さわかみファンドとは

突然ですが、皆様「さわかみファンド」をご存知でしょうか。

名前は聞いたことがあるよ、という方も多いかもしれません。「さわかみファンド(会社名:さわかみ投信株式会社)」は日本で独立系投資信託として直接販売を始めた草分け的な会社です。さわかみファンドが設定された1999年当時は、まだ今ほど投資信託というのがメジャーではありませんでした。

 

そういった状況の中で、「一般的な家庭に長期投資の機会を提供する」という目的で運用を開始し、まだ馴染みの薄かった投資信託を日本に広めた老舗と言えるかもしれません。

では、今回はそんな知名度の高いさわかみファンドの実力に迫っていきたいと思います。

 

さわかみファンドの基本情報

  • 商品名:さわかみファンド
  • 主要投資対象:割安銘柄。割安が解消されるまで保有する「バイ・アンド・ホールド型」の長期投資
  • 商品分類:追加型投信/内外/資産複合
  • 信託期間:無期限(1999年8月4日設定)
  • 購入時手数料:なし
  • 信託財産留保額:なし
  • 運用管理費用(信託報酬):純資産総額に対して年率1.08%(税抜1.00%)
  • 為替ヘッジ:あり(適時ヘッジ)
  • 委託会社:さわかみ投信株式会社

出典:投資信託|さわかみ投信株式会社
https://www.sawakami.co.jp/

さわかみファンドの投資手法

早速、さわかみファンドの特徴から見ていきましょう。さわかみファンドが重要視しているのは「長期投資」という点です。さわかみファンドのホームページを見ると以下のように書いてあります。

『さわかみファンド』は、経済の大きなうねりをとらえて先取り投資することを運用の基本とし、その時点でもっとも割安と考えられる投資対象に資産を集中配分します。そのなかでも市場価値が割安と考えられる銘柄に選別投資し、割安が解消するまで持続保有する「バイ・アンド・ホールド型」の長期投資を基本とします。

 

つまり、割安な状態の株式を購入した後は、その割安が解消されるまでひたすら保有し続けるという戦略です。

  • 割安な状態で購入
  • 割安が解消されるまでひたすら長期保有

さわかみファンドの投資戦略はこれに尽きるようです。

 

では、実際にどれくらいの期間、株式を保有しているのでしょうか。さわかみファンドの資料によると以下のようになっています。

出典:特別インタビュー 世代交代を経て進化する「さわかみファンド」澤上社長と草刈CIOが語る「長期投資」の新戦略 | モーニングスター 特集
http://www.morningstar.co.jp/event/1506/sawakami/index.html)

 

こちらを見ると、10年以上保有が76%、5年以上保有と合わせると89%となっています。約9割もの銘柄が5年以上保有されているのです。実際にはどんな銘柄を保有しているのでしょうか。

出典:投資信託説明書(交付目論見書)|さわかみファンド
https://www.sawakami.co.jp/know/fund/outline/_pdf/mokuromi_koufu.pdf

 

組入れ銘柄の上位3つは

  • 日本電産
  • ブリヂストン
  • 花王

です。これらは果たして割安銘柄なのでしょうか。

 

割安かどうかの判断には様々な方法があり、本来であれば企業の収益価値や資産価値を詳細に分析して検討していく必要がありますが、今回は簡単に最も基本的な指標である「PER(株価収益率)」と「PBR(株価純資産倍率)」に注目してみましょう。

上位3社のPER、PBRと日経平均の値を比較してみます。

PER PBR
日本電産 34.17 4.81
ブリヂストン 10.30 1.24
花王 27.35 4.98
日経平均 12.93 1.19

まずPER(株価収益率)を見てみましょう。PERとは「1株当たりの当期純利益に対して、株価が何倍になっているか」というものです。これについては、

  • 日本電産:34.17=日経平均の2.64倍
  • ブリヂストン:10.30=日経平均の0.80倍
  • 花王:27.35=日経平均の2.12倍

となっています。PERの適正な値については、議論の余地がありますが、少なくとも、日本電産や花王はPERが日経平均の2倍以上となっており比較的割高といって良い状態です。

 

また、PBR(1株当たり純資産)についても、

  • 日本電産:4.81=日経平均の4.04倍
  • ブリヂストン:1.24=日経平均の1.04倍
  • 花王:4.98=日経平均の4.18倍

となっており、日本電産と花王の2社は日経平均の約4倍です。ですが、さわかみファンドは組み入れ上位として保有し続けています。

 

つまり、さわかみファンドにとってみればまだまだこの2社は「割安な状態が解消されていない」ということになるのでしょうか。

 

しかし、PER、PBRの数値を見るとこれらの銘柄が割安だとは到底思えません。

さわかみファンドは先程も述べた通り、超長期保有を重視しており、9割以上の銘柄が5年以上の保有となっています。

すなわち、一度買った株は持ち続ける訳ですから、"割安"かどうかの判断が投資戦略のキモなのです。にもかかわらず、その部分において疑問が残る少々不安な結果となってしまいました。

 

ファンドマネージャの経歴と人物像

続いて、ファンドマネージャについて見ていきましょう。ファンドマネージャは投資の意思決定をする、とても重要なポジションです。

「ファンドの運用成績はファンドマネージャ次第」と言っても過言ではないでしょう。

 

さわかみファンドでは「草刈 貴弘」さんという方がファンドマネージャを務めていらっしゃいます。いったいどんな経歴の方なのでしょうか。ホームページの経歴を転載します。

2001年3月 東洋大学工学部建築学科卒業
2008年10月 SBIフィナンシャルショップ株式会社を経て当社入社
2010年4月 業務管理部を経て運用調査部に異動
2010年11月 ファンドマネージャーに就任
2013年1月 最高投資責任者 兼 ファンドマネージャーに就任
2015年6月 取締役最高投資責任者 兼 ファンドマネージャーに就任

 

工学部を卒業された後、2008年にさわかみ投信株式会社に入社されるまで7年あります。そこでは、なんと舞台俳優をされていたそうです。また、SBIフィナンシャルショップというのもあくまで金融商品の販売をする会社ですので、運用業務とは全く異なります。

つまり、草刈さんが運用のお仕事をされ始めたのは2010年の4月からだと推測できます。

 

それから、わずか7か月でファンドマネージャーに就任され、2年と少しで最高投資責任者に就任されています。

会社の内部事情までは分かりませんが、恐ろしく早いスピードで出世されたのではないでしょうか。ただ、投資家の目線からすると、もう少し経験を積んだ方のほうが安心かなという気持ちにはなってしまいます。

 

運用成績と純資産の推移

それでは、最も気になる運用成績を見てみましょう。

出典:投資信託説明書(交付目論見書)|さわかみファンド
https://www.sawakami.co.jp/know/fund/outline/_pdf/mokuromi_koufu.pdf

 

2008年のリーマンショックの時はやはり大きく下げていますね。一方で2013年のアベノミクスの時は大きく上昇しているようです。日経平均の騰落率と比較してみましょう。

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
さわかみ
ファンド
-42.2 +27.2 -0.9 -17.7 +13.1 +55.8 +12.1 +6.9 +1.3 +25.1
日経平均 -41.5 +19.1 -3.6 -18.3 +21.5 +53.6 +8.1 +9.9 +1.6 +18.0

 

この表からもわかるように、日経平均が下がった年は下がり、上がった年は同様に上がっています。またその値動きの幅もかなり近いものがあります。

そう、さわかみファンドの運用は日経平均と大差がないのです。

これでは、手数料を払ってまでわざわざさわかみファンドに預ける意味はあるのでしょうか。ここで、基準価格と総口数の推移を見てみましょう。

出典:2018.7_月次レポート|さわかみファンド
https://www.sawakami.co.jp/know/fund/report/_pdf/graph20180731.pdf

 

オレンジ色の線が総口数です。2013年頃を見ると、それまで順調に増加していたのが、急激に減少しているのが分かります。

これは、おそらくリーマンショックによって大きく資産を減らし塩漬けにしていた投資家が、アベノミクスによる景気回復で基準価格も回復したのを捉えて、さわかみファンドの「辞め時」だと思って手放したということだと推察できます。

ピーク時には2,000億を超えていた口数が、現在では1,200億前後になってしまっています。その減少率は何と40%です。

残念な話ではありますが、ピーク時から40%も顧客が減少してしまうほど、さわかみファンドを解約している方が多いというのが実態のようです。

 

まとめ - さわかみファンドに投資魅力はあるか -

ここまでのポイントをまとめてみましょう。

  • 投信の直接販売をひろめた草分け的な存在
  • 投資戦略は割安株重視の長期投資。しかし、保有銘柄には割高なものも。
  • ファンドマネージャーは若く、ものすごいスピードで最高投資責任者に就任しており、経験に関してはやや不安
  • 運用成績は日経平均に連動
  • ピーク時の6割程度の規模

確かに草分け的存在として偉大なファンドではありましたが、現在投資する魅力があるかというとえ難しいものがあります。これらのポイントを見ても残念ながらあえて選ぶ必要はないファンドと言えるでしょう。

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