手数料とは

投資信託、ヘッジファンド、PEファンド、プライベートファンド、、、

名称や形態・タイプはいろいろありますが、「ファンド」と呼ばれるものには必ず手数料が存在します。

 

「ファンド」とは、投資家から資金を集めてそれをまとめて運用する組織/サービスの総称です。

投資家は、手数料を払いそのファンドに運用を任せリターンを得ます。ファンド側は「専門性をもって運用する」というサービスを提供し、(確実ではありませんが)資産を増やす代わりに手数料という形で報酬を受け取ります。

 

「手数料」というと、それを払う側であるか投資家にとっては嬉しいものではないのかもしれませんが、だからこそ、その内容をきちんと理解しておく必要があります。

名称はファンドによって様々ですが、ファンドや投資信託に関する手数料は主に以下の3つです。

  • 購入時手数料・信託財産留保額・発行手数料
  • 運用管理費用(信託報酬)
  • 成果報酬

それぞれ順に確認していきましょう。

 

購入時手数料・信託財産留保額・発行手数料

購入時手数料(発行手数料、契約時費用などとも)は、投資信託の購入時やファンドとの新規契約(出資)時に支払う手数料のことです。

投資信託の新規購入額やファンドへの出資金額に応じて課せられることが一般的です。計算方法にもよりますが、購入時手数料が3%とすると、10万円分の投資信託を購入する場合3,000円を、1,000万円をファンドに出資する場合30万円を支払うことになります。

 

購入/出資のための初期費用と考えて問題ありません。

特に投資信託の場合は、ファンド本体ではなく銀行や証券会社といった販売会社に払うため、手続きのためのコストと捉えて良いでしょう。

投資信託を販売したり、投資家を募っているファンドの視点で考えれば、投資家にアピールし募集するためには店舗を構えたり、営業員を必要としたり、広告を出したりと様々な費用が必要になります。営業・広告費に充てられるものと考えてもよいかもしれません。

 

新規(追加)購入や契約(出資)の際に、その都度払うものであり、継続的に負担するような費用ではありません。一般的な投資信託で1.0~3.0%程度、私募ファンド(ヘッジファンド)で3~5%程度が相場となっています。

投資信託の中には、購入時手数料がゼロの「ノーロード」と呼ばれるものもあります。手数料の設定率はファンドによって異なるため出資にあたって十分に確認する必要があります。

 

投資信託の場合、購入時手数料(発行手数料)は窓口となる販売会社(銀行や証券会社)によって異なります。ネット証券の方が、店舗型証券よりも割安な傾向があるため、どこで買うのかはいろいろと調べてみた方がよいでしょう。

 

一方で、「信託財産留保額」は投資信託の売却やファンドの解約時にかかる手数料です。こちらも、投資信託の売却額やファンドの解約金額に応じて課せられます。

相場は運用資産の0~1%程度です。この「信託財産留保額(解約手数料)」については、無料(0%)にしているファンド/投資信託も少なくありません。

 

運用管理費用(信託報酬)

運用管理費用(信託報酬)は、運用のためにかかる費用として、預けている資産(保有している投資信託)に応じて"継続的に"支払います。例えば、株式投資をするファンドの場合、企業の調査・分析にかかる費用や、社内での意思決定に必要なコスト、システムなどを利用している場合はその維持費などに充てられていると考えて

割合はファンドによって様々ですが、一般的な投資信託で年1~3%、私募ファンドで年3~5%程度が相場かと思われます。

 

特に、インデックスファンドに比べて、アクティブファンドの方が、その活動(調査・分析や交渉など)に手間や労力がかかりますし、より専門的な能力も求められます。

そのためインデックスファンドよりも、アクティブファンドの方が運用管理費用(信託報酬)が高くなる傾向にあります。

大まかにまとめると以下のようになります。 ※あくまでも相場なので実際はファンドによって設定が異なります。

  • インデックスファンド(投資信託):年0.5~1.5%
  • アクティブファンド(投資信託):年1.5~3.0%
  • インデックスファンド(私募ファンド/ヘッジファンド):年3~5%
  • アクティブファンド(私募ファンド/ヘッジファンド)年5%++

 

成果報酬

成功報酬は、ファンドが運用によって出した成果(投資で得た利益)に対して課せられる手数料です。

例えば、ファンドに預けた1,000万円が運用によって1,100万円になったとしましょう。成果報酬の割合が30%の場合、運用益の+100万円に対して30%の成果報酬が課せられるため、実際のリターンは100万-30万円=70万円になります。

 

運用の「成果」に対して課される費用であり、2つ「購入時手数料・信託財産留保額」「運用管理費用(信託報酬)」のように事業運営のために必要な費用とは本質が異なります。まさに「資産を運用してくれる」というサービスに対する、本質的な手数料と言えます。

 

銀行や証券会社で扱われている一般的な投資信託ではこの成果報酬はかかりません。一方で、ヘッジファンドなどの私募ファンドの場合、運用益に対して20~50%程度がかかってきます。

 

ビジネスモデルからみる投資信託の問題点

ここまで3種類の手数料について説明してきましたが、成果報酬の大きさに驚いた人もいるかもしれません。

また、この手数料がかからない投資信託の方が私募のファンドよりも優れていると感じた人もいるのではないでしょうか?

 

手数料は安いに越したことはない気がしますし、投資信託の方が割安でお得に見えます。ですが、この成果報酬を求められないことこそ、投資信託の抱える問題に繋がるのです。

ヘッジファンドは、成果報酬によって事業を成り立たせるために、必死に運用し投資による運用益を上げよう努めます。購入時手数料(発行手数料)や信託報酬は、事業の運営に費やされているはずなので、収益確保のために運用に注力するのは当然です。

 

一方で投資信託は、成果報酬を取っておらず、購入時手数料と信託報酬によって事業が運営されています。つまり、運用によって成果が出ようと出なかろうと、ファンドや銀行・証券会社の利益は変わらないのです。

つまり、銀行や証券会社で取り扱われている投資信託の目的は、運用によって利益を得ることではなく、資金を集めて運用することそのものになります。

 

この点が運用し成果をあげることを目的としている「ヘッジファンド」との本質的な違いになります。

  • ヘッジファンド:運用したい(運用によって利益が得られる算段がある)→資金を集める=手数料を取る
  • 投資信託:手数料を取るために資金を集める→せっかく集めたので運用する

 

ヘッジファンドのような私募ファンドと、投資信託にはその背景や思惑に大きな違いがあるのです。

そのため、投資信託には耳障りが良いキャッチーなフレーズを用いたものや、トレンドを取り入れたものなど"見栄えのよい"ものが数多く存在します。

運用サービスをうたい、あたかも「投資のプロ」かのような顔をしていますが、成果報酬を取らない投資信託には、そもそものビジネスモデルやその背景に大きな問題があるのです。

 

隠れ手数料について考える

また、一見すると割安に見える投資信託の手数料ですが「隠れ手数料」「二重手数料」とも呼ばれる目に見えないコストがかかっており、本質的には決して安いとは言い切れません。

 

投資信託の多くは、「ファンド・オブ・ファンズ」や「マザーファンド形式」と呼ばれるスキームになっており、購入したファンドが直接株式市場で取引しているケースはほとんどありません。

 

投資信託の運用成果は、その投資信託が運用を依頼しているマザーファンドの運用成果に依存しています。

したがって、私たち投資家がリターンを得るまでには、投資信託だけでなく、その先にあるファンドの中でも手数料がかかっています。

 

これが、投資信託が抱える「二重手数料」問題です。

表面的な手数料(投資家が"直接"購入する投資信託自体の手数料)だけでなく、そのファンドが間接的に支払っている手数料も、リターンからは差し引かれていることになります。

表面的な手数料に惑わされることなく、目に見えないものも含めて"全て"の手数料をきちんと考慮しなければいけません。

 

なぜ手数料に差があるのか - ヘッジファンドの手数料が高いわけ -

一般的に、公募の投資信託(銀行や証券会社などで取り扱われているもの)と比較して、私募のヘッジファンドの方が手数料が高くなる傾向があります。

先述の通り、信託報酬の相場を比較しても

  • 投資信託:年1~3%
  • 私募ファンド:年3~5%

と倍近い差があります。

 

一見すると私募ファンドの方が、たくさんの手数料を取っており、割高なようにも見えますが、これには純資産総額(運用資産)の差が関係しています。

 

公募の投資信託は、小さなものでも200~300億円、人気のものだと1,000億円~5,000億円超のものまで途轍もない規模のものが数多く存在します。

仮に500億円の投資信託が信託報酬年2%を取ったとすると、年間の信託報酬は10億円です。さらに、投資信託は大元を辿ると、そのほとんどが有名な投資銀行やメガバンクに由来しています。

つまり、信託報酬だけで年間数十億円を集めるようなファンドを、いくつも運営しているのです。その分、一見して割安な手数料設定になっているのも頷けます。

 

一方で、私募ファンドの規模は数十億〜100億円程度、大きなものでも200~300億円が良いところです。つまり、運用資産の規模としては5分の1から10分の1程度です。

つまり、仮に50億円のファンドに年5%の信託報酬が必要になったとしても、その報酬は2.5億円です。

 

もちろん、投資信託とファンドとでは、組織の規模も人数も異なるため一概には言えませんが、一概に割安/割高とも言えないかもしれません。

 

手数料の考え方 - 重要なポイントは何か -

ここまで、投資信託やファンドに関わる手数料について、その意味や本質・また裏に隠された目に見えない手数料まで様々掘り下げてきました。

もちろん、自分が支払う手数料について、その仕組みや本質(目的・意図)を理解しておくことは重要です。ですが、手数料ばかりに気を取られ、投資の本質を忘れてはいけません。

 

資産運用の目的は、資産を増やすことであり、支払う手数料を小さくすることではありません。仮に割安な手数料のものがあったとしても、投資益(リターン)が得られないのであればなんの意味もありません。

以下の2つのパターンを比較してみましょう。

購入時手数料 運用
成果
信託
報酬
表面
リターン
成果
報酬
実質
リターン
投資信託A ゼロ
(ノーロード)
3% 2% 1% なし 1%
ファンドB 5% 15% 5% 10% 50% 5%

 

手数料を見ると、ファンドBの方が圧倒的に高いですが、一方で利回りの差も歴然です。1年目こそ購入時手数料の差がありますが、それすらも1年でペイ(相殺)し、2年目以降で大きく巻き返せます。

 

確かに、リターンは不確実なものであり、確実に必要になる手数料をベースに考えたくなる気持ちもわかります。「リターンは不確実なものなので、はっきりとしている手数料で考えるべき」という人もいますが、この「易きに流れる考え方」は間違っています。

 

ですが、資産運用においてもっとも重要なのはリターン(利回り)です。

様々な、金融商品(運用のサービス)がある中で、どれに投資するかを考えるときに、手数料を比較するのではなく、「より高い成果・パフォーマンスが期待できるものがなにかを見極める」ことこそが資産運用の本質です。

仮に手数料の安いものがあったとしても、肝心の運用でリターンが得られないのでは意味がありません。まさに「安物買いの銭失い」になってしまいます。

 

手数料は無下にはできませんが、最重要ポイントでもありません。「同じような利回りが期待できるものがある場合は、できるだけ割安に」くらいに留めておいて、本質を見失わないように注意しましょう。

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