資産運用をする人が増えてきている中で、人気が高いのが「投資信託」です。
年金問題やコロナショックを受けて、個人個人が投資・運用をして資産を築いていくことの重要性が高まる中で、貯金から、株や投資信託に資産の多くが流れています。
実際、証券口座の新規開設数は激増し、証券会社もここぞとばかりに、新規の投資信託を開発・宣伝しまくっています。
このように人気があり、「初心者向け」と思われている投資信託ですが、絶対におすすめできない明確な理由があります。
ここでは、そのNG理由を3つに絞って解説していたいと思います。
目次
投資信託を買ってはいけない3つのNG理由
何に投資しているのかわからない
投資信託は、その投信を通じて、複数の会社の株に間接的に投資するものです。
「1つの投信を買えば分散投資ができる」などと安易に考えてしまう人も多ようですが、ではその投資信託が実際にどんな会社に投資しているのかをきちんと考えることはできているでしょうか?
最近最近特に注目が高まり、人気を集めている『次世代通信関連 世界株式戦略ファンド(愛称:THE 5G)』で考えてみましょう。この『5G』が実際に投資している企業は以下の通りです。
参考:月次レポート|次世代通信関連 世界株式戦略ファンド≪愛称:THE 5G≫(2020年06月30日)
https://www.smtam.jp/fund/pdf/_id_510138_type_m.pdf
もし、5Gへの投資に興味があるならば、これらの企業をきちんと理解できていなければいけません。
5G関連の企業に投資しいているとはいえ、実際に買っている会社を理解できないようであれば、投資はやめるべきです。
投資の鉄則の一つに「自分自身が理解できるものに投資する」というものがあります。
どんなに著名な投資家であっても、ありとあらゆる投資に手を出しているわけではありません。皆、自分の得意領域や専門としている分野で勝負しています。
例えば、投資の神様とも呼ばれているウォーレン・バフェット氏(Warren Edward Buffett)も仮想通貨には投資していません。
バフェット氏はそのことについて「仮想通貨が儲からないとは言い切れない。しかし、私はそれを判断することができない(=だから投資しない)」と述べています。
世界一と呼ばれる著名な投資家でさえ自分が正確に理解できないものには手を出しません。
もちろん、バフェット氏も仮想通貨への投資を検討するにあたって、常人には決して及ばないようなレベルで調査・研究を重ねた上での結論でしょうが、彼のこれまでのキャリアとはかけ離れており、その本質を理解するのが難しいと判断したのでしょう。
たまに「最近はどんなものがおすすめ?」「〇〇の株ってどうかな?」などと、広範囲だったり局地的な質問をしてくる人がいますが、どんなに優れたトレーダーであっても、こういった質問に急に答えることはできません。
たまたまその分野に精通していれば回答を得られることがあるかもしれませんが、「〇〇株」について語るには、その株について企業分析や株価の評価をしなければならないのです。
これは野球選手に、「最近の日本サッカーってどう思う?」「錦織選手(テニスプレーヤー)ってどうかな?」などと質問することと似ています。
トップアスリートであれば、一般人とはまた違った視点の意見を述べてくれるかもしれませんが、いくら同じ「スポーツ選手」だからといって、他のスポーツにまで精通してはいないでしょう。
もちろん、完全な初心者と比較すれば、基礎知識の差は歴然でしょうが、畑違いのもの、自分の頭で正確に理解することができないものには手を出さないのが、投資においても鉄則なのです。
買い時/売り時(適正価格)の判断ができない
投資信託には「基準価格」があります。
その投資信託が投資している会社の株価から算出され、この価格が上がったり下がったりすることで、投資をしている人は利益を得たり損をしたりします。株式投資でいうところの株価と同じようなものと考えていただければ良いでしょう。
では、投資信託の場合、その基準価格がいくらのときに投資するのが良いでしょうか?
先ほどの『次世代通信関連 世界株式戦略ファンド(愛称:THE 5G)』で考えてみましょう。この投信の基準価格は、2020年8月13日時点で13,861円です。
この価格が、今後上がるのか、下がるのかを考えることができなければ、投資信託に買う(投資する)価値があるのかどうかを判断することはできません。
ここで多くの人たちは「5Gは世間からの注目も高く、今後大きく成長する業界だから、価格は上がるに決まっている」と考えてしまうようですが、「注目産業=株価が上がる」と安易に考えてはいけません。
投資信託の基準価格は、あくまでもその投信が投資している様々な会社の株価から算出されます。
つまり、この場合先述の「5Gが投資している企業」の株価が上がらなければ、その投資信託の基準価格は上がりません。
そして「注目業界=株価が上がる」わけでもない点にも注意が必要です。
株価とは、その会社の企業価値や業績予測から、株式市場で決定されます。その会社の株を欲しいと思う人が多ければ株価は上がりますし、少なければ株価は下がります。
ここで、先ほどの組入銘柄で7位だった『太陽誘電』について考えてみましょう。
この会社の概要は「電子部品メーカー。スマートフォン向けに搭載されるハイエンドなMLCC(積層セラミックコンデンサ)において強みを有する。」とありますが、ではこの会社の業績についてはどうでしょう?
仮に5Gの普及によって売上が増えたとして、それは会社全体の何割を占めるのでしょうか?
そもそもこの会社の財務状況はどうなっていますか?業績予測は?資産バランスは?
今の株価は、それらに対して適正ですか?割安or割高になっていませんか?
こういった視点で、個々の会社の評価をしていかなければ、その会社の株価が上がるのか下がるのかを判断することはできません。
加えて、投資信託の場合、複数の会社に投資しているので、投資先の全ての企業(最低でも組入上位10銘柄)に対して、同様に評価し、それらを総合して適正価格を判断しなりません。
これは、現実的に不可能です。
つまり、投資信託は、それが割高なのか割安なのか、買い時なのかどうなのかを判断することができないまま投資するしかないのです。
投資の鉄則の一つに『安く(割安のときに)買って、高く(割高になったら)売る』というものがあります。
鉄則とするほどのことでもない、誰にでもわかる超基本ですね。
この「適正な価格」「買い時/売り時」がわからない投資信託に投資するのはおすすめできません。
誰が運用しているのかわからない
投資信託は、投信を買うことで、その投信(ファンド)に資産を預け入れ、運用を代行してもらう仕組みです。
その投信ごとに様々な運用方針・投資領域が決まっており(先ほどの場合は5G)、その運用方針に則って運用されます。
もちろん、投信ごとに方針や戦略は予め定められていますが、実際にはその戦略の中で「人(トレーダー)」が運用しています。
先ほどの5Gであれば、5Gに関連する数多の企業の中から、重点的に株を買う企業を選出し、ポートフォリオのバランスを調整しながら資金を動かしているのです。
この、実際に資産を預けて運用をお願いしている「人(トレーダー)」が、投資信託の場合明らかになりません。その資産運用会社の社員が運用を担当しているでしょうが、実際にどんな人物なのかわからないのです。
これは、同じように資産を預かるヘッジファンドなどではあり得ないことです。
有名なバークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway Inc.)は、ウォーレン・エドワード・バフェット(Warren Edward Buffett)がファンドマネージャを務めますし、ブリッジウォーター・アソシエイツ(Bridgewater Associates)はレイ・ダリオ(Ray Dalio)がCIOを務めます。日本のひふみ投信は藤野英人氏がCIOを務めています。
このように、大切な資産を預け入れるのであれば、どんな投資家が運用を担うのかを把握するのは非常に重要なことです。
その人が著名かどうかはさておき、運用の責任者が明確になっていない場合、誰もその運用に責任を持っていない、責任を持って運用をしている人がいないことに変わりありません。
これでは運用の質・パフォーマンスは担保されないでしょう。
大切な資産を使って投資するのですから、どんな人が担当するのか(責任者なのか)はきちんと把握しておきたいところです。
投資信託に変わる運用方法とは
このように投資信託には
- 何に投資しているのかわからない
- 基準価格がわからない
- 誰が運用しているのかわからない
といった様々なNG理由がありました。
投資信託は「手軽」「キャッチー」などの理由から手を出しやすく、また銀行や証券会社などがこぞってPRしてくるために、ついつい安易に流れてしまいがちなため注意が必要です。
きちんとした資産運用を考えるのであれば、やはりその専門機関であるヘッジファンドなどの方が優れています。
ヘッジファンドであれば、ファンドマネージャは明確ですし、具体的にどんな企業に投資して、どのようにしてそこに投資する判断に至ったのか、企業分析の詳細などもファンドのレポートを通じて詳細に知ることができます。
先述のような世界的なファンドの場合、数億円の資産を要することもありますが、最近の国内ファンドであれば1,000万円程度から出資を受け付けているところもあります。
手軽だからといって易きに流れることなく、資産運用の本質についてきちんと考えてみてはいかがでしょうか。