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バイアウトファンドとは
投資をする人が増えてくる中で、今まで株や投資信託ばかりだった投資の手段に加えて「ファンド」で運用する人も増えてきました(もちろん他にも不動産やFXなど投資の手段は様々あります)。
かつては富裕層のみが活用していたヘッジファンドでしたが、ファンドの種類も増え、個人レベルで投資できるファンドも少しずつ増えてきています。
「ファンド」と呼ばれるものには様々な種類がありますが、その中でも注目するべきはPEファンドの中でも特に「バイアウトファンド」です。バイアウトファンドとは以下のようなファンドのことを指します。
未公開(非上場)の株式と聞くと、VC(ベンチャーキャピタル)と同じようなものと勘違いしてしまう人もいるかもしれません。確かに未公開株(非上場企業)に投資しているという点においては「PEファンド」という同じ括りになりますが、その本質は大きく異なります。
VCが将来性を期待し、希望も込めた博打的な投資をするのに対し、バイアウトファンドは収益性を重視し堅実で現実的なリターンを追求します。各種ファンドの特徴と違いについては以下のページで詳しく解説しているので、ぜひ合わせてご一読ください。
バイアウトファンドの運用実績(パフォーマンス)
高い収益性を誇るバイアウトファンドは実績面でもその実力を示しています。
日銀の発表しているレポート『日銀レビュー 最近のプライベート・エクイティ・ファンドの増勢について(2018年4月)』によると、PEファンドへの資金流入は2009年のリーマンショック以降、急激に増加し、4,000億ドルを超えています。
またその中でも、バイアウトファンドへの資金流入が、金額・割合・流入金額の増加具合と全ての面において突出しています。その額は約3,000億ドルにもなり、全体の80%近くにもなります。
このようにバイアウトが中心であるPEファンド全体の実績は以下のグラフの通りであり、10年で約3倍(年利11~12%)にもなっています。これは株式市場一般の成長度や、ヘッジファンドの実績を上回っています。
出展:日銀レビュー 最近のプライベート・エクイティ・ファンドの増勢について(2018年4月)
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2018/data/rev18j01.pdf
ちなみに本レポートの中でも、PEファンドの中で最も代表的な投資戦略は「バイアウト」だと明記されており、世間一般の認知やイメージと実態にギャップがあるということがわかります。
バイアウトファンドはなぜ強いのか
このように、勢い・実績ともに優れたバイアウトファンドですが、これだけの成果を残しているのにはしっかりとした理由・根拠があります。バイアウトファンドのビジネスモデルからそれを紐解いていきましょう。
バイアウトファンドのビジネスモデル
バイアウトファンドは、未公開(非上場)である成熟企業の株を買い付けます。そして、経営権を取得し企業価値の向上に務め、経営に直接参画し、また再建(バリューアップ)に尽力します。
そして、会社の価値が十分に向上(経営が改善)したところで、株式を高値で売却し利益を狙うというのがバイアウトファンドの大まかなビジネスモデルです。
これだけを書くと「会社を買う」「乗っ取る」「経営を我がものにする」というネガティブな印象を持つ人もいるかもしれませんが、バイアウトファンドは経営を再建し企業価値を高めることを主要なミッションとしているため、いわゆる「ハゲタカ」ファンドのように安く買い叩いて、高く売るわけではありません。
自らの手で経営に参画し、投資した会社とまさに二人三脚で改善に向かうファンドなのです。投資した(株価を取得した)会社の経営を再建できなければ、ファンドも利益を得ることができません。ファンドも会社を良くし、価値を高めるために全力を尽くします。
バイアウトファンドは、投資(株式の取得〜売却)によって利益を得ますが、その会社にとっても価値のある味方にもなる存在なのです。
バイアウトファンドの3つの役割
バイアウトファンドのビジネスモデルには
- 投資先となる企業を評価・選定する
- 株式を取得する
- 経営を改善する
- 株式を売却する
という多くのプロセスが存在します。
また、これらの作業を「PE(Private Equity, 未公開株)」に対して行うため、その業務には高い専門性が求められます。とても一般の投資家が出る幕ではありません。
「1. 投資先となる企業の評価・選定」の段階では、会社の事業内容や経営状態を正確に評価することが求められます。また会社の会計や財務面からも実情を正確に把握することが求められます。
これらの作業(業務)は、いわゆる「銀行」や「(総合)商社」のような機能や役割が求められます。
「3. 経営の改善」においては、会社の経営課題を正確に把握し、業務プロセスの見直しや最適化・取捨選択など「コンサル」のようなスキルやノウハウが必要になってくるでしょう。
また、特殊な製品を扱う企業や専門的な事業をしている企業を投資対象とする場合、それらに対する技術や知識が必要になることもあるでしょう。「メーカー」や「研究所」のような役割が必要になることもあります。
最後に「2. 株式の取得」「4. 株式の売却」では、いわゆる「ファンド」としての、交渉力や調整力が必要になります。
未公開(非上場)株式の投資では、いわゆるマーケットでの株の売買のように株を売ったり買ったりすることができるわけではありません。相対取引で株の売買をする場合には、取引先を見つけて交渉しなければいけませんし、仮にTOB(株式公開買い付け)などをする場合、金融の専門的な知識が必要になります。
つまりバイアウトファンドは
- 銀行
- 商社
- コンサル
- メーカー
- 研究所
そして「ファンド」と様々な業態と同じか、それ以上の機能が求められるのです。
1つの会社・組織でこれだけの機能を網羅するのは並大抵ではありません。仮にこれらを完全に網羅し、一連のフローを遂行することができるなら、利益を自分たちで生み出すことができるということになります。
バイアウトファンドのビジネスモデルには、勝ち(利益)に繋がる流れや根拠があるのです。
まとめ - バイアウトファンドの実態 -
様々な機能を必要とするバイアウトファンドは、その構成も単に金融出身者だけでなく、商社やコンサル、研究者など様々なバックグラウンド(経歴)を持つ人物で構成されていることも少なくありません。
また、ファンドは1つの投資スタイルだけでなく複数の手法(上場株式に投資するヘッジファンド)を組み合わせていることもあります。複数の事業を組み合わせて事業ポートフォリオを組む大企業と同じです。
ファンドの特色や実態はそれぞれ異なります。世の中にどのようなファンドがあるのか(用語の意味など)を知ることは重要ですが、一つ一つのファンドをしっかりと見極めることこそ重要です。