人気の高い新興国ファンド

投資信託は数多くありますが、そんな中でも近年人気・注目を集めているのが「新興国」の関連の銘柄です。今後の経済成長が期待できる新興国(の証券取引場に上場している)企業に投資することで、国の成長、企業の成長に合わせて大きく儲けようとするものです。

 

新興国として注目されている国には、インドやマレーシア、中国、ブラジルなど色々とありますが、今回は「メキシコ」に着目した「メキシコ株式ファンド」について見ていきたいと思います。

中南米の新興国である、メキシコに投資するこのファンドに投資魅力はあるのでしょうか?詳細を紐解いていきましょう。

 

メキシコ株式ファンドの基本情報

  • 商品名:メキシコ株式ファンド
  • 商品分類:追加型/海外/株式
  • 投資対象地域:中南米
  • 為替ヘッジ:なし
  • 分配方針:年2回(原則として毎年3月15日、9月15日。ただし、休業日の場合は翌営業日)
  • 信託期間:2013年3月26日〜2023年3月15日
  • 信託金の限度額: 1,000億円
  • 購入時手数料:3.24%(税抜き3.0%)以内
  • 信託財産留保額:基準価額の0.3%
  • 運用管理費用(信託報酬):年1.6362%(税抜 1.515%)
  • 委託会社:カレラアセットマネジメント株式会社

参考:メキシコ株式ファンド  投資信託説明書(交付目論見書)
http://www.chura-fundstore.com/pdf/mokuromi/488.95/48895_1_011.001.pdf

成長著しいメキシコ市場

「メキシコ株式ファンド」は、名前の通りメキシコ株式を中心に運用を行うファンドです。メキシコは新興国として注目を集めており、今後の成長が期待されています。当ファンドの投資信託説明書(交付目論見書)でも、メキシコの魅力がふんだんに語られています。

 

まずはじめに、メキシコは立地が恵まれています。アメリカに隣接しており、南米との橋渡しをする役目があります。また、34件もの世界遺産があるなど、観光地としての魅力も高く、毎年たくさんの外国人訪問客が訪れています(2016年は約3,500万人)。

出典:メキシコ株式ファンド  投資信託説明書(交付目論見書)
http://www.chura-fundstore.com/pdf/mokuromi/488.95/48895_1_011.001.pdf

 

また、46ヶ国とFTA(自由貿易協定)を結んでおり、関税において優位性があります。海外からの投資金額も多く、外貨の準備も豊富です。生産年齢人口(15歳~64歳)の割合も高く、2025~2030年にかけて最盛期を迎えると予測されており、今後の成長が期待されています。

 

Bloombergが発表した、2018年に最も魅力のある新興国ランキングでも、中国やインドを抑えて、メキシコが1位となっており、今世界で最も注目され、成長が期待できるのがメキシコ市場と言ってよいでしょう。

参考:メキシコとトルコが上位、2018年の魅力ある新興市場ランキング - Bloomberg https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-01-22/-2018-jcqqtq5z

 

このように経済成長が期待できるメキシコに投資する当ファンドは一見すると非常におすすめできるファンドのように思えます。しかし、当ファンドは為替ヘッジをしていません。では次に、為替について確認してみましょう。

 

メキシコは為替リスクが高い

メキシコ株式ファンドは、為替ヘッジを行なっていません。つまり、為替の影響をモロに受ける事になります。そのため、当ファンドでの運用を考えるにあたって、為替レートをチェックしないわけにはいきません。

メキシコで流通している通貨は「メキシコペソ」です。まずは、ここ数年の為替レート(メキシコペソ/日本円)の推移を確認します。

出典:メキシコ・ペソ/円の為替レートの推移 - 世界経済のネタ帳
http://ecodb.net/exchange/mxn_jpy.html

 

ここ3年の推移を見ると、大きく右肩下がり(メキシコペソに対して円高)に振れていることがわかります。最大で1MXN=8.1円→5.4円と3分の2にまでペソの価値は下がっています。また、1980年まで遡り、長期間での為替の推移を確認すると、より顕著に円高に振れていることがわかります。

出典:メキシコ・ペソ/円の為替レートの推移 - 世界経済のネタ帳
http://ecodb.net/exchange/mxn_jpy.html

 

このように、日本円から見たメキシコペソの価値は大きく下がっています。

高度経済成長期に、日本円が円高に振れた経験から「経済成長をすると、通貨が強くなる」と考えてしまっている人もいるようですが、一概にそうとは言えません。経済成長に伴いインフレが進んでいる場合、通貨は強くなりません。これはメキシコのみならずオーストラリアなどの過去のデータからも確認することができます。

出典:経済が成長しても通貨(為替レート)が強くなるとは限らない - ファイナンシャルスター
https://finance-gfp.com/?p=4357

 

メキシコは、1980年~1990年代ほどではないにせよ、今もなお堅調にインフレしています(直近の10年でも年4~6%ほど。ちなみに1980~1990年頃は年間20%超、2倍近くインフレした年もありました)。

出典:メキシコの消費者物価指数の推移 - 世界経済のネタ帳
http://ecodb.net/country/MX/imf_cpi.html

為替の予測は非常に難しいものがありますが、今後もこの円高は進行する可能性があります。日本円から見たメキシコペソの価値が下がると、運用には不利になります。

 

メキシコ株式ファンドの価格推移

メキシコの経済成長と、為替の推移をかけ合わせると、基準価格はどのように推移するのでしょうか。月次の運用レポートから確認します。

出典:メキシコ株式ファンド 月次レポート(2018年7月31日現在)
http://doc.wam.abic.co.jp/ap02rs/contents/pdf/9Y314133_m.pdf

 

2013年の設定以来、その推移は大きく「乱高下」しています。また直近1年の騰落率は-4.49%、3年でも-9.01%、設定来の5年でも-10.22%とマイナスです。

メキシコ株式の指数は順調に推移(成長)しているにも関わらず、メキシコペソに対する為替が大きく円高に振れているため、総合的なファンドの価値は減少してしまっているのです。

 

メキシコボルサ指数

出典:MEXBOL 銘柄 - S&P/BMV IPC指数 名称 - Bloomberg Markets
https://www.bloomberg.co.jp/quote/MEXBOL:IND

為替の変化が、投資信託の基準価格に対して、経済成長以上に大きな影響を与えていることがわかります。

 

メキシコ株式ファンドはおすすめできるか

ここまで見てきたように、高い経済成長が期待できる反面、為替の影響が大きく基準価格が堅調に値上がりするとは限らないということがわかりました。

日本円だけの運用ではなく、リスクヘッジを目的に外貨建てでの運用をすること自体が目的なのであれば、市場成長が期待できるメキシコ株式ファンドに投資する価値はあるかもしれません(ドル資産などを優先的にポートフォリオに組み込むべきだとも考えられますが)

 

ですが、純粋に資産を増やしたい(儲けたい)と考えているのであれば、メキシコ株式ファンドは非常に「リスキー」であると言わざるを得ません。投資を検討する際には、銘柄の特徴をきちんと検討・把握するようにしましょう。

 

当サイトでは、これ以外にも様々なファンド(投資信託)の分析・評価をしています。その中から厳選したおすすめファンドもまとめているので興味のある人はぜひ参考にしてみてください。

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