ひふみ投信、さわかみ投信、鎌倉投信といった、いわゆる大手金融機関とは別に独立して運用される投資信託を「独立系投資信託」と呼びます。

今回は、これら独立系投資信託の一つである「コモンズ投信」について、2019年現在、投資をする魅力があるのかどうかを、詳しく見ていきたいと思います。

 

「コモンズ30ファンド」と「ザ・2020ビジョン」

コモンズ投信は「コモンズ30ファンド」と「ザ・2020ビジョン」の2つの投資信託を運用しています。

コモンズ30ファンドは「30年の長い目線を持って成長していく30社に集中的に投資する」ことを基本方針としています。

一方のザ・2020ビジョンは「日本の新しい国づくりに向けて変化しはじめた企業、もしくは変化にチャレンジする企業50社へ投資する」とのことです。

 

コモンズ30ファンドの運用額(純資産総額)が約140億円であるのに対し、ザ・2020ビジョンが約40億円なので、コモンズ30ファンドが、コモンズ投信のメインファンドであると言えるでしょう。

 

コモンズ投信の特徴

コモンズ投信の、独立系投資信託としての特徴はとにかく「理念推し」であるということです。

「どのように収益をあげていくのか」というリアルな話ではなく、「〇〇なポリシーや理念で運用し、日本社会を豊かにするためのサポートをしたいと」いうことを、声高にアピールしています。

 

社会性の高さに関してはかなり徹底しており、コモンズ投信の得た収益のうち1%は、社会貢献につながる活動をしている起業家へ寄付しています。

一企業としてのこのような取り組みは、いわゆる「CSR活動」と呼ばれますが、投資信託を運用する会社の中ではもっともCSR活動に力を入れていると言って良いでしょう。

 

また、コモンズ投信はこの他にも「顔の見える運用」というテーマを掲げており、実際に運用を行っている人の顔が見えるよう公式サイトにすべてのメンバーの顔写真や一言コメントを掲載しています。

また、セミナーや説明会を積極的に開催しており、そこでは「コモンズ投信の投資がどのように社会貢献につながるのか」「投資をするということはなぜ面白いのか」と、投資初心者の方でも楽しめるようなコンテンツを提供しています。

 

投資戦略の優位性やファンドマネージャーの実力といった、ドライなポイント以外を重視した投資信託と言えます。

 

コモンズ投信のファンドとしての実力を紐解く

コモンズ投信の直近10年の実績 - 日経平均との比較 -

では、実際のコモンズ投信(コモンズ30ファンド)の実績はどうでしょうか。

以下は、直近10年間における、日経平均との比較のグラフです。

 

赤が日経平均、青がコモンズ投信ですが、日経平均とほぼ同じ推移を辿っています。

ただし、日経平均連動のETFや投資信託が非常に安い手数料で投資できるのに対し、コモンズ投信へは約1%の信託報酬を支払う必要があります。

 

手数料まで鑑みると、投資家の手元の利回りは、日経平均よりだいぶ下回る結果となります。理念は立派ですが、ここ10年の投資としては全く成功していません。

 

コモンズ投信の組み入れ銘柄

では、具体的にどのような企業へ投資してきた結果、このような結果がもたらされたのでしょうか?

コモンズ投信(コモンズ30ファンド)の、組み入れ銘柄上位10を見てみましょう。

 

電気機器系統を中心として、各業界の上位企業から順に投資しているかのようなポートフォリオです。この下には総合商社など続くのですが、総合商社では三菱商事と丸紅に投資しています。

 

銘柄選定基準

理念とは別に、収益を得るための銘柄選定基準はどのようなものなのでしょうか?

コモンズ投資の説明によれば、数字に現れない「見えない価値」が重要だと言います。

「見えない価値」とは、企業文化や対話力といったものだそうです。それらが長期的に競争力をもたらすというのが彼らの主張です。

 

投資先の選定はトップダウンでファンドマネージャーの指示で行うのでなく、投資委員会と呼ばれる委員会の会議を通じて行われます。

特に、新規組み入れ銘柄の決定や、売却などは、メンバーの全員一致で決定されるそうです。

 

正直、どのような戦略なのか、全く見えてこないのですが、少なくとも銘柄の選定に関しては非常に日本企業的な決め方をしていると言ってよいでしょう。

一人の才覚ある人間のセンスによってエッジの効いた投資をしていこうというものではなく、あくまで全員集まっての会議で売買を決定し、最大公約数的な答えを出していこうというものになっています。

 

ヘッジファンドのように、投資のプロが運用するファンドでは、絶対利益を追求する為、意思決定のクオリティやスピードを高めることを狙いに権限をファンドマネージャーへと集中させますが、コモンズ投信はこのようなスタイルとは真逆と考えて良いでしょう。

 

辛口になってしまいますが、このような意思決定方法を採用したことにより、結局、投資先は各業界の有名どころに落ち着くことになり、それゆえ基準価額の推移はマーケットとほぼ同じになってしまっているということだと思います。

投資の世界において、議論による全員の納得を第一義におくような意思決定プロセスは、非常にナンセンスです。

 

コモンズ投信は誰のための投資信託?

さて、収益を得ることが目的であればコモンズ投信(コモンズ30ファンド)へ投資をすることはあまり旨味がないであろうことを説明しましたが、とは言えコモンズ投信自体に価値がないとは言い切れません。

 

投資というのは、儲かること以前に「納得感」も重要です。

投資した金額がマーケットに勝てなかろうが、減ってしまおうが、投資をしている人が納得し満足しているのであれば、全く問題はありません。

 

その意味で、コモンズ投信は投資に関するリテラシーの低い層に対しては、一定の満足をもたらしているのではないかと考えられます。

「社会貢献」という共感しやすいテーマ、そして「顔の見える運用」という投資初心者を安心させる要素。

投資など全くしたこともなく、とにかく投資が怖くて怖くて仕方がないというような人であれば、コモンズ投信へ投資をすることで一定の精神的な満足を得ることが出来るかもしれません。

それはそれで、投資信託が投資家へ提供している価値なのです。

 

全くの投資未経験者や、投資に対して極端にネガティブな考えを持っている人は、コモンズ投信のセミナー等に参加してみても良いかもしれません。

 

一方、収益を得ることを第一に考える投資家には、おすすめランキングで挙げるようなファンドが参考になると思います。ぜひ参考にしてみてください。

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