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グローバル・フィンテック株式ファンドとは
仮想通貨バブルはブームの峠を越えましたが、フィンテック業界はまだまだ十分に盛り上がっていますし、今後の成長が十分に期待できる令和の時代を代表する成長産業の一つです。
そこで今回は、この勢いのあるフィンテック産業(業界)に投資することを目的とした注目ファンド『グローバル・フィンテック株式ファンド』について、口コミや評判だけからではわからない投資価値を評価してみたいと思います。
設定されて間もないファンドですが今後大きく成長する可能性はあるのでしょうか?ファンドの中身を1つ1つ検証・考察していきたいと思います。
フィンテック(FinTech)とは
「フィンテック(FinTech)」とはFinance(金融)とTechnology(技術)を掛け合わせて作られた造語です。その名の通り、ITを駆使した金融サービス全般のことを指します。
最近では仮想通貨などばかりが注目を集めていますが、モバイル決済やクラウドでの家計管理なども含めて、フィンテックに関するサービスは多種多様です。
Suicaなどの交通系電子マネーもフィンテックの一つですし、スマートフォンでの支払いが可能なのもフィンテックのおかげです。企業の中でも経費清算や経理システムもフィンテックと呼べるでしょう。最近サービスが充実してきているロボアドバイザーなどの資産運用サービスもフィンテックです。もちろん仮想通貨で注目を集めたブロックチェーン技術なども代表的なフィンテックの1つです。
このように、ますます生活に密着し今後の発展が期待されているのがフィンテック産業なのです。
グローバル・フィンテック株式ファンドの投資価値を検証する
今後大きく成長・発展することが期待されているフィンテック企業に投資をしたいと考える人は少なくありません。そこで今回は『グローバル・フィンテック株式ファンド』について、徹底的に分析・評価していきたいと思います。
名前からもフィンテックに関するファンドであることは明らかですが、その中身や実態、そして投資する価値があるのかについて、投資信託を見極める上で基本的な以下の4つのポイントを中心に分析していきたいと思います。
- 投資戦略
- 投資銘柄(ポートフォリオ)
- 手数料(コスト)
- 実績(パフォーマンス)
グローバル・フィンテック株式ファンドの基本情報
- 商品名:グローバル・フィンテック株式ファンド
- 商品分類:追加型/内外/株式
- 投資対象地域:グローバル
- 投資形態:ファミリーファンド
- 信託期間:2016年12月16日〜2026年12月7日
- 信託金の限度額: 5,000億円
- 委託会社:日興アセットマネジメント株式会社
出典:投資信託説明書 (交付目論見書)|グローバル・フィンテック株式ファンド
https://www.nikkoam.com/files/fund_pdf/643335/file/643335moku.pdf
投資戦略
グローバル・フィンテック株式ファンドの投資戦略は、その名の通りフィンテックに関する企業に投資することです。投資信託説明書(交付目論見書)には以下のようにあります。
主として、日本を含む世界の金融商品取引所に上場されているフィンテック関連企業の株式に投資を行ない、中長期的な信託財産の成長をめざして運用を行ないます。
国内に止まらず、世界中のフィンテック関連企業に投資をするということがわかります。「中長期的な」信託財産の成長とありますが、これはフィンテック関連企業にベンチャーや新興企業が多いこと、業界そのものがまだまだ未熟で"今後の"発展が期待できる分野であることが関係していると考えることができます。
フィンテックはまさに「これから」の業界であり、今日明日で「値が上がった/下がった」と一喜一憂するようなものではないということを肝に命じておきましょう。
また、当ファンドの大きな特徴の一つに、「個別銘柄の選定において、アーク社の調査力を活用する」とあります。
日興アセットマネジメント株式会社(当ファンドの委託会社)は、アーク社にマイノリティ出資することで、このアーク社の商品や投資戦略を、日本国内とアジアの一部の地域で独占的に提供する権利を持つこと、そして新たな投資ソリューションの開発などにおいて連携を深めることを、2017年8月4日に発表しています。
参考:グローバル・フィンテック株式ファンド 投資信託説明書(交付目論見書) 2018.3.8
https://mxp1.monex.co.jp/pc/pdfroot/public/100/3/2018/03/G47_0003.pdf
銘柄の選定は、投資信託の成果(パフォーマンス)に直結するものであり、それに影響を与えるアーク社の調査力が、そのままファンドの実力に繋がると言ってもよいでしょう。
日興アセットがここまで入れ込む「アーク社」について、詳しく見ていきましょう。
運用のキモ「アーク社」
アーク社(アーク・インベストメント・マネジメント・エルエルシー、ARK Investment Management LLC)とは、アメリカのニューヨークに本社を資産運用会社であり、特にイノベーションに関する分野に投資することに特化しています。
同社の特徴として、調査プロセスがユニークであることが挙げられます。
アーク社は、一般的なファンダメンタルズ分析やボトムアップ分析だけでなく、SNSなどを駆使し、外部の専門家と成長モデルの構築を行うなど、独自の調査・分析を行うようです。これにより、他とは違った視点で、投資先となる優良企業を選定しているのだと思われます。
出典:グローバル・フィンテック株式ファンド 投資信託説明書(交付目論見書) 2018.3.8
https://mxp1.monex.co.jp/pc/pdfroot/public/100/3/2018/03/G47_0003.pdf
このように独自の調査・分析を行い、またイノベーション領域に強みを持つと言われる「アーク社」の力を活用しているのが、グローバル・フィンテック株式ファンドです。
アーク社の助言を元に、実際どのような銘柄に投資しているのか、次にファンドの投資銘柄(ポートフォリオ)を確認します。
投資銘柄(ポートフォリオ)
グローバル・フィンテック株式ファンドが実際に投資している銘柄を確認してみましょう。最新(2018年8月)のマンスリーレポートによると、組み入れ上位10銘柄は以下の通りです。
出典:グローバル・フィンテック株式ファンド マンスリーレポート (2017年7月31日現在)
https://www.smbcnikko.co.jp/inv_pdf/5046mr.pdf
まず注目するべきは、その投資比率でしょう。49銘柄に投資しているとありますが、上位10銘柄で実に42%もの比率を占めています。これは十分に集中投資していると言える割合かと思います。小売業や銀行業、金融業となっているものもありますが、いずれもフィンテックにも注力している企業ばかりです。
SQUARE、AMAZON、TENCENT、APPLE、ALIBABA GROUPなど、日本円にして時価総額が10兆を超えるような有名企業が名を連ねていますが、5位に「LENDINGTREE INC(レンディングツリー)」というあまり耳慣れない企業が入っていることに着目したいと思います。
LENDINGTREE INC(レンディングツリー )とは、オンライン上での融資をマッチングするサービスを展開する、まさにフィンテックベンチャー企業です。創業は2008年4月で、2018年8月時点で従業員は500人ちょっとです。時価総額も0.5兆円と他の企業と比較して10分の1~100分の1程度しかありません。
確かに飛ぶ鳥を落とす勢いのあるベンチャー企業ではありますが、世界的な大企業でフィンテックに注力しているところは数限りなくあります。
ポートフォリオの上位に、こういったベンチャー企業が組み込まれていることから、アーク社が独自の分析を元に銘柄を評価していること、その調査結果を元に、当ファンドが他とは違う運用をしているであろうことが伺えます。アーク社を十分に活用し、成果を上げるべくポートフォリオが組まれています。
ただし、アーク社がアメリカの企業であることも関係してか、ポートフォリオの大半がアメリカ企業であり、ドルが中心の運用になってしまっています。
出典:グローバル・フィンテック株式ファンド マンスリーレポート (2017年7月31日現在)
https://www.smbcnikko.co.jp/inv_pdf/5046mr.pdf
アメリカの企業が、アメリカの企業を調査・分析することに長けているのは間違いないでしょうし。その結果、より質の高い優良企業が選定されているのであれば、決して悪いことではありません。
ただし、日本人からすると「為替リスク」が発生するということに注意しなければいけません。当ファンドは為替ヘッジをしていないため、円高に振れると投資の成果(パフォーマンス)は一気に減少してしまいます。
この点については、実績(パフォーマンス)のところで後ほど詳しく見ていきたいと思います。
手数料(コスト)
グローバル・フィンテック株式ファンドにかかる手数料(コスト)は以下の通りです。
- 購入時手数料:3.78%(税抜き3.5%)以内
- 信託財産留保額:なし
- 運用管理費用(信託報酬):年1.89%(税抜き1.75%)
- その他費用:年0.1% ※諸費用(目論見書作成費用など)として
当ファンドの手数料は、一般的な投資信託として高いと言わざるを得ません。しかし、このファンドは中長期に渡って大きなリターンを狙うものであり、また徹底的に独自の調査を行うなど運用に手間暇がかかっていることも伺えます。
特に購入時手数料が高いことが気になる方もいるとは思いますが、長期間保有し、しっかりとしたリターンを期待するのであれば、個人的にはあまり気にするポイントではないかなと思います。
そもそも投資信託を評価するポイントして、手数料はそこまで重要ではありません。そのことについては以下のページでも詳しく解説しているので、興味のある方は是非ご一読ください。
実績(パフォーマンス)
最後に肝心の運用実績(パフォーマンス)を確認しましょう。2018年7月31日時点での運用実績は以下の通りです。
出典:グローバル・フィンテック株式ファンド マンスリーレポート (2017年7月31日現在)
https://www.smbcnikko.co.jp/inv_pdf/5046mr.pdf
設定から1年と経たずに純資産を2,000億円近くまで増やした後、純資産の推移は横ばいですが、基準価格は上下をしつつも概ね順調に推移しています。騰落率は以下の通りです。
1ヶ月 | 3ヶ月 | 6ヶ月 | 1年 | 設定来(1年7ヶ月) |
2.16% | 8.03% | 3.92% | 26.84% | 55.70% |
ファンドのパフォーマンスとしてはこれ以上ないと言っていいほどの好成績と言えるでしょう。1年で1.2倍、1年半で1.5倍近く資産が増えるものは他になかなか見つからないと思います。このパフォーマンスであれば、手数料の高さも気になりません。
ちなみに、為替ヘッジの無い「グローバル・フィンテック株式ファンド」が最も堅調なパフォーマンスを見せており、類似銘柄である「為替ヘッジあり」のものの方が、基準価格の推移は不安定です。
為替ヘッジありの運用実績
ファンドの説明資料によると、日本のように超低金利通貨の場合、金利差が大きくなり、為替ヘッジにかかるコストが非常に大きくなるとあります。
為替は、株価以上に見通しを立てるのが難しいと言われています。為替ヘッジあり/なしのどちらのファンドを選ぶべきかは判断が難しいところです。
まとめ - グローバル・フィンテック株式ファンドに投資する価値はあるか -
ここまで見てきたグローバル・フィンテック株式ファンドのポイントをまとめると以下のようになります。
- フィンテック関連企業に投資し、中長期での成長を目指す
- 銘柄選定には、アメリカのアーク社の分析を活用
- オリジナリティのあるポートフォリオ
- アメリカの企業が中心で、ドルの比率が高い
- 手数料は高い
- 運用実績は素晴らしい
ファンドとしての特徴もありますが、何と言ってもフィンテック産業が今後大きく成長するか否かがこのファンドの成果を分ける最大のポイントとなるでしょう。フィンテック銘柄に投資する意義について、アーク社のCEO兼CIOである、キャサリン・ウッド(Catherine D. Wood)は、あるインタビューの中で以下のように応えています。
お金が使われる場所には常に、フィンテックの技術が入る余地がある。フィンテック分野では破壊的イノベーション(Disruptive Innovation)が急速に進むといわれており、今後はこれが世界経済の成長エンジンになると見ている。
〜中略〜
フィンテックは投資対象としてだけでなく、私たちの生活を大きく変えるものだ。
個人的にも、フィンテックは今後必ず世界の主要産業の一つになると考えています。フィンテック業界全体は、長い目で見れば大きく成長する可能性が期待できるでしょう。
しかし、それが何年後になるのかの見通しはつかないと思います。10年後かもしれませんし、20年後かもしれません。その過程で長いこと資産が増えないかもしれませんし、為替リスクも考えると一時的に資産が目減りする時期もあるでしょう(コストの高さは、その際の足かせになり得ます)。
フィンテック産業が成熟した時に5倍、10倍と大きく成長することを期待してじっくりと耐えることができる程度の資産であれば、十分に投資してみる価値はあるかと思います。
アーク社をはじめ、ファンドの質は決して悪くはないと思います。リスクをとって、将来的な大きな収益を狙う資産として、ポートフォリオの一部に組み込んでみる価値はあるかもしれません。
当サイトでは、これ以外にも様々なファンド(投資信託)の分析・評価をしています。その中から厳選したおすすめファンドもまとめているので興味のある人はぜひ参考にしてみてください。