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ヘッジファンドのウソ・ホント
資産運用の手段として、「ヘッジファンド」に興味を持つ人が増えてきていますが、日本ではまだまだ馴染みが少ないことや「私募」であり情報があまり外に出てこないため、誤ったイメージが広まっていることもあります。
様々な憶測や噂が広まっていますが、その中にはニワカには信じがたいような本当の話もあれば、反対に嘘も紛れ込んでいます。
ここでは、ヘッジファンドについて一般的に広まっている「イメージ」についてそれが「真実(ホント)」なのか「誤り(ウソ)」なのかを一つ一つ解説していきます。
1. ヘッジファンドは影響力が大きい
ヘッジファンドの運用が市場(マーケット)に大きな影響を与えることがあると考えている人がいますが、これはある種の真実(ホント)です。
大きなヘッジファンドが買い付けた(株主になった)会社の株価は上昇することも少なくありません。
これは、資金力があり、投資規模の大きいファンドの買い付け自体が価格の上昇に寄与することもありますが、それだけでなく「そのファンドが"買い"だと評価したこと」に期待する人も数多くいるためです。
例えば、投資の神とも言われる、ウォーレン・バフェット氏(Warren Edward Buffett)が率いる世界有数のヘッジファンドであるバークシャー・ハサウェイ社(Berkshire Hathaway Inc.)の売買などには世界中が注目しており、5月にAmazonの株式を取得したことなどは大きな話題となりました。
日本でも、ホリエモン(堀江貴文氏)が注目している事業などは、そのことが噂になっただけでも世の中に大きな影響を与えることがありますね。
資金力があり、運用規模の大きなヘッジファンドの売買は、売買そのものや、そこに至るまでの判断が周りの投資家に大きな影響を与えることは十分に起こり得ます。
しかし、ファンドが市場に及ぼす影響について誤解があるのが、「ファンドは決算のたびに、損益を確定させるために株式を大量に売却するため、株価が一気に下落する」というものです。特に、決算月になることの多い6月や12月のファンドが多いため、この時期に株価が下落すると言う人もいます。
ですが、実際には、ファンドは確定した損益ではなく、その時々の「評価額」によって決算処理し、報酬等の計算します。その都度、株式を売却する必要はありません。
したがって、その都度株式が売却されることもなく、それによって株価が下落することもありません。
実際に、先述のバークシャー・ハサウェイ社(Berkshire Hathaway Inc.)もコカコーラ社の株式を30年近くも長期保有しており、これは非常に有名な話です。
「決算期は、ファンドの売りによって株価が下がる。決算のたびにファンドは株を手放す」というのは誤った情報なので気をつけてください。
2. ヘッジファンドはリスクが高い
全てのヘッジファンドはリスクをとったアグレッシブな運用をすると勘違いしている人もいるようですが、これは誤り(ウソ)です。
確かにヘッジファンドの中には、レバレッジをかけてハイリスク・ハイリターンの運用をしているものもあります。ベンチャー企業に投資するVC(ベンチャーキャピタル)などは、わかりやすい例ですね。
新しいビジネスやサービスを開発・提供する/しようとする企業の多くは、残念ながらそう簡単には成功しません。100社の新しい会社が生まれても、その中できちんとビジネスを成功させ、数年〜数十年と経営を続けていく企業は1,2社だと言われています。
一方で、そういった未来に期待するような投資は、成功すれば元金の100倍もの利益を得られるとも言います。このような投資をするファンドは確かにリスキーな側面もあるでしょう。
一方で、ヘッジファンドの中には、低リスクで着実な運用をするものも数多くあります。
例えば、先述のバークシャー・ハサウェイも、割安株に投資することを重視しており、つまり値崩れのリスクを徹底的に回避した運用をしていると言えます。
そもそもヘッジファンドの「ヘッジ」とはリスクヘッジのことであり、リスクを適切にコントロールするという意味があります。
リスクとリターンのバランスはファンドによって様々です。一概にハイリスクなものと思い込んでしまうことの無いように注意しましょう。
3. ヘッジファンドは手数料が高い
株や投資信託と比較すると、ヘッジファンドの手数料は一般的に高いと言われています。確かに、一般的な信託報酬の相場を比較しても
- 投資信託:年1~3%
- ヘッジファンド:年3~5%
とも言われており、確かに割高に見えます。
その他にも成功報酬の有無など、様々な違いがありますが、実は本質的にヘッジファンドの手数料が割高かと言われるとそうとも言い切れません。
例えば、投資信託の場合、ファンド・オブ・ファンズ形式やマザーファンド形式のスキームになっていたりと、目に見えない手数料が多重に発生していることもあるため、表面的な手数料以上の費用がかかっていることもあります。
一方のヘッジファンドは、ほとんどの場合、市場で直接取引しているため、目に見えないような間接的なコストがかかっていることがほとんどありません。
結果、本質的なコストはどちらが高いかはよく検討する必要があります。
パッと見の、表面の手数料から安易に判断することの無いよう注意してください。
ヘッジファンドと投資信託の手数料の比較については以下のページでも詳しく解説しているので参考にしてみてください。
4. ヘッジファンドは富裕層向け
ヘッジファンドが富裕層向けであるというのは、ある種の真実(ホント)です。
特に、かつてのヘッジファンドは、超アッパー層を対象としており、億単位の資金を運用できる富裕層だけがお願いできるサービスでした。
しかし、近年では少しずつ一般に広がることによって、そのハードルも下がってきています。
これは、一般的なモノやサービスの広がり方と同じで、はじめは高額で富裕層だけが手にしていたものが、少しずつ流通し対象が広くなることで金額が下がる仕組みと似ています。
今では誰でも持っているスマホ(携帯電話)やテレビも、発売当初は超高額で庶民が手にできるようなものではありませんでした。
とは言え、まだまだ1,000万円単位の資金が必要になるため、「誰にでも」と言えるものではないかもしれません。特に、1,000円から始められる投資信託と比べると、まだまだ限られた人向けのように感じられます。
ですが、「1,000万円」という資金を元手に資産運用を考えている人は決して少なくないでしょう。
金融庁が「老後に2,000万円必要」と発表したように、ある程度の年齢の方はきちんと貯蓄をしているでしょうし、一方で、ただただ銀行に預けているだけの貯蓄をどのようにしたら良いのかわからず(実際には運用したいと思っているけど、自分ではなかなか始められず)悩んでいる人も少なくないと聞きます。
高齢者の貯蓄が100兆円以上銀行で眠っており、これが日本経済を停滞させていると言われるほど、日本人の多くは十分すぎる蓄えがあるのです。
ヘッジファンドで運用することは、簡単ではないものの、決して関係のない話ではなくなってきています。
資産運用の選択肢の一つとして、きちんと検討する必要があるでしょう。
5. ヘッジファンドは会社を買収する(ハゲタカだ)
全てのファンドが企業買収をするようなハゲタカファンドではありません。つまり、これは誤り(ウソ)です。
確かにヘッジファンドの中には、その資金力を活かして企業買収をし、時に敵対的買収をするものもあります。
そういった出来事(ニュース)は、世間の注目を集めやすく、また買収先の企業や、売却先の企業に注目が集まることも多いため、話題になりやすいのです。また、小説や映画の題材にされることも多い(ドラマになりやすい)ため、世間一般のイメージが「ファンド=ハゲタカ」となってしまうのです。
しかし、実際にはそうでないファンドも数多く存在します。
取引先の企業(経営者、社長)と友好な関係を築くファンドも少なくありませんし、そもそも市場での純粋な株式の売買取引をしているだけのファンド(株主となった企業に大きな影響を与えないもの)も数多くあります。
「ヘッジファンド」という言葉に振り回されて、偏ったイメージに影響されすぎないようにしましょう。
6. ヘッジファンドは儲かる
「ファンド=儲かる」というイメージについてですが、これはある種の真実(ホント)です。
ヘッジファンドは絶対収益を追求します。
これは、市場の上げ下げに左右されず利益が得られるような運用をするということです。非常に単純な例で言えば、上げ相場において「買い」を優先し、下げ相場において「売り」を優先すれば、どちらにおいても利益を得ることができます。
「何を当然なことを」と思う人もいるかもしれませんが、投資信託などはそうではありません。例えば、日経平均をインデックスにしたETFなどは、日経平均の上げ下げに連動するように運用されるため、日経平均が下がり続けると、ETFもそれに合わせて下がり続けます。
ヘッジファンドは、相場に左右されることなく利益獲得に全力を尽くします。実際に高いリターンを出資者に還元しているという実績も残しています。
ここで注意しなければいけないのは、確実に儲かる"わけではない"、ということです。
ファンドだけに限らず、投資案件の中には、「年に○○%の利益は確保!元本保証!」などと謳うようなファンドもありますが、どんなに優秀なファンドであっても、100%儲かる投資話などありませんし、必ず損をする可能性はあります(そうでないものは銀行の預金くらいです。その分利回りは非常に小さくなってしまいますが...)
ヘッジファンドは必ず利益が得られるような手法で運用しますが、確実にリターンが返ってくることが保証されているものではありません。この点には十分注意してください。
7. ヘッジファンドは詐欺である
ヘッジファンドを謳った詐欺事件がニュースになることがありますが、当然のことながら全てのファンドが詐欺というわけではありません。ここでは詐欺ファンドの見分け方について少し言及したいと思います。
最もわかりやすい例が「元本保証」と「リターンの確約」です。
先述の通り、投資に絶対はありません。
どんな運用にも元本を毀損するリスクはありますし、資産を減らす(損をする、リターンが返ってこない)可能性があります。
にも関わらず、「絶対に儲かりますよ!」などと営業してくるファンドには注意が必要です。
また、相手の顔が見えないファンドにも注意した方が良いでしょう。
電話やメールなどのやりとりだけでなく、実際に会って相手の存在を確認できるファンドの方が圧倒的に安心できます。特に、会って話をした相手の人の経歴がハッキリしているファンドの方が安心できるでしょう。
一方で、「よくわからない」が故に怪しく見えてしまうファンドについてもきちんと考えなければいけません。
ヘッジファンドの中には、最低限の設備しか用意せず、オフィスもそんなに大きくないものもあります。
オフィスがないことを不安に思う人もいるかもしれませんが、こういったファンドの多くはコストをカットし、最低限の経費で経営しようとしているだけにすぎない場合が大半です。
むしろ詐欺ファンドの方が、不必要に立派なオフィスを構え、綺麗なパンフレットを用意したりしているものです。
そのファンドが信用に値するかどうかは、必ず自分自身の目で確認してみてください。
まとめ - ヘッジファンドにおいて重要なポイント -
ここまで見てきたように、ヘッジファンドに関するイメージ多くは、世間で注目を浴びる一部のファンドのイメージが広まってしまったものにすぎません。
ファンドの中には、短期で売買を繰り返すものもありますし、長期でじっくり運用するものもあります。
取引先と敵対的なファンドもあれば、友好なファンドもあります。リスクの高いものも、低いものもあるでしょう。ヘッジファンドは、それぞれが多種多様なのです。
「自動車メーカー」や「製薬会社」「レストラン」などは一括りに考えたりせず、一社一社それぞれが異なっていること知っているはずなのに、馴染みのない「ヘッジファンド」の話になると、突然ひとまとめにしてイメージで話を進めてしまうのはおかしな話です。
ヘッジファンドを評価する際には、先入観やイメージに左右されず、目の前のファンド"そのもの"をきちんと見極めるようにしましょう。