最近「ヘッジファンド」での運用に興味を持つ人が増えてきたように思います。
元々は、億単位の資産を運用するような富裕層向けのものでしたが、近年は1,000万円単位で出資できるような小型のファンドも増えてきており、少しずつ身近な存在になってきていると言って良いでしょう。
(それでもある程度の資金力は求められますが)、実際に、ファンドに出資し、ファンドで運用しているという人も増えてきました。
「ヘッジファンド」が日本でも少しずつ市民権を得ていることは間違いありませんが、まだまだ「ヘッジファンド=ハイリスク、危ない」というイメージも残っているようです。
ヘッジファンドへの投資を、なにか大きな賭けに出ることのように捉えてしまっている方もいらっしゃいます。
しかし、「ヘッジファンド」は、本来どちらかと言うと「守りの運用」をするために生まれた存在です。
今回は、ヘッジファンドがどのように生み出されたのかを紐解き、現代ではハイリスクというイメージを持ってしまった原因などについても考えてみたいと思います。
目次
ヘッジファンド生みの親 - アルフレッド・ジョーンズ -
ヘッジファンドが生まれたのは1949年の米国であるとされています。
日本がまだ戦後の混乱期にある中で、米国の株式市場ではヘッジファンドが産声をあげていたと考えると感慨深いものがあります。
ヘッジファンドを生み出したのは、アルフレッド・ジョーンズで、彼は投資家であると共に、著名な学者でもありました。アルフレッド・ジョーンズこそがヘッジファンドの生みの親と言ってよいでしょう。
それまでも、今日のヘッジファンドに似たような投資ファンドはいくつか存在していましたが、ジョーンズのファンドが「ヘッジファンド」という名称をもって、それまでのファンドと区別されるようになったのは、その手法が余りにも革新的だったためです。
アルフレッド・ジョーンズの発案
アルフレッド・ジョーンズが興したファンドに持ち込んだ手法とは、今のヘッジファンドのベースとなっており、これらのポイントを押さえてはじめて「ヘッジファンド」を名乗れるとも言えます。
具体的には
- 成果報酬体系
- セイムボート
- 多様なポジショニング
の3つです。順に見ていきましょう。
1)成果報酬体系
それまでのファンドと違い、アルフレッド・ジョーンズが興したファンドは、運用で成果を得た(儲かった)ときに、「儲けのXX%の報酬」を得るという契約形態を取り入れました。
このファンドの成果(パフォーマンス)に依存する報酬体系を採用したのが、ヘッジファンドの始まりになります
これは、ファンドとして絶対に勝つ(儲かる)運用をするという強い決意の現れとも見て取れます。
2)セイムボート(ファンドマネージャー自身の出資)
アルフレッド・ジョーンズは、自分自身の資金を自分が運営するヘッジファンドに預け入れました。
つまり「客が損をする時は自分自身も損をする」ということを暗に伝えたのです。
これは「セイムボート(same boat)出資」といって、投資家と受託者の利害が一致する(同じ船に乗る)という、非常に新しいスタンスでした。
ちなみにですが、冷静に考えてみるとこれは非常に当然のことです。
「リターンが得られる=運用で成果を得る自身がある」として投資家から資金を募集するしているものに、自分自身が資金を投じていないなど矛盾しています。
もちろん、自己資金には限度があるため、周りからも資金を調達するのでしょうが、それを周りに勧めている(勧誘している)人たちが、そこに投資していないなどあり得るのでしょうか。
「○○がおすすめだよ、私は持っていないけど」と言われても信用できませんよね。
もし仮に、気になる投資先があった場合、それを販売しているスタッフや投資家自身に、自己資金を投じているかを確認してみてください。
彼ら自身が、資金を投じていない場合、本当の意味でそこに価値を見出していない可能性があります。
3)多様なポジショニング
アルフレッド・ジョーンズのファンドでは、割安な株式をロングする(買う・保有する)だけでなく、割高な株式のショートポジション(空売り)や、理論的に同一価値のものの価格差が出ている時に同時に売り買いを仕掛けることで確実に利鞘を稼ぐアービトラージ戦略といった手法も採用されました。
このように、様々な戦略を駆使し、多様なポジショニング(売買戦略)を組み合わせることによって、どんな市況であっても利益を追求したのです。
これは、従来のファンドのように「株式市場(経済)が上向きのときしか利益が得られない」という制約を回避し、ある意味では"市況次第"であった、それまでの投資ファンドのある種「博打的戦略」とは、一線を画すものでした。
アルフレッド・ジョーンズの考え
このような新しい手数料体系やポジショニング戦略を導入したアルフレッドジョーンズは、一体、何を考えていたのでしょうか。
彼のベースとなる金融感は、どこにあるのでしょう。
それは「株式市場がいつまでも好調とは限らない」という観点に由来しています。
株式市場が好調とは限らないからこそ、独自の戦略で他のマーケット参加者(他の投資ファンド、投資家)を出し抜いていかないといけないと彼は考えたのです。
そして、ファンド運営側への見返りは「どれだけ成果を出した、勝った(儲かった)のか」という実力に基づいて支払われるべきである。さらには、その実力や自信を示すためには、「自分自身が資金を投じ、投資家と同じ目線でいることが大切である」と考えたのです。
ヘッジファンドの語源となっている"ヘッジ"という言葉は、「垣根、塀」という意味を持ちます。
ヘッジファンドとは、株式市場の暴落にも備え、ローリスクに運用することを目的としており、顧客の資産を守る「鉄壁」の運用をしようという思想から生まれたものなのです。
アルフレッド・ジョーンズの勝利とジョージ・ソロスの台頭
アルフレッド・ジョーンズが知人の投資家を集めて生み出した「第一号ファンド」は、その後10年以上に渡って大きく市場平均を打ち破る成果を叩き出しました。
これが知れ渡ると、1960年以降、空前のヘッジファンドブームが起こり、1962年の段階で米国におけるヘッジファンドの数は200以上にもなったと言われています。
1970年代前後で特筆すべきは、ジョージ・ソロスの率いるクォンタム・ファンド(Quantum Fund)の出現でしょう。
彼は、アルフレッド・ジョーンズの考案した「成果報酬体系」や「セイムボート」のスタイルを踏襲しつつ、しかしさらにハイリスクな投資に乗り出しました。
ジョージ・ソロスは、グローバルマクロと呼ばれる全世界の株式・為替の水準を元にした大胆な投資により、運用を開始した1973年から10年で基準価額を40倍にするという脅威の利回りを叩き出したのです。
ソロスは時に大負けすることもありながら、圧倒的な成果を上げ続けて伝説となりました。
ハイリスクファンドの出現
ジョージ・ソロス(クォンタム・ファンド, Quantum Fund)の出現を境に高いレバレッジをかけて外貨や固有銘柄に集中投資を行うハイリスク型のヘッジファンドが一定数出現します。
ですが、それら(ハイリスクファンド)はあくまでも全体の一部にすぎません。
あくまでも従来型の手堅い運用をするヘッジファンドが中心であり、その中に一夜にして伝説入りしてやろうと意気込みハイリスク・ハイリターンな運用をするファンドが少し混ざっているのです。
では、なぜあくまでも全体の一部である「ハイリスクファンド」イメージがヘッジファンド全体のイメージとして浸透してしまったのでしょうか。
その理由は「ハイリスクで目立つものの方が、ニュースなどにも取り上げられやすく印象に残りやすい」といったことが考えられます。
「レバレッジXX倍で運用していたヘッジファンドが、初年で8倍の利回りを達成したが、翌年90%以上の資産を失い解散」「〜ヘッジファンドが〜株を驚異的な額のショートポジション」などなど、ド派手な動きをするヘッジファンドは金融関連のニュースで取り上げられ、そのたびに一般の投資家はヘッジファンド=ハイリスクで恐ろしい投資をする機関だと思ってしまうのです。
しかし、その影で、多くの堅実なファンドが確実な成果を積み上げています。
実際のところ、現在おいても多くのヘッジファンドが、その成り立ち通り「守備的」で堅実な運用で年6~10%程度成果を出し続けています。
ヘッジファンドへの投資について
「ヘッジファンドで運用したい」と考える際に注意しておくべきは、そのファンドが「従来型の守りの運用を心掛けるヘッジファンド」なのか、はたまた「ハイリスク・ハイリターンを狙うファンド」なのかを十分に確認することです。
大まかに「リスクについてどのように考えていますか?」と聞いてみても良いですが、より具体的な方法として「ターゲットとする利回り」を確認してみましょう。
年20%以上の利回りを狙っている場合には、相応のリスクを背負っている可能性が高く、ハイリスクファンドであることが考えられます。
また「レバレッジ」について確認することも重要です。
レバレッジとは、銀行から借り入れして投資を行う手法のことで、実際の資金以上の金額を投資することができるますが、運用資金が大きくなるため、リスクもそれに応じて大きくなります。
2倍、3倍もレバレッジをかけているようなファンドは、かなり攻めっ気が強いので注意してください。
やはりおすすめできるのは「安定・堅実」な運用を心掛けているファンドです。ランキングページではおすすめのファンドも紹介しているので、是非参考にしてみてください。