今日は、最近巷でなにかと流行っている「農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶね(旧:農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンド)」について詳しく解説していきたいと思います。
これまでの運用実績や運用方針などから、今後投資をする価値のある投資信託なのか一緒に考えていきましょう。
目次
農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶねとは
概要
「農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶね(旧:農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンド)」はアメリカの大手企業へ投資する投資信託です。
農林中金全共連アセットマネジメントという会社が委託会社であり、農林中金バリューインベストメンツ株式会社という投資助言会社の助言を得ながらポートフォリオを構築しています。
聞き慣れない会社だと思いますが、農林中央金庫グループの子会社です。
- 名称:農林中金〈パートナーズ〉 長期厳選投資 おおぶね
- 単位型・追加型:追加型投信
- 投資対象地域:海外(北米)
- 投資対象資産:株式
- 決算頻度:年1回
- 投資形態:ファミリーファンド
- 為替ヘッジ:なし
参考:投資信託説明書(交付目論見書)|農林中金〈パートナーズ〉 長期厳選投資 おおぶね
https://www.ja-asset.co.jp/fund/140829/pdf/koutline140829.pdf
農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶねの実績
まずは運用実績を見てみましょう。
以下のグラフは、米国株の代表的指標である「S&P500」との比較チャートです。青色が当該ファンド、赤色がS&P500の推移です。
ほぼ同じ動きですが、わずかに農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶねが上回っています。
特に、2018年の3月頃から9月頃を見てもらえばわかる通り、上げ相場でマーケットに打ち勝っている印象です。
S&P500連動の投資信託やETFであれば非常に低い手数料で購入できるのに対し、農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶねの場合はアクティブファンドであることも影響し購入時に2%(税抜)の手数料と、毎年0.9%(税抜)の運用管理費用(信託報酬)を払う必要があります。
とは言え、設定来で見て、良い成績と言ってよいでしょう。
結果として、2018年の後期を中心に人気が出ており、総資産額がグッと伸びています。
参考:投資信託説明書(交付目論見書)|農林中金〈パートナーズ〉 長期厳選投資 おおぶね
https://www.ja-asset.co.jp/fund/140829/pdf/koutline140829.pdf
農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶねの投資戦略
次に、当該ファンドの投資戦略を見てみましょう。
どのようなストラテジーでもって、米国株の投資を行っているのでしょうか。
まずは現状のポートフォリオを見てみます。
組み入れ上位10銘柄と、組み入れ上位7業種がこちらです。
参考:投資信託説明書(交付目論見書)|農林中金〈パートナーズ〉 長期厳選投資 おおぶね
https://www.ja-asset.co.jp/fund/140829/pdf/koutline140829.pdf
VISAや、ティファニーなどは日本人にも馴染みのある企業なのではないでしょうか。業種は多岐に渡っています。
投資信託の説明書(交付目論見書)によれば、農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶねの投資先は 「構造的に強靭な企業」です。
そして、その構造的に強靭な企業というのは、以下の3つの条件満たしている会社のことを指すと説明されています。
- 付加価値の高い産業
- 圧倒的な競争優位性
- 長期的な潮流
参考:投資信託説明書(交付目論見書)|農林中金〈パートナーズ〉 長期厳選投資 おおぶね
https://www.ja-asset.co.jp/fund/140829/pdf/koutline140829.pdf
そして、このような構造的に強靭な企業に投資するため、基本的に「バイアンドホールド」になります。
アクティブファンドというと、どうしても買いタイミングや売りタイミングにその実力が反映されるという印象がありますが、あくまで「どの会社に投資をするのか」という点に最大のポイントがあるとしています。
「構造的に強靭な良い会社を任意のタイミングで買って株を持ち続ける」というのがこの投信のポイントなのです。
「構造的に強い企業」とは
さらに投資戦略を詳しく掘り下げると、「構造的に強い企業」を判断するに当たって、第一にビジネスの構造を、第二に経営者を考えています。
ビジネスの構造については、
- 参入障壁が高く
- 提供しているサービスの付加価値が高く
- シェアが圧倒的
であること。これが満たされている場合には、儲からない状態になることは中々ないと彼らは考えます。
このような構造がすでに構築されていれば、極端な話、無能な経営者であっても向こう5年は収益が出続けるのです。
ただし、10年後はどうかというと、経営者の判断の影響が出て来ます。
そこで、経営者に求めるものは、10年後にも構造的に強靭な企業を維持するために、「適切な投資を行っているかどうか」というものだそうです。
また、彼らは現場を訪問することで感じる細かいポイントを大切にするとも語っています。
実際にIR部門を訪問した際に、どのような対応をするのか、会社の中で気付いたポイントはないか、という点を投資先選びの基準として盛り込んでいるそうです。
農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶねの今後の見通し
ファンドの特徴からみる今後の動向
農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶねの運用方針や投資先を見てみると、企業の競争力の強さに着目したグロース株思考のファンドであるというのが私の感想です。
「ビジネス構造を大切にする」
「経営者は投資家マインドを持っているかどうかを大切にする」
「現場で感じたことを大切にする」
というような、定性的な情報をたよりに投資を検討しているという点で、攻めの色が強いと感じます。ひふみ投信の藤野さん等と似たような雰囲気があります。
総じて、このような定性的情報を頼りにする攻めの投資を行う場合には、マーケットが強いときに(上げ相場で)その真価を発揮します。
直近の成績が良かったのも、米国の株式市場が踊り場とはいえ、引続き悪くはない状態だったからと言えるでしょう。今後も、マーケットが強くあるのであればファンドの成績としては期待できるかもしれません。
今後のリスク
一方で、米国を中心としてあまりにも好景気が続いているために、近々市場自体が暴落するのではないかという懸念が高まっているのも事実です。
これまで市場の暴落というのは一定の周期で世界を襲っており、それがここ数年内にあるのではないかと危惧されています。
農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶねは、このような下げ相場に対しての耐性面ではかなり不安が残ります。
というのも株式市場全体が暴落するほどの不況のタイミングでは、企業がどのようなビジネスモデルを持っていようが、経営者がどのようなマインドを持っていようが、明確に割安な株式以外は全て下がってしまうためです。
これは何度も歴史が証明してきたことであり、逆にバフェットに代表されるような「バリュー投資」の方が長期投資においては最も強く・正しいと言われている所以でもあります。
バリュー投資とはファンダメンタルズ分析(企業の価値評価)に注目し、資産価値に裏付けられた割安株に投資する戦略です。
日経平均が悪くなったとたんに、ひふみ投信も苦戦し始めたのと同様、農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶねも、米国の株式市場が大きく下げた時には非常に不安が残る投資法だと思います。
※2020年4月追記
コロナショックによって、世界の株式市場は大荒れの相場となりました。それに伴って、やはり「農林中金<パートナーズ>長期厳選投資おおぶね」の基準価格も大きく値を崩しています。
やはり長期・安定な運用をするためには、バリュー投資を主軸にした運用を優先するべきでしょう。むしろ、今の時期は、多くの株式が割安になっており、バリュー投資をメインとするファンドにとっては、絶好の投資機会となっています。
ランキングページでは、そういったファンドも紹介しているので、興味のある方はぜひ参考にしてみてください。