日本のいわゆる「独立系」と呼ばれる投資信託の草分け的存在としては、「さわかみファンド(さわかみ投信)」が有名なところでしょう。2019年現在も、3,000億円近い金額を運用しています。

 

独立系投資信託は、大手の金融機関が設定・運用する投資信託とは違い、独自のポートフォリオを組み独自のルートで販売をするという特徴があります。

いまでは、「ひふみ投信」や「セゾン投信」など、様々な独立系投信が人気を博し、大きな純資産を運用して活躍していますが、日本にそういった流れをもたらしたのは間違いなくこの「さわかみファンド」です。

今回は、そんな「さわかみファンド」の成績やポートフォリオを分析し、今後についても予測していきたいと思います。

 

さわかみファンドの分析

10年間の運用成績

まずは、一番大切な運用成績です。直近10年間の「さわかみファンド」はどのような運用成績となったのでしょうか。日本株式のベンチマークである日経平均との比較が、こちらです。

 

こちら、青色がさわかみファンド、赤色が日経平均ですが、ほとんど同じ値動きです。

アクティブファンドでありながらここまで市場にきれいに連動しているのも珍しのではないかという程、マーケットと同じような動きをしています。

 

実際に投資した場合の投資家のリターンを考えると、さわかみ投信は年約1.0%の信託報酬がかかるため、その分だけ市場の成績以下の結果となってしまいます。

年1.0%という信託報酬は、決して高いものではありませんが、日経平均連動の投資信託やETFのコスト(手数料)が非常に安いことを考えても、大きな足かせです。

総じて言えば、さわかみ投信の運用成績は決して優れているとは言えません。

 

ポートフォリオ

次にさわかみファンドのポートフォリを見てみましょう。以下の通り、組入上位には日系の大手企業が名を連ねています。

 

業種には特に特徴はありませんが、とにかく割安な日本株へと投資しており「バリュー投資」をメインにしていると言えます。

基本的な戦略としては、「日本株のバイ・アンド・ホールド」であり、一度買った会社の株を長期間保有することでで有名です。

これは、創業者でありカリスマと呼ばれた澤上篤人氏の打ち立てた戦略です。それが20年近く受け継がれています。

 

しかし、この戦略で戦ったものの、直近の10年では、良くも悪くもちょうど日経平均と同程度(=手数料分だけ投資家は損)の結果となってしまっています。

 

さて、このさわかみファンドの「バリュー投資・長期投資」という戦略が、過去最も上手くいったタイミングはITバブルが弾けた瞬間でしょう。

ITバブルの崩壊時は、株価が暴落し、多くの投資信託が損を出している中で、さわかみファンドはほとんど影響を受けずに乗り切りました。

 

これはさわかみファンド設定直後のできごとでしたが、このことをきっかけに、さわかみファンドの人気に火が付きました。

ディフェンスに優れており、下落曲面に強いため、長期投資に向いているのが「さわかみファンド」の良さなのです。

 

ひふみ投信との比較

さて、ここまで「さわかみファンド」単体を考察してきましたが、ここからは最近勢いのある「ひふみ投信」との比較で考えてみましょう。

同じ独立系の投資信託でありながら、さわかみファンドと全く違う投資をするのが藤野英人氏が率いる「ひふみ投信」です。

 

ひふみ投信のここ10年の値動き(運用成績)を、日経平均と比較しつつ確認してみたいと思います。

 

こちらも、青がひふみ投信、赤が日経平均です。ひふみ投信が、日経平均を大きく上回る成績をあげていることが分かります。

 

ひふみ投信は、さわかみファンドと違い中小の成長企業へと投資をする戦略で運用してきており、ここ10年間で言うと完全にひふみ投信に軍配が上がったと言って良いでしょう。

どちらかと言うと「攻め」の投資をしてきたひふみ投信の方が、ここ10年の上げ相場では、やはり大きなリターンを得ています。

 

一方で、ひふみ投信も、直近(1~2年)に限って見れば、パフォーマンスに陰りが出てきているのも事実です。

これは好景気に沸いていた日本の株式市場が、どこか転換期に差し掛かっている影響が出てきているためでしょう。ひふみ投信はこの状況を見て、海外へと資産を振り分け直しています。

 

株式市場の歴史をみてみると、10年-20年に一度、市場が大きく暴落する事件が起きていますが、今の日本・アメリカの株式市場は、まさにそういった暴落が起きる直前のような空気感がでていると感じます。

 

さわかみファンドの実力と今後の予想

さわかみファンドの実力は、おそらく数年内にくるであろう世界的な恐慌のタイミングで明らかになるでしょう。

総資産の推移が苦戦していることからも、おそらく多くの投資家は上げ相場と言われる環境でさわかみファンドに投資するメリットをあまり感じておらず、ここ10年はさわかみファンドにとっては厳しい時期でした。

 

しかし、ITバブル崩壊を乗り切った時のように、来たる下げ相場で「耐える」ことができれば、再び脚光を浴びることになるだろうと思うのです。

次の下げ相場で、さわかみファンドの基準価額がどのように動くのか。日本の第一号独立系投資信託の今後から、目がはなせません。

 

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