今回は、証券会社の実態に触れていきたいと思います。

私自身、某証券会社に勤めていた経験もあり、また周りにも他社を含めてたくさんの友人がいるので、そこでわかった「裏話」とも呼べる、証券会社の内部事情を解説していきます。

そして、そこから浮かび上がる「投資信託」の問題点についても考えていきましょう。

 

証券会社のイメージと実態

証券会社のイメージ

皆さんは「証券会社勤務」と聞いてどのようなイメージを抱くでしょうか?

一般に、エリートと感じる方が多いのではないかと思います。仮に、息子さんが野村証券や大和証券に内定したとなれば、諸手を挙げて喜ぶ方もたくさんいらっしゃいます。

 

たしかに、有名大学出身のエリートの方もたくさん在籍していますが、一方で、規模が大きく従業員数も多い大手の証券会社では、実に様々な人が勤務しています。早慶や国立大学だけでなく、高卒や地方の4流大学出身者まで様々です。

 

このように多種多様な人材が在籍している証券会社は、いわゆる「高給」であることも有名で、20代で1,000万円以上の年収がある人も珍しくはありません。

もちろん仕事の成果に応じて、一部の人がたどり着く境地ではありますが、「営業マンとしてバリバリ活躍し、高い収入を得たい!」とキラキラした思いを胸に内定を手にする学生が大半をしめているようです。

 

高い離職率とその理由

このように、多くの学生が意欲的に就職する証券会社です(実際に、毎年の就活ランキングでも上位に名を連ねています)が、実はその離職率が約3年で35%と非常に高い水準にあり、従業員が定着していないという現実があります。なんと3年もしないうちに、社員の3分の1以上が辞めてしまうのです。

 

バリバリ働いて、高給取りにもなれるはずなのに、なぜ多くの人が入社から数年で辞めてしまうのでしょうか?理由は、非常に過酷なノルマ制度にあります。

 

そもそも証券会社の営業とは、個人や法人に対して、「投資信託」を中心とした金融商品を売る仕事です。

新人の多くはこのうち、個人・法人向けの「新規開拓」を担当します。つまり、初めましての状態からスタートし、相手の資産状況を聞いた上で最終的に自社で取り扱う商品を買ってもらうことがゴールとなります。

 

新規開拓の方法としては、テレアポや訪問営業といった、昔ながらのドブ板営業が中心となっており、声かけから成約に至るまでの割合は高くて1%です。つまり、腕の良い営業マンでも100件に99件は断られるという過酷なものなのです。

このような営業において、証券会社では1年目から厳しい「ノルマ」を課します。つまり「月にいくら以上、何件以上の売上げを出しなさい」という達成目標値を設定するのです。

証券会社ではこのノルマに耐えきれずに、数年で離職してしまう人が後を立ちません。

 

なぜ証券会社の営業はツライのか

一口に「営業」と言っても、様々な種類があります。

そして、その精神的なツラさは、「対面しているお客さんから人間としてどのように扱われるか」によって大きく変わります。

 

例えば、お客さんの方から求めてくるような商品を売る営業であれば、営業マンは意外と気楽なものです。「そんなに欲しいのであれば売りましょう」というスタンスで物を売るのは何一つストレスではありません。

 

一方で、相手が求めていないのにこちらから押し売りしないといけないケースでは重度に精神的な負荷がかかります。

証券会社の場合、「投資信託」のような金融商品を買いたいというお客さんのニーズからスタートするのではなく証券会社の「運用商品を買って欲しい」という勝手なニーズからスタートします。

そのため、証券マンは基本的には相手から煙たがられてしまうのです。これが、証券会社の営業が精神的にキツイ要因一つです。

 

また、営業活動の精神状態を決めるもう1つの重要なポイントに「売っている本人がその商品をどれだけ心の底から愛しているか」というものがあります。

例えば、あなたの売るものが自分の身近な人が作ったもので、それが本当に便利で人の役に立つようなものであると確信していれば、例えお客さんに煙たがられたとしても「これは本当にあの人の為になるんだ!話せば分かる」と気持ちを強く持てることでしょう。

 

しかし、本当に相手のためになるか確信の持てないものだったらどうでしょうか。煙たがられる上に、自分を偽って営業トークをしなければいけなくなります。

投資信託をはじめとした多くの金融商品の場合、証券会社の営業マンがその存在自体に疑いを持っている場合も少なくありません。このことは、証券マンの多くが、自分の営業する(お客さんに勧める)金融商品で自身の資産を運用していないことからも明らかです。

商品に対する愛着・自信という面でも、証券会社の営業は精神的に苦痛を感じてしまうのです。

 

なぜ証券会社の営業は「投資信託」に自信が持てないのか

新人証券マンのリテラシーの低さ

証券会社の営業員は、入社してから数カ月の研修を経て、すぐに営業活動へと旅立ちます。

よって、彼らは金融に関して素人も同然で、投資信託が、色んな人からお金を集めて何かに投資する商品であるということ意外なにも分からずに売っています。それでも必死にその商品を勧めてくるのは、会社の方針や上司の指示に従っているためです。

自分自身のお金を投信で運用している人や、自分で投資をした経験があると人も非常に少ないのです。

 

これでは、自社の金融商品(投信)を自信を持って勧められないのも仕方ありません。金融のプロのような顔をしていますが、彼らの金融リテラシーは低いのです。

 

営業をどれだけ経験しても金融の知識は身につかない

右も左も分からないまま、がむしゃらに新規開拓営業を経験すると、次に既存顧客を担当するようになります。長く関係のあるお客さんを引き継ぎ、面倒をみる役割となるのです。

この頃には、3年から5年のキャリアを積んでおり、一端の金融マンとなっているように見えます。

 

しかし、ここまでに積んでいるキャリアはあくまでも「営業」のものです。実際に運用を経験しているわけではありません(営業とトレーダーではキャリアパスが異なります)。

商品を理解することと、それを誰かに売ることとは、全く別のスキルが求められます。

トレーディングの経験を積まずにお客さん対応をしているだけでは、深い金融の知識やトレーディングの実力がつくということは絶対にありません。

 

長く証券会社で営業の経験を積んだところで、効率的に楽に売れる方法を理解し、人を説得するテックニックは身に付けられても、その商品自体の善し悪しがわかるようにはなりません。つまり、いつまで経っても金融リテラシーは向上しないのです。

 

投資信託という商品の危険性

ここに、投資信託という金融商品の危険性が浮き彫りになっています。

つまり、投資についてよく分かっていない人が、投資について良くわかっていない人に、投資商品を売っているというのが証券営業の実態なのです。

 

結果的に、リテラシーの低い営業マンでも説明がしやすく、そしてリテラシー低いお客さんでも理解がしやすい「テーマ型」や、手数料の安い銘柄が多く買われていきます。

 

そうなってくると、本当に価値がある(資産が増える、儲かる)ものではなく、「売りやすく、わかりやすい、耳障りの良い」キャッチーな投資信託が乱立することになります。

 

当然のことながら、「アホでも理解できる投資手法」と、「長期に渡って良い成績を収める投資手法」は全く異なります。

むしろ、この2つは正反対とすら言えるでしょう。誰でも魅力が理解できるような投資先というのはリテラシーの低い人の投資が重なり、割高になりやすく利益を得にくい傾向があります。

 

一方、長期に渡って良い成績を収める投資手法とは、例えば「投資の神」とも呼ばれるウォーレン・バフェットが40年も前から提唱している
「買収後即売却しても理論的には利益が出るようなネット株を中心とした本格的なバリュー投資に加えて、アクティビストとしての動きを柔軟に発揮し、場合によって株式市場が加熱し過ぎている場合には現物等含めたその他の資産へとリバランスさせる投資」
というようなものです。

 

専門的で難しい内容ですが、実際にバフェットはこの方法で巨万の富を築いています。

ですが、この投資手法を掲げている投資信託は売れないでしょう。難しすぎて、買う方も売る方もきちんと理解できないためです。

 

まとめ

このようにして、市場に流通する投資信託の質は下がり、ロクでもないものを口八丁手八丁で売りつける証券マンがのさばることになってしまっているのが、今の日本の金融市場です。

あくまでも、彼らは「営業のプロ」であり「運用のプロ」とは呼べません。証券会社の営業マンがおすすめしてくるような投資信託を信じるのは非常に危険だということがわかります。また、間違っても彼らに資産運用の相談をしようなどとは考えない方が賢明です。

 

投資信託は確かにお手軽で「ポピュラー」ですが、決して優れているわけではありません。

大事なのは、流行っているものに投資することではなく、きちんと価値のある質の高い運用をしてくれるサービスを活用することです。

あまり馴染みはないかもしれませんが、ヘッジファンドのように、優れたトレーダーが率いる、価値ある資産運用の方法もあります。安易に流されることなく、様々な運用の手段を検討してみてください。

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