突然ですが、「投資のソムリエ」をご存知でしょうか。

 

単に「ソムリエ」と言えば、レストランなどでお客様のご要望に合わせてワインを選び提供する給仕人のことです。一言で言えばワインの専門家ですね。

日本では国家資格ではありませんが、イタリアやフランスでは国家資格として認められている由緒ある職です。

 

投資の世界においてもそんなソムリエの名を冠した投資信託があります。

その名も「投資のソムリエ」。今回はその実態について詳しく分析・考察していきたいと思います。

 

投資のソムリエとは

投資のソムリエの基本情報

出典:投資信託説明書(交付目論見書)|投資のソムリエ
http://www.am-one.co.jp/fund/pdf/313860/313860_pr_d.pdf

  • 商品名:投資のソムリエ
  • 商品分類:追加型/内外/資産複合
  • 信託期間:無期限(2012年10月26日設定)
  • 購入時手数料:3.24%(税抜き3.0%)以内
  • 信託財産留保額:なし
  • 運用管理費用(信託報酬):純資産総額に対して年率1.512%(税抜1.40%)
  • 為替ヘッジ:あり(一部ヘッジ)
  • 委託会社:アセットマネジメントOne株式会社

 

受賞歴

「投資のソムリエ」は2018年には「モーニングスター優秀ファンド賞」を受賞しています。

出典:ファンド通信|投資のソムリエ
http://www.am-one.co.jp/pdf/report/4824/190201_313860_fundts.pdf

 

2018年の金融市場は非常に不安定でで、国内株式や先進国株式が10%以上も下落しました。そんな中、投資のソムリエは−1.61%の下落に止めたのです。

その安定感のある運用が評価され、モーニングスターという投資信託の格付け企業からバランス型部門で受賞されました。

 

何だかすごそうですね。

実際にどんな運用をしているファンドなのか、詳しく掘り下げていきたいと思います。

 

「投資のソムリエ」徹底分析

2つの特色

① 中長期的な安定リターンを目指す

出典:投資信託説明書(交付目論見書)|投資のソムリエ
http://www.am-one.co.jp/fund/pdf/313860/313860_pr_d.pdf

 

投資のソムリエの特色に、「投資環境の変化を速やかに察知し、中長期的に安定なリターンを目指す」というものがあります。

その後、色々難しいことが書いてありますが、具体的にはどんなことをしているのでしょうか?

 

一言で言うと、投資のソムリエは様々な「パッシブファンド」に投資しています。

パッシブファンドとは、「指数連動型」の投資信託のことで、例えば日経平均やTOPIXに連動するものがあります。マーケット全体に投資してると考えてもらってよいでしょう。

具体的には以下のようなファンドが挙げられます。

  • 国内債券パッシブ・ファンド・マザーファンド
  • 国内株式パッシブ・ファンド(最適化法)・マザーファンド
  • 為替フルヘッジ外国債券パッシブ・ファンド・マザーファンド
  • 外国株式パッシブ・ファンド・マザーファンド
  • J-REITインデックスファンド・マザーファンド
  • 外国リート・パッシブ・ファンド・マザーファンド
  • エマージング債券パッシブ・マザーファンド
  • エマージング株式パッシブ・マザーファンド

 

国内、海外、新興国を問わず、債券や株式、不動産などに投資しています。

こうしてみると非常に多くの投資商品、地域に「分散投資」していることが分かります。

確かにこれだけ多く分散投資していれば、「中長期的に安定した運用」を実現できるだろうことは納得できます。

 

② 変動リスクを4%に抑え安定的な運用を目指す

出典:投資信託説明書(交付目論見書)|投資のソムリエ
http://www.am-one.co.jp/fund/pdf/313860/313860_pr_d.pdf

 

特色の2つ目は「変動リスクを4%程度に抑えるように運用する」という点です。

変動リスクと言われると難しいですが、ものすごくざっくり言うと、「年間±4%くらいしか動かない様な運用を目指します」ということです。

もちろん、プラスの運用を目指すのですが、大儲けも狙わない代わりに、損するときもできるだけ小さく抑えるようにします。

 

投資のソムリエでは、投資資産の属性を次のように分けています。

「国内債券」と「為替ヘッジ先進国債権」のみを安定資産とし、それ以外をリスク性資産としていますね。

出典:投資信託説明書(交付目論見書)|投資のソムリエ
http://www.am-one.co.jp/fund/pdf/313860/313860_pr_d.pdf

 

この安定資産とリスク性資産の比率を市況に応じて変えることで、安定感のある運用を実現していくというのです。具体的な割合(ポートフォリオ)は以下の通りです。

全体の3分の2程度を安定資産に振り分けることでリスクをコントロール(調整)しています。

出典:投資信託説明書(交付目論見書)|投資のソムリエ
http://www.am-one.co.jp/fund/pdf/313860/313860_pr_d.pdf

 

手数料

投資のソムリエが広く分散投資を行い、値動きが大きくなり過ぎない安定的な運用をしていることは分かりました。

それでは、運用にかかる「手数料」はどうなっているでしょうか。

  • 購入時手数料:3.24%(税抜き3.0%)以内
  • 信託財産留保額:なし
  • 運用管理費用(信託報酬):純資産総額に対して年率1.512%(税抜1.40%)

 

これだけ見ると特別高くはないようですが、一般的なパッシブファンドと比較するとどうでしょうか。

例えば国内債券パッシブ・ファンド・マザーファンドに投資する「DIAM国内債券パッシブ・ファンド」の手数料は以下の通りです。

  • 購入時手数料:なし
  • 信託財産留保額:なし
  • 運用管理費用(信託報酬):純資産総額に対して年率0.324%(税抜0.30%)

 

投資のソムリエの方が、購入時手数料・運用管理費用共に高いことが分かります。

「投資のソムリエ」でも「DIAM国内債券パッシブ・ファンド」でも結局は同じ国内債券パッシブ・ファンド・マザーファンドに投資をしますが、投資のソムリエでは国内債券パッシブ・ファンド・マザーファンド以外にも複数の投資先があります。

 

投資のソムリエは「どんなファンドに、どの程度の割合で投資をするのか」、というファンド選びに対して高い手数料を払うことになります。

では、それは成績に見合った手数料になっているのでしょうか?

最後に運用成績を確認しましょう。

 

運用成績

投資のソムリエの運用成績はズバリこちらです。

出典:投資信託説明書(交付目論見書)|投資のソムリエ
http://www.am-one.co.jp/fund/pdf/313860/313860_pr_d.pdf

 

最も良かった年で+7.77%、最も悪かった年で-3.29%です。平均すると+2.15%です。

(±4%を超えていますが...)確かに安定した運用はできています。

 

ただ、よく考えてみて下さい。

年間1.512%(税抜1.40%)の運用手数料がかかるんですよね?

 

「ファンドを組み合わせる」というこのファンドの機能に支払う、年間1.512%という手数料は適正でしょうか?そこから得られるリターンは平均で+2.15%です。さらに、購入時手数料3.24%もかかりますです。

初期手数料が3%程度かかる上、年間で得られる利益は1%にも満たないでしょう。

 

まとめ

確かに、分散投資をしてリスクを抑えることは重要ですが、やみくもにリスクヘッジをしても、リターンを減らしてしまい、結局は運用そのものの意味がほとんどなくなってしまいます。

「投資のソムリエ」は安定運用・資産が減りにくいと言えば聞こえはいいかもしれないですが、得られるリターンを考えると「ほとんど儲からないファンド」と言えるのではないでしょうか。

「ソムリエ」の名を冠してはいても、その実力には疑問が残ります。

 

重要なのは、リスクとリターンのバランスをコントロールし、同じリスクで大きなリターンを、同じリターンを得るなら少しでもリスクを抑えられるようにすることです。

 

やはり金融の世界で「投資のプロ・専門家」と呼べるのはヘッジファンドでしょう。

長い歴史の中で、世界の資産家の富を守り・運用してきた実績があります。そして、揺れ動く経済の動向の中で「適切に」リスクヘッジをすることで、安定的に資産を増やしてきました。

 

昨今のコロナショックにおいても、適切なリスクヘッジをすることで、市場(日経平均など)を大きく上回るパフォーマンスを記録しているファンドもあります。もちろん、それ以前の安定した市場においても、一定以上の水準でリターンを残しています。

以下のページでも、おすすめのファンドをランキング形式で紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

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