本質を無視し、売れるからという理由だけで基準価額の上昇している商品を営業マンが売り続ける結果、多くの投資信託の「基準価額」と「資産総額」は歪な推移を辿ることになります。
以下のグラフをご覧下さい。
これは、フューチャー・バイオッテックという典型的なテーマ型ファンドなのですが、上図のうち、上部の折れ線グラフが基準価額の推移、下部の青い面で記されたものが運用資産総額です。
これをよくみると、2018年6月から2018年9月の間に、運用資産総額が一気に増えていることが分かります。
これは、その間に基準価額が上昇していたことにかこつけて、営業マンが「上がっていますよ!」というセールストークをした結果です。
つまり、多くの人がこの投資信託を購入したのは、下の赤色で示したタイミングということになるのです。
しかし、その後の基準価額の推移はどうでしょうか?上図の線を見てもらえば分かる通り、ダダ下がりです。
バイオテック系の銘柄というのは世の中的に「良い、良い」と言われ過ぎているだけあって、あるべき適正価格よりも高く株価の値がついてしまっていたのです。
一見この投資信託は、設定来でみると紆余曲折を経て少し上がっているように見えますが、多くの投資家が投資をしタイミングを考えると、トータルで投資家にマイナスの運用を与えていることは明らかです。
直近の成績が良いからという理由で投資信託を買わないよう、充分注意して下さい。
セールストーク③「分散投資ができます」
「分散投資ができます」というアピールで営業をかけてくるセールスマンがよくいますが、これにも騙されてはいけません。
もちろん、大切な資産ですから、それを一つの銘柄に集中的に投資するというのはリスクが高いでしょう。
ですが、「分散投資=良い投資」というのは間違った考え方です。
とにかくリスクを低減させて年間1~2%程度の最低限の利回りさえ得られれば十分と考えている方であれば、やみくもに世界中の株や債券に分散的に投資している商品を選ぶのもアリかもしれません。
しかし、この記事を読んでいる皆さんは、そうではないでしょう。年間で5%、10%と利回りを出していこうと考えているはずです。
その際に、過度な分散投資というのはタブーです。当然ながら、資産を分散させればさせるほど、リターンも小さくなってしまいます。
簡単な話、資産を考え無しに分散させるのは、意味もなく収益性を放棄しているのと変わらないのです。
数千万円程度の資産であれば、信頼できるファンド(ヘッジファンド等)に6割、外貨建ての商品で3割、現金1割程度にもっておけば充分です。
メインで預け入れるファンドもやみくもに分散投資をするようなものではなく、せいぜい30商品以内の投資先にしぼっているものを選択するべきです。
投資の王様と呼ばれているウォーレン・バフェットも、口を酸っぱくしてやみくもな分散投資を避けるよう助言しています。彼の有名な名言を紹介しておきましょう。
分散投資は無知に対するヘッジだ。
自分で何をやっているかわかっているものにとって、分散投資はほとんど意味がない。
つまり、分散投資とは、自分の判断に自信がないことの現れだというのです。
根拠や目的のない闇雲な分散投資をして、それっぽい運用をしているような気にならないよう注意してください。
まとめ
投資信託の営業は、投資家が儲かる銘柄ではなく、自分たち(証券会社)が儲かる投信を勧めてきます。そのため、口八丁手八丁で、あの手この手を駆使したセールストークを繰り広げてきます。
その中には、耳障りのいいだけの粗悪な商品も含まれているでしょう。
大事なのは、本当に価値のある(利益が期待できる)投資先を見出す目をきちんと養うことです。決して簡単なことではありませんが、資産運用で成果を得るためには重要なことです。
少しずつでも、幅広い知識を身に付けられるよう勉強していきましょう。