外資系投資銀行のトレーダーや、ヘッジファンドのファンドマネージャー(運用責任者)のような金融のプロの間では、「中途半端に投資をかじった素人が一番負ける」という定説があります。

これは、実際私の周りを見渡してもその通りだなと思わされる説です。

今回、なぜこのように「中途半端な素人」が損をしてしまうのかを考察すると共に、素人でも負けない投資方法について考えていきたいと思います。

 

中途半端な投資の勉強は意味がない

投資の勉強は難しい

「投資について勉強しましょう」とよく書いているので、いつも言ってることと逆になってしまっているようですが、中途半端に投資の勉強をしてもあまり意味はありません。

 

もちろん、原則を理解しておくことに一定の効果はあります。

例えば「ハイリスクなものはハイリターンである」という原則を覚えておけば、仮想通貨が大きなリターンを得られると説明されても、「相応のリスクがあるはずだ」としっかり判断できます。

しかし、隙間時間を活用する程度の勉強で、投資に関することを全て理解しようとしても、それは無理なのです。

 

世界最先端のビジネススクールでのできごと

財務省、マッキンゼーを経て、ロボアドバイザーを活用した資産運用サービスWealthNavi(ウェルスナビ)を創業した柴山さんが実際に体験した話で印象的なものがあります。

 

柴山さんがINSEADというビジネススクールで金融工学を学んでいた際、そこにいるMBA学生(世界トップクラスの経営修士)ですら投資における基本的な概念を理解できていないことを発見したのです。

 

ある日、「分散投資」という概念について、教授がとある大学生に質問をしました。

「いま、あなたが米国企業500社に分散して投資をしているとしましょう。運用資金の総額を変えずに、投資先を500社から501社に増やすとして、その際ジンバブエ航空の株式を新たに購入するとする。この場合、ポートフォリオ全体のリスクは上がるだろうか下がるだろうか。」

 

すると学生が答えました。

「投資のリスクは当然、上がります。なぜならばジンバブエ航空への投資は高いリスクが存在します。さらには、ジンバブエにおける政治リスクも加わります。」

 

しかし教授は残念そうに首を振りながら回答しました。

「君は分散効果を何一つ理解していない。この米国企業500社への投資にジンバブエ航空への投資を加えたのであれば、投資全体のリスクは下がる。なぜならば米国企業とジンバブエ航空の株価の動きは原則として無関係だからだ。これらのリスクは無関係であるということにより打ち消し合い、全体のリスクを下げる効果をもたらす。これが分散効果の基本的な考え方だ。」

その後、教授と学生の間では何度もやりとりがありましたが、最終的にはこの学生は分散効果という考え方を理解できずに終わったそうです。

 

ジンバブエは世界の経済史でも類を見ないほどのインフレを記録しており、確かに単体で見ると大きなリスクがあります。このジンバブエの企業をポートフォリオに組み入れると、「リスクが上がるのでは」と考えたくなる気持ちもわかります。

 

どうしても、ジンバブエの会社だからリスクが高い、という前提に捕われてしまったのでしょう。このようなやりとりは、金融工学を学ぶ過程でいくつもあったそうです。

毎日投資について熱心に勉強している世界トップクラスのMBAですら、この有様です。それが、ちょっと投資の勉強をかじった程度の人ではどうでしょう。

ほとんど、何も理解していないも同然であるということが分かると思います。

投資の世界というのはそれほどまでに奥が深いのです。

 

人間の脳は投資に向いていない

上がっているものを高く評価してしまう

もう少し根本的な話をすると、そもそも人間の脳というのはそもそも投資に向いていません(笑)

 

例えば、多くの投資家は「リバランス」というのを上手く行うことができません。

リバランスとは、資産配分の適切なバランスを保つために行う取引のことです。

 

仮に、株式を70%、債券を30%保有している投資家がいたとしましょう。

この、株式70%・債券30%という保有比率が、彼にとって適正なバランスだとします。

ここで株式市場の好調によって株式の価格が大きく上がり、全体のポートフォリオが株式80%、債券20%になったとします。

ここで、賢明な投資家であれば、「株を売って債券を買う」という取引をすべきです。このリバランスにより、全体のポートフォリオを株70%、債券30%という割合に戻すべきなのです。

 

しかし、多くの投資家はここで債券を売って、株を買ってしまいます。株は上がっているからもっと持とう、債券は上がっていないから売ろう、と思ってしまうのです。

 

人間の脳は、どうしても、直近で上がっているものを高く評価してしまう傾向。つまり相場が上がっている時に買いたくなり、下がっている時に売りたくなる傾向があります。

ですが、重要なのは、上がっているものを売って(割高になる前に利確して)、下がっているものを買う(割安のときに仕込む)ことなのです。

 

しかし、多くの投資家は目先の利益や損失に目が眩んでしまい、冷静で合理的な判断をすることができません。これは、人間の脳の根源的な部分が投資に向いていないためなのです。

 

損を過大に評価してしまう

また、目先の利益や損失に目が眩む以外にも、「損」を過大に評価してしまうという特徴も人の脳は備えてしまっています。

 

例えば、なにかしらの理由で5万円を失ってしまった場合と、偶然5万円を手に入れた場合を想像してみてください。5万円を失ったことによる精神的なダメージは、5万円を手に入れたことによる喜びを、超えているのではないでしょうか?

行動経済学の研究によれば、「損をすること」による感情の揺れというのは、「得をすること」による感情の揺れの2倍になると言われています。

 

投資において、この「損をやたら過大に評価してしまう傾向」は大いにマイナスになります。

100万円の資産が101万円になっても、「なるほどな」くらいにしか思わないのに、100万円の資産が99万円になったとたんに毎日のようにチャートをチェックしてしまうのでは冷静な判断はできません。

どんどんと本質からかけ離れ、合理性を失ったものになってしまいます。

 

脳の癖を脱却するには、高いレベルでの研鑽が必要

「じゃあ、そういう傾向に気をつければ良いんでしょ」と思った方もいるかもしれませんが、こういった脳の癖を脱却するにはかなり高いレベルでの様々な分野の理解が必要になります。

それは、金融に関するものに限らず、行動経済学や心理学、脳科学など、多岐に渡ります。

 

というのも、こういった人間が勘違いしてしまう癖というのは1つ2つではなく、相当数存在しており、さらにそれらが複合的に襲ってくるからです。

いったい、自分がいまどのようなミスを犯しているのか、完璧に理解するのは容易ではありません。

いずれにしても、正しく投資を行う能力というのは特別なものであり、一朝一夕で身に付くようなものではないのです。

 

多くの素人はどのように投資を行うべきなのか

投資というものが難しく奥の深いものであることは分かりましたが、じゃあ一体どうすれば良いと言うのでしょうか。

 

まず1つに、なるべく長期的に全世界に向けた分散投資をするという方法があります。

これは、中途半端に考えるのではなく、もう全世界の経済は成長するであろう(そしてそれに伴って株式市場も成長するであろう)という仮説に立ち、そこに資産を振り切ってしまうという方法です。

 

そして、1,000万円を超えるようなある程度の資金がある人であれば、「本当のプロの投資を任せてしまう」という方法もあります。ヘッジファンドに運用を任せるという方法です。

 

投資を中途半端にかじって失敗することなく、素人でも実践可能な投資方法で、着実に資産運用をしていきましょう。

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