世界的なベストセラーになった、フランスの経済学者トマ・ピケティ教授の『21世紀の資本論』をご存知でしょうか。彼は、その本の中で「r > g」という理論を展開しています。

 

彼はこのシンプルな数式により経済学に激震をもたらしました。

「r > g」の「r」とは投資のリターン(return)、「g」とは世界経済の成長率(growth)を表しています。

つまりこの式は「投資のリターンが、世界経済の成長率よりも大きい」ということを示しているのです。

直近25年間のデータを振り返ると、世界経済は年3.7%のペースで成長していますが、全世界の資産へ徹底的に分散投資した場合の投資リターンは年5.9%と、rがgを大きく上回っています。

トマピケティの言う通り、「r > g」が成り立っていたことが、分かります。

 

「r > g」が成り立つ理由とは

このように投資のリターンが世界経済の成長率を超える理由は、一体何なのでしょうか?

 

そこには大きく2つの理由があります。

1つ目の理由は、「リスクプレミアム」と呼ばれるものです。

深掘りするととても難しい話なのですが、経済学の世界では「リスクを取る」ということそのものに対して、一定の見返り(=プレミアム)が発生するということが分かっています。

このリスクプレミアムが存在しないと、誰もリスクを取ろうと思わないのです。

 

このリスクプレミアムが、(非常に小さいですが)プラスに働きます。極端に言えば、「何かしらのリスクをとって投資するとした時点で、一定の利益が得られる」とすら言えるのです。

 

そして2つ目の理由は、「税金」です。

日本を始めとした先進国では、通常の経済活動で得られる利益に、所得税や法人税として30~60%の税金が課せられます。一方で、投資のリターンに対しては20%前後しか税金が課されません。

 

この差が、投資の相対的なリターンを高めます。

先進国は投資活動を税制面で優遇することによって、資金を流入を促し、イノベーションを起こして、経済活動を促進させ雇用を増やすことを狙っています。

つまり、投資活動が経済活動よりも税制面で優遇されているのは、偶然でもなく必然なのです。

 

リスクプレミアムと税制面での優遇という、2つの理由を背景に、retun(投資リターン)はgrowth(経済成長)を上回っています。

 

「r > g」によって何が起こるのか

この「r > g」という大前提があるといったい何が起こるのでしょうか。なぜ、経済界に激震が走ったのでしょう。

retun(投資リターン)がgrowth(経済成長)を上回っていると、結果として経済格差が広がっていきます。

富裕層が投資により「r」のペースで資産を増やせるのに対して、そうでない多くの層は自分の資産を「g」のペースでしか増やせません。

つまり、資産家の方が、労働者よりもさらに多くの収入を得られるということです。

これが、年々積み重なり、大きな差となります。トマピケティは、「人類社会の本質は格差社会である」とまで断言したのです。

 

この「r > g」という法則には、例外もあります。

過去20世紀においてそれが起こったのは、世界大戦の時です。

 

世界大戦が勃発し、各国が多額の資金を必要とすると、富裕層への課税を大幅に強化します。

これにより、格差は一気に狭まります。

日本においても、戦争にともなうインフレや預金封鎖で、富裕層は資産を一気に失いました。また農地改革により地主と小作人の格差もなくなり、戦後、一億層中流という社会が一時的に実現しました。

 

とは言え、平和な世界においては常に「r > g」は成立し、格差はますます拡大していきます。

こうして私たちが暮らしている今も、過去に例をみない程の格差社会となっており、その格差は拡大しているのです。

 

格差社会を是正するためにどうすれば良いのか

トマ・ピケティ教授は、この加速していく格差社会を是正する為には、「富裕層からの税金の徴収を強化するしかない」と主張しました。

「r」のペースでお金を増やしていく富裕層から税金をより大きくとり、それによって社会保障を充実させるのが、この「r > g」という原理を乗り越えていく施策だと彼は説いたのです。

 

これを日本の現状に当てはめてみましょう。

日本は現在、史上類を見ないほどの格差社会となっています。日本でもピケティの言う通り、富裕層からの徴税を強化すべきなのでしょうか。

 

結論から言うと、これを日本で実現するのは非常に難しいでしょう。

現在、日本の個人金融資産合計1,800兆円のうち、3分の2に当たる1,200兆円は60歳以上の方々が保有しています。つまり、日本において富裕層と呼ばれる人はほとんどが高齢者なのです。

ピケティ教授の主張するアイデアをそのまま日本に当てはめたとすると、「60歳以上の高齢者への税金を高くし、待機児童問題の解消など働く世代の社会保障を強化する」ということになります。

 

しかし、日本という国は、行き過ぎた少子高齢化により、高齢者にデメリットのある政策が受け入れられなくなってしまっています。

少子高齢化が進めば進むほど、働く世代の声は反映されづらくなります。日本で、富裕層からの徴税を強化するのは、現実的ではありません。

 

日本の「働く世代」はどうするべきか

では、日本の富裕層ではない「働く世代」は、どうすれば良いのでしょう。

ここまで読んできた聡明な皆さまならもう答えが分かっていると思います。そう、積極的に投資に資金を費やすことで、「r」のペースで資産を増やしていくしかありません。

 

数十万円、数百万円、数千万円。こういった、現預金で保有するだけでなく、運用し増やしていく。それにより、世界経済の成長ペース以上のペースで資産を増やしていくことが求められています。

これこそが、今の日本の働く世代がやるべきことなのです。

 

トマピケティ教授の提唱した「r > g」理論から考えても、今の少子高齢化や格差の進んだ日本社会を考えてみても、資産運用を始めることは、働く若い世代の急務だと言えるでしょう。

ぜひ本サイトでいろいろと勉強をして、「r」のペースで資産を増やしていけるよう頑張ってください。

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