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トータスパートナーズとは
トータスパートナーズ(Tortoise Partners)というファンドがあります。最近、様々な方面で名前が挙がるようになり、興味を持っている人も多いのではないでしょうか。当サイトでも、いくつか解説の記事を載せています。
ですが、私募であり、また「PEファンド」という珍しい運用手法でもあるトータスパートナーズは、情報も少なくどんなファンドなのか掴みにくいところもあります。
ここでは、基本的なところから順を追って紐解いていきます。
トータスパートナーズ(Tortoise Partners)の基本情報
- 会社名:トータスパートナーズ合同会社(TORTOISE PARTNERS LLC)
- 公式HP:https://tortoisepartners.jp/
- 分類:ヘッジファンド、PEファンド(非上場企業に投資)
- 募集形態:私募
- 事業内容:
(1)金融商品取引法に基づく有価証券及びデリバティブ取引
(2)各種事業への投資
(3)有価証券の自己募集
(4)経営コンサルティング業務
(5)前各号に附帯する一切の業務
トータスパートナーズ徹底解剖
トータスの投資手法 - PEファンド -
トータスファンドはいわゆる「ヘッジファンド」に分類されます。
ファンドとは、投資信託などと同様に、運用目的で多くの投資家から資金を募り、集まった資金をひとまとめにして運用するもののことです。そして、運用の成果に応じて、手数料を引いてリターンを出資者(投資家)に還元します。
投資信託は証券会社を通じて誰でも簡単に、少額から投資することができます。手数料も比較的割安で、月々の積立で運用を始められるものもあり"お手軽"です。
お手軽な分、運用の内容も一般的で、高いリターンが期待できるものでもありません。そして、数多くある投資信託の中から、少しでも優良なものを探して投資しなくてはなりません。
一方のヘッジファンドは、ファンドと投資家が契約を結ぶもののため、証券会社を介さず直接コンタクトを取る必要があります。また、原則「私募」であり、公に広告が出ているものでもないため投資家の数も制限されます。
少数精鋭の専門的な運用サービスであるため、手数料も比較的割高にはなりますが、ファンドごとに独自の手法を用いた、高度な投資手法で高いリターンが期待できます。
トータスパートナーズは、その中でも特に、非上場(未公開)の企業に投資する「PEファンド(Private Equity, 未公開株のこと)」に分類されます。
一般的な投資家が手を出すのが、東証一部やマザーズのような証券市場に上場している会社の株式による投資・運用ですが、それとは別に上場していない企業の株主(創業者や社長など)と直接取引・契約をして投資するのがPEファンドです。
トータスパートナーズも、PEファンドとして未公開株の取得を主な投資戦略として運用しています。
一般的に、中小の非上場企業は、オーナーやその一族が、株式の大部分を保有していることが多いため、譲渡の場合には、ほとんどが「100%の譲渡」、つまりは会社の売却になります。
つまり、トータスパートナーズのようなPEファンドは、中小企業をまるごと取得し、経営改善して利益を追求するため、実際にはM&Aを実施しているのです。
優良な(伸び代がある、改善の余地がある、経営基盤がしっかりしている、など)企業でありながら、高齢化や資金不足などを理由に会社の維持や発展をする余裕がない経営者から会社を買収し、価値を向上させることで利益を追求するのがPEファンドです。
トータスパートナーズのようなPEファンドの特徴として、一般的なヘッジファンド以上に高い利回りを記録しているという点が挙げられます。
一般的にヘッジファンドが高いパフォーマンスを残していることはよく知られていますが、その中でも特にPEファンドは圧倒的に高いリターンを叩き出しているのが以下のグラフからも見て取れます。
出展:日銀レビュー 最近のプライベート・エクイティ・ファンドの増勢について(2018年4月)
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2018/data/rev18j01.pdf
株式、ヘッジファンド、PEファンドの利回りがそれぞれ、10年で1.5倍、10年で2倍、10年で3倍なので、年利に換算すると、4%、7%、11%です。この利回りの差で、20年、30年と長期の運用をすると、その差はますます大きくなります。
株式 | ヘッジファンド | PEファンド | |
10年リターン | 1.5倍 | 2倍 | 3倍 |
年利換算 | 4% | 7% | 11% |
20年リターン ※想定 |
2.2倍 | 4倍 | 9倍 |
PEファンドがこのように高い利回りを記録する背景としては、投資対象(候補)となる企業の多さが考えられます。
日本に上場企業は3,500社以上ありますが、未上場の企業はその700倍以上にもなる250万社以上存在します。もちろん、中には上場にも至らない零細企業や、創業間もない小さな企業もありますが、中には優れた企業も数多くあります。
多くの方が「上場企業=すごい会社、いい会社」と勘違いしていますが、会社が上場するということは、株式を一般公開し、市場から多額の資金調達をするということであり、何もメリットばかりではありません。
非上場の企業の中には、歴史や伝統を重んじ、株主(オーナー)として会社をしっかりと経営していく戦略を遵守し、堅実で安定した経営をしている企業も数多く存在します。そもそも、資金調達の必要がなければ、上場する必要もないのです。
結果、投資対象の候補となる企業の数が数十倍にも拡がるPEファンドは、より優良な投資先に触れる可能性も高くなり、結果として高いリターンを記録できています。
トータスパートナーズもPEファンドである以上、高い利回りを期待できるかもしれません。
トータスの投資哲学 - バリュー投資と社会的意義、ESG投資 -
トータスパートナーズでは、「バリュー投資」を基本としています。
バリュー投資とは、会社の持つ本質的な「バリュー(Value, 価値)」に着目し、その会社の資産や事業利益などから、価値を客観的に評価した上で、割安なものに投資する非常に基本的な投資の考え方の一つです。
例えば、現金や不動産などの資産が1億円ある会社を5,000万円で買うことができれば、極論、翌日に全てを売り払ってしまっても、その投資は成功(儲かる)したことになります。毎年、3,000万円の利益が見込める会社を1億円で買えば、資産を差し引いても4年で投資の元本は回収できます。
もちろん、ここまで極端な例はなかなかありませんが、会社の持っている資産や、事業の状況を詳しく分析・評価し、適正かつ、なるべく安い価格で買い付けるのがバリュー投資です。
より高レベルなバリュー投資を成功させるためには、企業を多角的かつ詳細に評価するための調査力や分析力が必要になります。また、事業の評価についても、目先の(直近数年の)利益の実績などだけに限らず、業界の成長度や、企業の習熟度など、様々な要素を考慮して検討する必要があります。
優れたバリュー投資によってリターンを得るには、高い専門性と経験が求められます。
また、トータスパートナーズはバリュー投資の中でも特に、後継者問題に悩む中小企業を中心に投資しているようです。
先述の通り、日本には250万社以上の非上場の株式会社がありますが、なんとその半数にも及ぶ120万社以上が、後継者の不足に悩んでいると言います。しかも、それらの会社の多くは、経営に何の問題もない黒字の優良企業なのです。これには、日本の高齢化や都市部への人口の集中などが背景として考えられます。
日本の産業を下支えしている数多くの中小企業が廃業に追いやられてしまうことは、日本経済の基盤を失いかねない懸念事項であり、これらの企業を救済することは、社会的にも非常に重要です。
また、トータスパートナーズでは「ESG投資」を掲げており、単純に利益だけを追求した企業でなく、その会社の事業の社会的な意義をも重視します。
大前提として、経済的に魅力的(高いバリューがある)企業であることはもちろんですが、環境への配慮や、地域社会への貢献、社内の健全性など、数字だけに表れないその企業の持つ"価値"をきちんと評価し、投資先としての選定基準に加えるのが「ESG投資」です。
このように、バリュー投資を基礎としつつも、後継者に悩む中小企業の救済や、ESGを重視して企業を評価・選定し、経済的な価値だけでなく、社会的な意義も追求するのがトータスパートナーズの運用ポリシーのようです。
ESG投資とは
ESG投資とは、
- Environment:環境
- Social:社会
- Governance:企業統治
の頭文字から生まれた、投資哲学の一つです。
企業の経済的(金銭的)な価値だけに止まらず、数字は表れにくい定性的な側面も考慮して投資する手法のことをさします。
これはヨーロッパやアメリカで2010年代に入ってから注目された投資の新しい観点の一つですが、「ESG」を重視した企業の評価は、結果として経済的にも優位なリターンを得られるという調査結果も出ています。
直接は数字に表れないような配慮や秩序も、回り回ってその企業の利益となって還元されるという非常に興味深いデータです。
出展:ESG投資とは? | EV革命 | 大和証券
https://www.daiwa.jp/products/fund/201802_ev/esg.html
ESG投資の市場規模は年々拡大しており、2016年には2,500兆円を超え、世界中の投資の4分の1は既にESGが考慮されているものとなっています。
日本ではまだまだこれからですが、このトレンドをいち早く掴んでいるトータスパートナーズの着眼点は素晴らしいものがあります。
トータスで運用するメリット・デメリット
ここまで、トータスパートナーズの投資の手法やポイントを解説してきましたが、ここから先はより投資家目線での考察に切り替えていきましょう。
トータスパートナーズに出資(投資)し資産運用することのメリットは、まず第一に高いリターンが期待できることでしょう。
先述の通り、PEファンドは、一般の(上場株式に投資する)ヘッジファンド以上に高い利回りを記録しており、トータスパートナーズも例に漏れず高利回りが期待できます。
また、ESG投資も、同様に高リターンを期待できる評価ポイントとして加えることができるでしょう。
また、投資手法についても「未公開株(非上場企業)への投資」という、一般の投資家がなかなか実践することのできない選択肢を可能にするというメリット考えられます。
未公開株を取得するためには、株主である社長や創業者などのオーナーと直接やりとりをすることが求められるため、ほとんどの人にとっては接点さえ持つことができません。また、1つの案件あたり数千万円〜数億円単位の取引となるため、資金力的にも実践できる人はほとんどいないでしょう。
「ファンド」という立場と資金力を活かして未公開株に投資できるのは、なかなか得られないメリットです。
一方で、「ヘッジファンド」であり「PEファンド」でもあるトータスパートナーズの運用にはそれなりの時間を要します。
上場株式のようにいきなり株を買ったり売ったりはできませんし、ましてや日々株価が上下するものでもありません。案件が生まれてから契約(株式の取得、M&Aの成立)までには、数ヶ月を要することもザラですし、株式の取得後も、利益が出るまでに数年かかることもあります。
トータスパートナーズでの運用を考えるのであれば、10年、20年といった長期での資産運用計画を立てる必要があります。
手数料、出資金、実績は?
トータスパートナーズの手数料や最低出資金、パフォーマンス等についても見ておきましょう。
これらの数字は多くの投資家が気にするポイントで、
「手数料は何%か?」
「いくらから出資できるのか?」
「どれくらいのリターンが期待できるのか」
といった疑問を持つ人は少なくありません。
ですが、「私募」であるトータスパートナーズは、出資条件等を公開していないため、これらの数字を知るには出資の検討を前提として、問い合わせて詳細な説明を受ける必要があるでしょう。
ただし、一般的な投資信託と比較して手数料が割高なことや、最低数百万円〜1,000万円程度の資金が必要になることは想像に難くありません。
※ ちなみに、個人的には、手数料などの数字はあまり意味がないものだと思っています。重要なのは投資の"質"であり、表面的な数字や過去の実績ではありません。単に"わかりやすい"、"比べやすい"という理由でこれらの数字を重視するのは本質的でしょうか。
考察 - 投資する価値はあるか -
ここまでのトータスパートナーズ(Tortoise Partners)の内容をまとめてみましょう。
- ヘッジファンドであり、特に「PEファンド」でもある
- 投資対象は、上場企業に絞った場合の700倍以上にもなり、高い利回りが期待
- バリュー投資を軸にしつつ、ESGも重視する
- 後継者に悩む中小企業の救済といった、社会的な意義もある
- 「PEファンド」「ESG投資」というキーワードから、高い利回りも期待できる
- 運用には時間がかかる。長期での運用が求められる。
- 最低出資金や手数料等は不明(数百万円〜1,000万円と予想) ※要問い合わせ
これらの情報から総合的に評価して、トータスパートナーズには十分投資する価値があると判断できます。
ポイントは、社会的な意義やESGを重視し、単に経済的(金銭的)な投資に終わらない価値がある点でしょう。また、結果として、それが投資のリターンとして出資者に還元されることも期待できます。
運用実績や手数料については不明な点も多いですが、詳しいことは問い合わせて直接確認することが懸命でしょう。
わかりやすい(安心しやすい)ポイントに流されて一般的な投資信託に手を出す人は後を絶ちませんが、手数料が安くとも運用で成果が得られなければなんの意味もありませんし、過去に高いリターンを出したファンドが、同じように続くとも限りません。
どんなに優れたファンドでも、初めの実績はゼロです。そして、その時に正しい意思決定ができず、あとで「あのとき投資しておけば...」と思ったことがある人はたくさんいるはずです。
投資の本質をよく考え、本当に価値があるものを見極めることが重要です。