投資信託に関する最新のデータが入ってきました。

2019年に償還した投資信託の情報です。償還というのは投資信託自体が解散し、投資家に資金が返金されることです。

 

最初から決めていた償還期限がきたものもあれば、運用資金が少なく償還期限を待たずにギブアップしたものもあります。

 

運用額の少ない投資信託はなぜ償還するのか

期限を待たずになされる償還を、「繰り上げ償還」と呼びます。

なぜこのような繰り上げ償還が起こるのかと言うと、投資信託というものを運営していくには運営者にコストが掛かるからです。

 

投資信託の運営にかかるコストとは、例えば投資信託の組成を担当する人の人件費、それを販売する証券会社の営業マンの人経費、そして顧客管理や個人情報の保護にかかるシステム的な費用などです。

 

投資信託は、すべて投資家から集めた資金に対して「信託報酬」という形で年に〜%の手数料をとっているのですが、この信託報酬によってこのコストを支払っています。

つまり、多くの資金が集まらない投資信託は、提供者側に損をもたらしてしまうのです。

 

なので、うまく資金が集まらなかった投資信託は、最初に設定した期限を待たずに償還してしまうことがあります。

日本には6,000本を超える投資信託が存在しますが、毎月20本30本といった数の投資信託が姿を消しているのです。

 

 

投資している投資信託が償還してしまうとどうなるのか

償還される投資信託に投資をしていたとしても、ただその最終日の基準価額に基づいたお金が返ってくるだけなので一見投資家にはリスクはないように見えます。

しかし、実際には2つの意味で投資家にとってはマイナスインパクトがあるのです。

 

1つは、投資家が浮いた資金で新たな投資先に投資をしないといけないということです。

投資を行う場合には、投資信託にしろヘッジファンドにしろ、投資を開始する時点で購入時の手数料がかかります。

 

つまり、解約と再投資が短期間に繰り返されるとこの購入時の手数料が頻繁にかかってしまうのです。

基本的に投資は長期を見据えて、5年10年は放置するつもりで資金を投下するものですから、投資した半年後に「繰り上げ償還されました」では投資家にとっては損です。

 

また、もう一つの難点として再投資先を探さないといけないということ、また再投資をするまでに資金を寝かしておくことになるので機会損失が生まれるということが挙げられます。

 

投資先を探し、態々説明をきき、投資を行うというのは、投資以外にメインの仕事をしている方にとって割と面倒な実務作業です。

これが再び発生してしまうことは投資家への負担になります。

 

また、次の投資先を見つけるのに手間取って資金を寝かしてしまうと、運用されない期間が生まれるので機会損失に繋がるのです。これも見逃せません。

 

2019年4月に償還された23本の投資信託のうち、繰り上げ償還となってしまったものの本数は

2019年4月に償還された投資信託は23本。そのうち繰り上げ償還となった投信の数はなんと16本でした。

任期を終えて投資家のもとに資金が返還される投資信託よりも、運営が立ち行かなくなって早期に償還される投資信託の方がこんなに多いんです。

 

ちなみに、償還における繰り上げ償還の率としては、これは全世界的にみると異常に高い数値です。

ここから見えてくる実態としては、日本は闇雲に投資信託をつくりすぎている、ということです。

 

基本的に繰り上げ償還される投資信託というのは、顧客が集まらなかった、つまり思うような運用ができていなかったというパターンが多いです。

 

それが、これだけの数発生してしまうというのは問題です。

証券会社や銀行の窓口で適当に投資信託を買うと、それを償還期限まで保有していられる可能性の方が低いわけです。

 

極端な話、「とにかく売れそうな投資信託をたくさんつくって、ダメなものは償還してしまえば良い」という提供者側のスタンスがみてとれます。

 

2019年に償還された投資信託のうち、設定来の基準価額を上回ったものの数は

次に2019年4月に償還された投信のうち、設定来の基準価額を上回ったものの数をみてみましょう。

こちらはさらに衝撃的な、6本

なんと23本の投資信託うち6本しか設定来の基準価額を上回っていません。

 

世界的にみればマーケットの状況としても極めて健全であるこのタイミングで、ほとんどの投資信託が設定来のマイナス利回りというのは驚きです。

 

なお、基準価額を最も大きく下回った投資信託は『CMA世界金融機関ハイブリッド・ファンド』であり、なんと10,000円の設定時基準価額に対し、償還時の基準価額は約3,300円。

これには投資家も泣くしかありません。

 

投資信託のずさんな実態は今に始まったことではない

しかしこのような投資信託の状況は、今に始まったことではありません。

日本の投資信託はもう、何年も前から成果を残せていないことで問題視されているのです。

 

最近では金融庁もこの投資信託の実態に激怒しており、さまざまな金融関係者が日本の投資信託の末期的な状況について議論しています。

参考:銀行で投資信託を買った人の46%が損をしていることについて

 

しかし、多くの日本人の金融リテラシーが低いせいで、今日でも変わらずダメな投資信託が買われていっているのです。

 

 

なぜこのような問題が起こるのか

日本の投資信託がまったく劣悪であるというこの問題ですが、ただ日本のアセットマネジメント会社の社員の能力が低い・ヤル気がない、ということではなく、構造的な問題があります。

 

それは、手数料に関するものです。

 

いまの投資信託の基本的な手数料の仕組みは、信託報酬システムといって投資家の預け入れた資金に対して「一定の率で」報酬を貰うというものです。

さきほども説明した通り、この手数料から、投資信託の組成に関わったすべての企業の収益が発生します。

 

この手数料はあくまで投資されている資産全体に対して、運用成績に関わらず一定の率で回収できるものなので、そもそも客が集まるのであれば良い運用をする必要がないのです。

 

極端な話、売れればなんでも良いという話になりがちで、「AIとかロボットのようなこれからくる企業に投資します」というようなテーマ型投資信託が流行っているのはこれが理由です。

 

仮に、「バリュー投資を軸に時にアクティビスト的な動きを加えつつ、日本の株式市場の加熱を見込めば外国の債券等へもポートフォリオを振り分けていきます」というような “運用の内容としては良い” 投資信託があったとしても、日本人の投資家にはよく分からないのでなかなか売れません。

 

つまり、この構造というのは投資信託の提供者から変わるか、投資信託の購入者から変わるのかという鶏卵のような議論に収束してしまうのです。

 

今の状態で投資信託のビジネスが儲かってしまっている以上まだまだ提供者側の体制も変わらなさそうですし、日本人の金融リテラシーがグングン上がっているということもないので、残念なことにまだまだこの状態は続いてしまいそうだというのが私の見立てです。

 

まとめ

日本の投資信託は劣悪なものが多いのですが、それは投資信託を提供している側の責任かと言うとそこまで言い切ることも難しく、価値を理解できない人のために良い運用の商品を作る必要がないというのが現状。

 

とにかく、一投資家としてできることは、自分自身のリテラシーを高めることと、流行りものの投資信託等に迂闊に手を出さないことです。

 

以上。投資先に関するおすすめなど以下に纏めていますので良ければご確認下さい。

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